77話 お互いの想い
「椎葉さんにも協力してもらって、写真とか上手く使えば何とかなりそうじゃないですか?」
「じゃあ一旦椎葉さんに連絡してみよう」
僕はスマホを取り出し椎葉さんに電話をかけてみる。
「もしもし生人くん。どうかしたの?」
すぐに電話に出てくれたので、早速僕は事情を説明する。
「何それ面白そうじゃん! じゃあ昼頃に帰ってきて三人で一緒に作ろうよ!」
椎葉さんはこの件にかなり乗り気になってくれて、快く頼みを了承してくれる。
話し合った結果いくつかの材料を僕達が買うことになって、プレゼントを買い終わった後椎葉さんの部屋に集合することになった。
「次は椎葉さんについて考えてみますか」
「そうだね。でも椎葉さんか……」
彼女とは数ヶ月の付き合いだが、正直なところ彼女の本心については確信を持てない部分も多い。僕と接する時もどこか取り繕っている感じで本当の彼女自身を隠しているような感じがする。
それはアイドルという職業からくるものなのか、それとも彼女性格からなのか。とにかく僕達は彼女について知らないことが多すぎる。
この前言ってたあの話……何かそれと関係あるのかな?
文化祭のライブの練習の時に言っていた彼女の過去。やはり今考えてみても信じられるものではない。
「無難にアイドル活動に役立つ道具とかどうでしょうか?」
「やっぱ椎葉さんといったらアイドルだもんね。でも何か良い物あるのかな……」
アイドルとしてのライブのことを想像して何か必要な物がないか考えてみる。
そういえば当たり前だけど、この前のライブの時椎葉さんメイク落とすのに綿棒使ってたな……メイク、メイクか……
「ねぇ峰山さん。僕はあまり知らないんだけど、メイクとかで椎葉さんが使いそうなものとか分からないかな?」
「メイクですか。確かにそれならライブでも日常でも使いますでしょうし……ここのお店から無難なものでも選びましょうか」
とりあえず行く店や買う物に検討をつけておいてから、次に僕達は田所さんへのプレゼントを考える。
「あ、僕田所さんにも父さんにも良いプレゼント思いついたかも」
「指揮官にも? 何でしょうか?」
「マッサージ機だよ。最近二人すごい肩が凝ったりしてるみたいだし、年長者なだけあって健康面も心配だからこれを機に何か買ってあげようよ」
田所さんはたまにだが、父さんはかなりの頻度で肩を凝らせていたり腰を痛めている。
そんな二人にはまさにピッタリな贈り物だろう。
「マッサージ器具は……ここにもありそうですね」
峰山さんがスマホでパパッとこのモールにあるお店を調べ上げてくれる。
「ではここからは別れて買いに行きましょうか。その過程でお互いへのプレゼントも買って、一時間ほど後にまたここに集合ということでどうでしょうか?」
「うんそうしよう! 僕が峰山さんにピッタリなプレゼント探してくるから楽しみにしててよ!」
「えぇ。楽しみにしてますよ」
☆☆☆
ちょうど一時間が経ち、僕は先程までいた所まで戻ってくる。峰山さんは既に椅子に腰掛けて待ってくれている。
「ごめん待った?」
「いえ。数分前に来ましたので大丈夫ですよ。それよりわたくしからのプレゼントですが……」
「あれ? 今見せて良かったっけ?」
「あ……渡すのは夜でしたね。でも見せるなとは言われてないですし、今から同時にお互い見せ合いませんか?」
峰山さんは持っている袋をガサガサと漁り僕へのプレゼントを出そうとする。
僕も見せるだけならと袋からプレゼントを出し、僕達は同時に互いのプレゼントを見せ合う。
「あれ……その箱僕と同じの……」
峰山さんが手に持っていたのは僕が彼女に向けて買ったプレゼントと同じ店のものだ。
「生人さんこそ……あのお店で買ったんですか?」
「うん。ネックレスを買ったんだけど、峰山さんも?」
「ふふっ……そうみたいですね。すれ違いになる形で買っちゃったんですね」
おかしな気がして峰屋さんは小さく笑い、それにつられて僕も笑ってしまう。
「ところで生人さんはどうしてそれを?」
「プレゼントを探してたら店員さんに呼び止められて話を聞いてね、そしたらこれだなって思ったんだ。
ネックレスってね。ずっと一緒に居たい人へのプレゼントで渡すんだって! これからも峰山さんとはずっと一緒に居たいからこれを選んだんだ!」
他の人へのプレゼントが買い終わり峰山さんへのものをどうするか悩んでいる時に、そんな姿を見た店員さんに話しかけられたのだ。
その説明を聞いて、僕はこれからも峰山さんとずっと一緒に友達でいたいという想いを込めてこのプレゼントを選んだのだ。
「ところで峰山さんはどうしてネックレスを選んだの?」
「それは……あの、生人さん。この前言いそびれたことを今お伝えしてもよろしいでしょうか?」
「言いそびれたこと? うんいいよ!」
何のことだが分からなかったが、そんなもの今聞けばいいやと思い元気良く返事する。
峰山さんは立ち上がり僕と目を合わせ、口をつむんでしまう。
そして数秒溜めた後に胸の奥底にあるものを吐き出すように話し出す。
「あのっ!! わたくしは生人さんのことがす……」
そこまで言いかけたところで僕達のポケットからアラーム音が鳴り響く。
「わっ!? なんだ!?」
僕はすぐさまポケットからカードを取り出しそこからランストを出す。
このアラーム音は新ダンジョンが出現した時のものではなく緊急連絡の時のものだ。一体何があったのだろうか?
「生人大変だ!! サタンが大量に出現した!!」
父さんから少々不可解なことを伝えられる。
新ダンジョンが出てもいないのにサタンが大量に出たというのだ。
「場所は送ってある! すぐに向かってくれ!」
「分かった! 行こう峰山さん!」
「え……あ、はい!」
彼女は反応が一瞬遅れたが別に何てこともなく、すぐに変身して送られた場所まで向かうのだった。




