第十六話 「暗部の聖夜、されども個人的な問題」
俺の個人的な問題。
ある情報が組織の下部にバレそうになっているという件についてだ。
マウスコムでは元々、俺の下に人間はいなかった。
しかし、情報網が肥大化してきた結果俺の下に実質的な下部組織が形成されつつある。
まだ■■の存在にはたどり着いていないだろうが恐らく俺と瀬崎の上にもう一つ何かあるというのはすでに勘付かれていると考えて間違いないだろう。
だからこそ、俺がトップじゃないとわかっているからこそ、瀬崎につながる下部組織にこの情報を流して、俺ではなく瀬崎から最トップに情報を持っていこうとしている動きがある。
この情報が明るみになった場合、全てが破綻失敗するのはもちろん、マウスコムの情報網などを駆使して情報がひとしきり拡散された後今後一生ネタにされ続けるだろう。
この情報学校も行事も1mmも関係ない。
冬休みの話だし、完全にプライベート………なんだが、これだけはバレたくない。
今日は12月24日。
リア充パレードなわけだが俺はそんなものに縁はなかった。
リア充と人混みが嫌いな俺は近所にあるかなり大規模なイルミネーションのイベント(しかも何故か夏祭り的な屋台も離れたところにちらほら)にも行きたくないので、クリスマスは家に引きこもって非リアのネッ友とともにゲームをするのが常なのだ。
だが………今年は出かける用事が不幸にもできてしまった。
大事なことだからもう一度言う。今年は不幸にも出かける用事ができてしまった。
俺は1mmも嬉しくないし、むしろそれにより頭を悩ませているところだ。
「お兄ちゃーーん!そろそろ行くよ〜?」
と、声が聞こえる。
ーーーあぁ、どうしてこうなったんだ………
❃
事の発端は、ほんの3日前だった。
「ねぇお兄ちゃん」
「俺に妹ができた覚えはねぇんだけど」
今テレビ電話で通話しているのは比嘉くるみ。
母方の叔母の娘………端的に言えば従兄弟だ。
俺の1歳下なので今は小学6年生。
埼玉で暮らしているくるみは標準語で話しているため俺も基本くるみ相手に話すときには標準語で話すように心がけている。
くるみは俺のことを“お兄ちゃん”と呼び、何故かアニメにしかいないような『お兄ちゃん大好き』系の従兄弟なのだ。
しかも血の繋がった実の兄弟と違い、従兄弟は法律上は結婚が認められているという事を知ったときの喜びようは凄まじかった。
「なんでお兄ちゃんちの近くの公園でかなりおっきめのクリスマスイベントがあるって教えてくれないの?」
「え、あぁそういえばあるのか。俺には縁がなさすぎて………ていうかそもそもくるみに言う必要ねぇかなって……………」
「大アリだよッ!
お兄ちゃんとクリスマスデートする絶好の機会じゃん!!
もう………飛行機予約してるからお兄ちゃんにもう拒否権はないよ。」
「いや今すぐキャンセルすればキャンセル料払わずに済むんじゃね?3日前だし。」
「え?明日の朝の飛行機に乗るんだよ?まさか当日にやほーって来ると思ってたの?」
さも当然、と言わんばかりにくるみは言うがその間彼女はどこに泊まる気なのか。
「お前………ベッドは貸さないぞ?俺はもう地べたでもソファでも寝ないからな」
今年の夏休みにやってきた時は、
2日連続で疲れて寝てしまったくるみを俺の母が俺のベットに運び込んでしまったため俺の寝る場所は部屋になかった。
俺がわりと夜行性であるため、「お兄ちゃんが起きている間は私も起きてたい!」とか言い出していたのだが結局俺が1時まで起きていたのに対しくるみが寝たのは10時半だった。
「え?ならお兄ちゃんのベッドに潜り込めばいいってことか。なるほど。」
「違ぇ!お前がリビングのソファで寝ろ!」
「キャアーーーそんな事したら夜行性で血気盛んなお兄ちゃんに寝込みを襲われるッ!!」
「俺のベッドに潜り込もうとしてんのお前だし、何なら襲われるのは俺の方なんですけど!?」
本当に小学生かと疑いたくなる発言だが………え?小学生だよな?
「まぁとにかく、私は明日の朝イチでそっちに行くよってのと、
お兄ちゃんがいい子にしてたら、前にお兄ちゃんが欲しいって言ってたマンガ全巻大人買いしてきてあげようか?」
「よし。わかった。」
確かくるみが以前「もらったお年玉とかお小遣いは基本的にお兄ちゃんのとこ行くとき用に貯めてるよ。」といっていたのは本当なのかもしれない。
まぁきっと買ってきたマンガにはブッ●オフのシールが付いていることだろう。
俺もそうだが、本を定価で買うのは学生には少し難しかったりする。
ブッ●オフの100円コーナーというのは学生にとっては非常にありがたいし、冬休みにはワン●ースの漫画をお年玉で一気に大人買いしたこともある。あの冊数の1期買いは中古でないと厳しいし。
ラノベや漫画を買う時は小遣い握りしめてブッ●オフに自転車を走らせるというのはよくある話………だと思う。
クーポンを使いまくるために、スマホアプリのクーポンと紙のクーポンと両方を持っていって、会計も何回かに分けて………というのもよくある話……………だと思う。
いいように餌付けされてしまった………と気づいたのは、一晩明けてからだった。
【祐介】お会計お願いします………あ、スマホのクーポン使います(本を3冊置く)
【店員】お会計230円です
ーーー数分後ーーー
【祐介】お会計お願いします………あ、紙のクーポン使います
(本を5冊置く)
【店員】お会計500円です。あと、こちら次回からお使いいただけるクーポンです(新たなクーポンを渡す)




