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奇策の裏役者  作者: masterpiece (村右衛門&モ虐)
<中学1年生--2学期>

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第十四話 「合唱コンクール、敢えてずらす希望」

 

「なるほど。鈴木との接触は成功か。

 で、合唱コンの曲の候補とかの情報も集めなあかんなぁ………」

「んな情報集めてどうすんの?」


「クラスごとに希望を3日後の放課後に発表して被ったところは抽選。そうなってたやろ?

 被って抽選した結果嫌いな曲歌わなあかんくなるぐらいなら第2希望でも確実に取れたほうがいい。そう思わんか?」

「なるほど………集めた情報を交換し合いながら情報網を形成しつつお互い安全にある程度の希望を叶えるってことか。」


 候補曲は8曲ある。

 その中で歌いたい曲をクラスごとに選択し、各クラス1曲ずつ曲を歌う。

 例えば、俺達は「A」という曲を第一希望にしていたとして、

 それを知った1組は「A」か「B」で迷っていたなら、確実に歌える「B」か50%の確率で逃してしまう「A」なら殆どの場合「B」を選択するだろう。「A」を二クラスで奪い合っている間に他のクラスが容易く「B」を奪い去り、選択肢が削られるのは嫌だろうから。

 4クラス間でリアルタイムに情報を交換して確実に歌える曲を選択する。


 その架け橋となって情報網を形成するついでに、「〇〇の好きな人教えてやるから教えてくれ」とか言った奴が現れたら余計な情報もマウスコムに流れ込んでくる。


 その情報は自分達だけが手に入れ、その後有効活用すればいい。

 ほぼ同じタイミングで同じクラスのやつから2回も情報を求める必要はないのだ。“好きな人”が絡んだ情報なんかいくらでも手に入るしいくらでも活用方法はある。

 情報が周り、じゃぶじゃぶ溢れてくる余計な噂話。


 マウスコムにとっては大好物。

 この合唱コンクール(おいしいエサ)は、マウスコムを肥大化させてしまう要因だった。



 ❃



「3組の希望曲はこれ、2組はこれ、1組はこれで………4組はこれか。」

 とりあえずすぐに現時点の希望曲は集まった。


 今は朝。昼休み頃にはだいぶ希望が変わっていそうだ。

 とりあえず集まった情報はメモしておく。


 そして、昼休みにも同じ様に情報を集め、その後放課後にも情報収集。

 朝、昼、放課後の情報収集を3日間行い続けた結果じゃぶじゃぶ溢れてくるうわさ話だけでなく大きすぎる情報網を手にしたマウスコム。

 合唱コンクール当日は特に何もすることがないので、当分はこの噂話と引き換えに他の噂話を手に入れればいい。


 とりあえずめんどくさい練習をこなし、部活中には鈴木や渡辺と話をして、家に帰ったら鈴木や渡辺とゲームをして………



 あっという間に迎えた合唱コンクール当日だった。



 ❃



 合唱コンクール当日。

 うまいことずらした希望が全て通りお互いのクラスがある程度の希望は通せた。

 3日間のすり合わせの成果だろう。


 関西倉北中学校の合唱コンクールは地域の大きめのホールを借りて行うのだが、こんな舞台に立つことは俺にとってトラウマでしか無い。



 俺は生まれつき体が強くない。

 ただ、合唱コンクールやそれに準ずる行事の時に限ってその体の弱さが発動することが多い。


 ある時は幼稚園の歌の発表会。

 これまた地域のホールを借りて行ったものだが、前日に熱を出していたが無理をして参加した結果合唱中に気分が悪くなりその場にゲ(自主規制)。

 またある時は小学5年生の時。

 卒業式に出席するときに卒業生へ向けた歌を歌うので、その練習をしていた。

 その時、突然声を出しにくくなり立ち眩みがした。

 視界が粒の様な黒い闇に覆われ、俺はその後の意識を失った。


 唯一歌と関係ない時があるとするなら、

 小学校6年生のとき、夏休みの宿題でなにか料理を自分一人の力で作ってどんな料理をどんな手順で作ったかまとめ、写真を添えて提出。というものがあった。

 野菜を切っている最中、何故か突然意識を失った。

 あ、そういえばあの時はBluetoothのスピーカーにスマホを繋いでボカロ曲を大音量で流していたような………


 今回はそんな不幸がないことを祈りつつ、

 舞台袖に俺達2組は待機している。

 今歌っている1組の出番が終わればすぐに俺達が歌うのだ。


『次。1年2組の発表です。曲名は―――』


 俺は歌がうまいわけではない。

 練習すればそれなりには歌えるが、やはりそれも中の中程度の実力でしか無い。

 しかしうまくないならうまくないなりのやり方というのはある。

 声を出す。

 それだけでも会場に声を響かせることができる。


 ただ、まずい。

 声が出ねぇ……………


 その場に静かに、倒れた。

 これは後で聞いた話だが、その後の場の空気は静まり返っていたらしい。




【神谷】え!?祐介!?

【瀬崎】ちょ、何!?何があったん!?

【金子先生】え!?高橋くん!?

【■■】(祐介を見つめる)……………


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