第十五話 「合唱コンクール、敢えてここでのみ発動する体質」
「…い!……ぁ橋!………ろ〜!まさか昨日……………かじゃない………な?」
親じゃない。
担任じゃない。
■■じゃない。
瀬崎じゃない。
医療関係者………も多分違う。
鈴木や渡辺なんかでもない。
3組のデブ軍団じゃないし、
最近確立した情報網の一角………そういえば全員をまだ覚えられてないな。
だんだん意識がはっきりしてきて、もはや忘れかけていた存在を完全に思い出した。
「あ、神谷かぁ」
「何やねん神谷かぁって!お前の好きな人とかのほうが良かったか!?」
「いや………ごめん。体質やから気にせんといて。
多分やけど、毎年のようにこんなことなってるから。」
「え?まぁ……あんまり聞かんとくわ。」
「あぁ。そうしてくれると助かる」
合唱コンクールはどうやら無事………ではないが終了したそうだ。
今回の件で俺はすぐさま病院に搬送され、1日だけ一応病院に泊まることになったがこういう事にはもう慣れてしまった。
神谷が見舞いに来てくれたようだ。
「合唱コンクールの順位発表、高橋っていうイレギュラーがでたからとりあえず発表は見合わせってことらしい。」
「それはお前らにとっては嬉し………いわけないですよねすいません。」
「いやめっちゃ嬉しいよ?」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
「いやぁ、1組もまぁまぁすごかったけど3、4組がまぁまぁやばくてさぁ………まぁ普通に行ってたら負けてたところを未発表にすることで上位の可能性だけが残り続けるからぁ………」
シュレディンガー理論を語りだす神谷であったが、
「俺の華々しい気絶の芸術点とかもあるから―――」
と言うと、
「それはない」
割と食い気味に否定された。
❃
神谷が去った後、ただならぬ来客も現れた。
「高橋」
「なんだよ、女狐。」
ーーー瀬崎佳奈。
マウスコム幹部の相方。
体育祭では俺のみが手柄を持っていったことに不満を覚えたからか先日とんでもない仕返しをしようとした結果玉砕した女。
今は■■同様完璧にいじめっ子とかしているが、表の顔は容姿端麗成績優秀の陽キャ。
おしとやかな石井と対になる形で石井派、瀬崎派、と某お菓子のような論争が常に巻き起こっている程の人気を誇る女。
化けの皮を被っているがいつ俺に牙を剥くかわからない………
いやもう剝いていたか。
「ぶっ倒れた、てのは知ってるし、小学校でもそういうの何回かあったし………今更そこに突っかかる気はないんやけどさ………」
「何?お前も■■みたいに俺との対立防ぎに来たわけか?」
「さ〜、どうやろね?」
そういって瀬崎が取り出したものはスマートフォン。
そこに写っているのは………1枚の写真。
そこに写っていたのは山本という男に襲いかかる■■。
「は………?」
「私の言うこと聞いてくれるなら、この写真あげるわ。
組織を嫌う高橋に反乱のチャンスを☆
………なんつって」
「やっぱお前は女狐やな……」
「可愛いくて純真な乙女になんてこと言うんよ」
「はっ、写真あげる、言いながら実際に手渡すことはせずに出方伺ってるやつのどこが純真な乙女だよ」
俺の言葉を嫌がる素振りだけ見せながら、瀬崎は満足げに口角を釣り上げた。
「また、その気になったら、この写真あげるわ。その時まで、一旦この事は忘れといて」
❃
とりあえずその直後に何かしらの指示があるわけではなく。
「いつでも言うことをなんでも聞かせられる駒をゲットできるだけでも私は大きな成果なんだけどなぁ………まぁその後反乱起こされるってならジョーカー的存在なんは間違いないけどさぁ」
それからしばらくは何もなかった祐介だが、瀬崎からはとりあえず開放されたもののある問題に直面する。
学校を取り巻く問題ではなく、あくまで個人的な問題。
だがその個人的な問題が、学年を取り巻く大事件に発展する。
【祐介】今年もブッ倒れたか………
【くるみ】お兄ちゃん大丈夫なの?気分悪いとかない?
【祐介】無いけど、ただ………
【くるみ】ただ?
【祐介】お前がもう少し大人しくしてくれたら俺の気分もかなりマシになると思う
【くるみ】それはやだ




