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72話 イカ焼き


 文化祭当日。まず僕達生徒は体育館に集められ校長先生の話などを聞いていた。


「では次にDOの指揮官である寄元遊生さんからのお話です」


 壇上に父さんが上がり、先程まで校長先生が使っていたマイクを使い話し始める。


「DO指揮官の寄元遊生だ。まぁみんなの大事な文化祭の時間を長く奪うわけにはいかないから手短に話す。

 怪我なく文化祭を楽しんでくれ」


 それだけ言うと父さんはマイクから離れ壇上から降りる。

 それから間もなく解散となり、生徒は文化祭を楽しみに行ったり運営に回ったりそれぞれ散っていく。


「じゃあ生人くんと寧々ちゃんは午後よろしくね〜」


 岩永さんも運営の方に回る内の一人で、僕と峰山さんに気を使ってくれて午前に二人で一緒に回れるようにしてくれた。

 僕達は午後に変身して二人で人を呼び込んだり受付をやったりする予定だ。


「じゃあ回りましょうか。生人さんはどこ行きたいですか?」

「うーん……」


 僕は事前に先生から渡されていたプリントを制服のポケットから取り出し各クラスや部活の出し物を見る。

 その中でまず目に留まったのは、ダンジョン研究室のダンジョン物品販売店というものだ。

 美咲さんのところの研究チームがカードから具現化した物などを販売しているらしい。


「美咲さんの所に行ってみようよ! あの人がどんなことしてるか気になるし!」

「ダンジョン物品……もしかしたらわたくし達が入手した物とかも販売されているのでしょうか? 興味が湧きますね」


 意見が一致したので僕達は少し歩き、学校の敷地の端にある物品販売所に向かう。

 簡易テントの下に色々品が並んでおり、そこそこ人が集まっていて美咲さんも販売者側で働いている。

 テントの横には木の看板に墨で"物品販売所"と書かれていて、横に小さく"ダンジョンで手に入れた墨で書きました"と書いてある。


「美咲さんこんにちわ! 何売ってるの?」


 早速僕は美咲さんに挨拶しにいく。


「四月辺りに君が倒したイカの足から作られたイカ焼きとかあるけど食べる?」


 美咲さんが立っていた場所の少し左にバーベキュー用のコンロがあり、そこで巨大なイカの一部と思われるものが焼かれている。

 札には一個百円と書いてあり、どうやらタレで食べるようだ。


「食べ……あれ? 四月に入手したものって、それって食べても大丈夫なの?」


 少なくとも普通のイカとかの食品なら半年以上放置しておいたら食べられなくなるはずだ。なので食べることを躊躇ってしまう。


「カードの中にある間は時間が止まってるから、例え数年前の物でも鮮度を保てるんだ。それにこのイカは私自身で食べて安全を確かめてるから大丈夫だよ」


 自分自身で食べたのか……もしそれで中毒にでもなったらどうするつもりだったんだろう?


「ならわたくしも一つもらえないでしょうか?」

「じゃあイカ焼き二つね。石井君頼める!?」

「ウッス!!」


 コンロの近くにいた研究チーム内の部下と思われる人が焼いているイカを二個取りそれを皿に盛り良い匂いのするタレを塗る。

 それを美咲さんが受け取り僕達に渡してくれる。


「わぁー美味しそう! いただきます!」


 人の邪魔にならない場所まで行き、僕はイカに齧り付く。

 まず濃厚なタレの味が口に広がり、次に水々しく柔らかい食感が口の中を覆う。これ自体かなりの大きさだったが、それでもペロリと食べれてしまうほど美味しかった。


「美味しかったですね。サタンの体なんて食べれるのかどうか怪しかったですけど、彼らも一応地球上の生物を元にしているからか地上の物と大差ありませんでしたね」

「将来はサタンが主食になったりするのかな?」

「流石にそれはないと思いますけど、カードの技術を上手く応用すれば飢餓問題は何とかできそうですね」


 半永久的に保存できて運ぶのにもコストがかかりにくい食品。確かに実用化できればかなり便利だろう。


 そういうのは美咲さんのお父さんの……確か智成さんだっけ? その人が外交関係で色々やってるって聞いたけど、このことも視野に入れてたりするのかな?


「まぁ今日はそんな将来のことより文化祭を楽しみましょう。次はどこに行きますか?」

「えーとじゃあね……」


 ダンジョンの将来の利用方法のことなどすぐ頭から抜け落ち、僕は峰山さんと一緒に文化祭を楽しむのだった。

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