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91話 不戦の可能性

「悪かったな……こんな話お前らにするべきじゃなかったよな……俺がしっかりしないといけないのに」


 今までは田所さんが頼れる先輩としてDOのメンバー達のメンタルケアを上手く取り扱っていた。なんだかんだであの軽い彼の態度にみんな和まされていた。

 それが突然いなくなってしまい、更にわたくし達のメンタルを揺るがすようなことが立て続けに起こっている。

 特に風斗さんは田所さんと一番仲が良かったこともあってかなりメンタルにきている。


「真太郎さん……アタシが言っても仕方ないかもだけど、今は過去を見ずに前を向こうよ!

 憎しみで仲間を疑い続けるなんて……そんなことし続けてたらあなたの心が壊れちゃうよ!」


 椎葉さんが言うことはもっともだ。

 わたくし達と風斗さんで精神状況に差があるのは、やはり生人さんを敵と見ているかどうかが大きいだろう。

 彼は生人さんに対して常に気を張りメンタルを削り続けている。


「ありがとう……お前達と話せて少しは気が楽になったよ。俺ももっと前向きに考えてみるよ」


 風斗さんの顔色は先程より幾分かマシになっていたが、それでも体調がすぐれないようで休むべく部屋に戻る。


「寧々ちゃんはこれからどうするの?」

「わたくしは部屋に戻って怪我の治療に専念します」

「じゃあアタシはこれからダンジョンに潜って訓練してくるからまたね」


 椎葉さんと別れわたくしは自分の部屋のベッドに座りふくらはぎの様子を確かめる。

 もうほとんど治ってはいたが、もしものことがあってはいけないので今日は休んでおいた方が良いだろう。


「ふぅ……」


 大きく息を吐き、ストレッチをして体を伸ばしながらこれからについて考える。

 田所さんがいなくなり、生人さんが寄生虫だと判明し、DOは今かつてないほどの窮地に立たされている。

 ここが踏ん張り所。勝負所なんだと再認識し自分を揉む手の力が自然と強まるのだった。



☆☆☆

 


「みんな美咲の居場所が分かったぞ! 指定の場所に一旦集合してくれ!」


 わたくしが部屋でキュリアへの対策を考えている時、ランストの通話機能が作動する。

 わたくしはすぐにランストを取り出し装備して二枚のカードを挿入する。


[エンジェル レベル1 ready…… デビルマンティス レベル20 start up……]


 暗黒のカマキリの鎧を纏い、部屋を飛び出て指定の場所まで向かおうとする。


「あ! 峰山さん!」


 部屋を出てすぐ生人さんと出会し、一緒に指定された場所まで向かう。


「絶対に美咲さんを捕まえよう……そしてキュリアも倒そう!」


 わたくしがいつものように生人さんを持ち上げ飛んでいる最中。彼が明るく純粋な声を投げかけてくる。


「え、えぇ……」


 わたくしは歯切れの悪い返事をしてしまう。一つ悪い考えがよぎったからだ。

 もし美咲さんを捕らえたとして、彼女はその時に死ねば諸共と生人さんに真実を伝えるのではないかと。


「生人さん。何があってもわたくしが居ます。それだけは忘れないでくださいね」

「え……? う、うん。僕達は仲間だもんね! 頼りにしているよ峰山さん!」


 何も事情を知らない彼は日常の会話のように接するが、わたくしにとってはとても神経の使うものだ。

 数分後指定された場所まで辿り着き、そこにはもう既に風斗さんに椎葉さん。そして智成さんがいる。

 

「あれ? 智成さんも?」


 地面に降りるなり生人さんが彼に話しかけにいく。


「私も何かできないかと思ってね。説得を試みてみたいんだ。彼女が出てきたら私に少しだけ時間をくれないか?」

「僕はいいし話し合いで済むに越したことはないけど……他のみんなは、特に父さんは許してくれるかな?」

「遊生さんには許可はもらっているよ。危険なことは承知で娘と一つ話しておきたいんだ」


 親としての責任感からか、智成さんは危険を承知してでも行く気だ。


「俺も構いませんが、もし説得が失敗した場合は、その時は一目散に逃げてください」

「分かってるよ。私も流石に命は欲しいからね」


 そうして説得のことやどう戦うか軽く話し合った後、わたくし達は準備を終え今美咲さんとキュリアがいるらしい町外れの廃ホテルまで向かうのだった。

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