第十話 「体育祭、見せるは脱走劇」
「なぁ■■、今の俺、お前にはどう映る?不様?」
「うん。めっちゃ不様やな。」
祐介は「牢屋」に入ると3組の連中を集め作戦会議を小さな声でしている。
何を考えてるか、何を言っているかは分からないが恐らく白組に勝ち目はない。
「って………ハハハ。おもろー」
「牢屋」から少し離れたところに瀬崎が助けに行こうとしてるオーラ全開でこちらを見ている。
恐らく、先程の作戦会議も瀬崎が助けに来ることを伝え、逃げる算段でも立てていたのだろう。
残りは30秒。
「よし。脱走!」
祐介の叫びを合図に、瀬崎とは反対方向に白組が走り出す。
「…………はぁ!?」
❃
白組の現在の牢屋にいる人数は25名。
残り時間は3分だった。
瀬崎の準備も万端。
俺は両手を上げ「牢屋」に向かいながら■■に問いかける。
「なぁ■■、今の俺、お前にはどう映る?不様?」
「うん。めっちゃ不様やな。」
捕まった、こいつはそう思っただろう。
残り2人のケイサツも両方が「あ、もうひとりが捕まえたのか」と勝手に納得してくれるだろう。
俺を囲むようにデブ軍団が来た。
「いいか、一回しか言わへんからよく聞けよ?
俺は捕まってない。瀬崎がもう少ししたら■■の気を引くからその間に逃げるで。」
そういうと俺はデブ軍団の1人1人にこっそりタッチして全員をルール上では「牢屋」から開放することに成功した。
まだ物理的な開放はできていないが。
■■の方に現れた瀬崎は右手でこっそり親指を折り曲げて4を作る。
「お前ら、捕まっていいのは最大4人。それで引き分けやしな。目標は3人………よし。脱走!」
瀬崎がいたのと反対の方向に全速力でダッシュし、無事全員が脱走に成功した。
残り10秒。
残り2人のケイサツも瀬崎の警戒に頭と身体を使っていたせいでろくに機能してなさそうだ。
「勝者、3組です……………とりあえず高橋君のやつビデオ判定します。」
❃
「えービデオ判定の結果高橋君は捕まっていない、ということが分かりました。「牢屋」に置いておいたマイクにも、「捕まった」という言葉を高橋君は一言も発していません。つまり高橋君はルール違反をしていません。」
場はとても大きな盛り上がりと歓声と拍手で盛り上がった。
ただ1人、■■を除いては。
❃
あり得ない。
祐介は確かに「不様?」とは聞いてきたものの、捕まったとは一言も発していなかったのかもしれない。
瀬崎が祐介に手を貸して、デブ軍団の救出に手を貸したのだろう。
その考察は俺の予想を確信に変えた。
2組がなにか企んでいたのは気づいていたが、まさか俺を騙して自分だけ勝つ気だったとは思っていなかった。
まぁ今回は競技の変更があった、というのは間違いない。
その上であいつらは確かに自分達の力でで俺を出し抜き、勝利を手にしたのは間違いない。
もう文句はない。俺の負けだ。
だが、いつか必ずあいつらに復襲する。
❃
午後の競技も終わり、俺達白組は勝利を掴み取った。
「みんな!こんな頼りない団長だったけど、一生懸命ついてきてくれてありがとう。
特に高橋君。」
「え?俺?」
「「え?高橋?」」
「おい学級委員!そんなタイミングでハモんな!」
「俺は本気で高橋君は頑張ってくれたと思っている。
あのずる賢い救出作戦はさすがだった。あのどんでん返しは中々想像できなかっただろう。」
ありきたりな作戦であるとはいえ、「ここであれが来るとは思わなかった」という様な感じだろうか?
どんな単純な作戦でも、油断している状態なら上手くいく。
それを実演したまでのことだが、褒められてるなら素直に褒められておこう。
「まぁ……ありがとうございます。こんな単純な作戦が通じるとは思ってませんでしたが」
「ハハハ謙遜なんかしなくていいよ!得点には関係ないけど、士気を上げてくれたのは間違いなく君で、MVPだ!」
今日は疲れた。
肉体的な疲労もそうだが、度重なる情報戦による精神的疲労もだ。
一応、デブ軍団の男子は俺が、女子は瀬崎が情報網として取り込めそうな感じまで運べた。
今回の学年特殊枠の競技勝利は3組、勝者予想は2組が的中。
そのため今年の学年レクの内容決定権は白組が完全に握ったことになる。
まぁ、クラスでの株も上がった訳だし、ここで目立ってしまった対価としてはちょうどいいか。
こうして、関西倉北中学校の体育祭は終わりを迎えた。
【神谷】ビデオ判定て、そんなんこの学校の体育祭にあったのが衝撃やわ
【祐介】あ〜それな?正直これやった後の審議の事は一切考えてなかったけどあれなかったらどうなったんやろ
【金子先生】あぁ〜急遽予定を変更したんよ。1人の審判では対応しきれなくなってしまったから急いで整備してん
【祐介】金子先生いたんすか!?全然気づかんかった。どこの忍者でした?何番隊?
【神谷】ビデオ判定の話全スルーじゃん




