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51話 アムバイス

「命綱の準備はいいかい?」


 僕は朝食を済ませ、アスレチックの前まで来て美咲さんから受け取った命綱を装着する。


「うん! しっかり付けたよ!」

「この前君に渡した武器のために君の身体能力を計ることが主な目的だけど、実を言うと他にも目的があるんだ。

 そのために君にはより効率良くここをクリアしてもらいたい」


 美咲さんが紙を一枚取り出し僕に見せる。

 ここのアスレチックの進むルートが書いてあり、そこそこ長く種類も三十以上ある。


「いいけど……どうして?」

「あの武器は状況に応じて剣、槍、斧を使い分ける必要がある。君には即座に最適解を見つけ行動に移す応用力を身につけて欲しいんだ」


 僕は今まで武器というものを扱ってこなかった。大抵素手で格闘術を使い戦ってきた。

 そんな武器の素人の僕は、今この武器を使えるようになったとしても上手く扱えないだろう。


「分かった。僕はもっと強くならなくちゃいけないし、やれることなら何でもやってみるよ!」


 僕は気合い十分に、早速アスレチックの入り口まで行き軽く準備運動をする。


「一応私がストップウォッチで計るから時間は気にせず常にベストと思える行動をしてくれ」

「分かった! 行ってきます!」


 僕はまず順路の最初である木の杭の上を跳んで進むアスレチックから始める。

 僕は小さい足場の上をスイスイと進んでいき、ボルダリングエリアに辿り着く。

 高さ五メートルくらいはありそうな崖がボルダリングの壁みたいになっており、僕は目で最短ルートを模索する。


「ここかっ!」


 両手両足使い、手が届くギリギリまで攻めて空中を飛ぶように上へと登っていく。


「とうっ!!」


 崖の上まで着きその次は水ゾーンと呼ばれるところで、大きな湖には様々なアスレチックがある。

 網の上を渡ったり動く足場を走って僕はそのエリアも踏破する。


 それからいくつものアスレチックをどんどん攻略していき、二十分くらいで僕はスタート地点に帰ってくる。


「良い走りっぷりだったよ。記録は……19分38秒だね」


 美咲さんがドローンを自分の手元に戻し、ストップウォッチをこちらに見せてくれる。


「君には日曜までに10分を切ってもらおうか」

「え!? 10分!? 流石に無理なんじゃないかな……」


 確かに先程の走りにはまだ改善の余地はたくさんあった。

 しかし時間を半分にするというのは流石に無理がある。できて15分くらいが限界だろう。


「いや、私の計算上ではきっとできるはずだよ」

「美咲さんがそう言うなら……」


 諦めちゃ……だめだよな。そうだ。あのキュリアを倒すためならどんなことでもやってやるんだ!


 それから僕は日が暮れるまでずっとアスレチックを行った。

 段々と体が慣れていき、先を読むことでより短時間で踏破できるようになり、この数ヶ月で上昇した身体能力を再確認することができとても有益な数時間だった。


「ふぅ……」


 日が沈んできて、そろそろ見えづらくなって危ないので僕はアスレチックを切り上げてコテージに帰ってシャワーを浴びる。

 お風呂から出てコーヒー牛乳を飲んでいる時、視界の端にパソコンを凝視して何かを打っている美咲さんが入る。


「何やってるの美咲さん?」


 彼女の背後からパソコンの画面を覗き見てみたが、内容は難しく専門的で僕には分からない。

 

「ドローンで撮影した君の姿を元にその装備の最終調整をしていてね……そういえばそれの名前を決めていなかったな……生人君は何か良い案はあるかい?」

「名前……特には思いつかないなぁ」


 いくつか頭の中で候補を挙げ考えてみるが、まさにこれだと思える良い名前は浮かんでこない。


「それじゃあアムバイスっていうのはどうかな? 腕につける機器だからアームデバイスから取って」

「それ良いね! それにしよう!」



☆☆☆



「はぁ……はぁ……美咲さん記録は!?」


 次の日の昼過ぎ。僕は朝から練習に練習を重ね、自分なりにかなり良いタイムを出せたと思える走りができた。


「タイムは……9分48秒だね。やったね生人君!」

「やったぁ!!」


 僕の心は達成感に満ち溢れ、嬉しさのあまりその場で跳び跳ねる。


「今の生人君ならきっとアムバイスも使いこなせるよ。

 こっちもさっき最終調整が終わって完成したから今から持ってくるよ。ここで待ってて」


 美咲さんはコテージの方にアムバイスを取りに行く。

 

「ふんふんふふーん」


 僕は鼻歌を歌いながら美咲さんを待つ。今回の経験を通じて僕は視野が広く、対応力が上がったと思える。

 それはつまり強くなり、理想のヒーローに近づいたということ。

 それがたまらなく嬉しかった。


「うん?」


 僕の広くなった視野は少し離れた所の木と木の間で何かが動いたのを見逃さなかった。


「登山しに来た人かな……?」


 そう口にはしたものの、それはありえないということに気づく。

 ここはDOの所有地。恐らく一般の人は入ってこれないようになっているはずだ。


「よぉ生人。オレの気配に気づくとは流石だな」


 先程動きがあった方から、ふらりと自然に、まるでそこにいるのが当然かのようにキュリアが出てくる。


「なっ!? お前……!!」


 咄嗟のことで動転しそうになったが、僕はすぐに冷静にポケットに入っているカードからランストを取り出し装着する。


「早速か……まぁオレも早くやりたかったし都合がいいや。やろうぜ! この前の続きをよぉ!!」


 キュリアも例の菱形のランストを取り出し装着する。


「変身!!」


 僕達の声が森の中に響き木々の葉を揺らす。


[ラスティー レベル1 Ready……アーマーカード ホッパー レベル6 start up……]

[select……フレイムファイター レベル25]


 僕達はそれぞれの形態に変身し、互いに向き合うのだった。

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