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31話 レベル25

「まずいですね。本来ダンジョンは制圧後例え出たとしても門の前に出るはずですが、エックスは存在しない謎の技術を持っている可能性は高いです。このままだと逃げられる恐れも……」


 峰山さんが状況を分析し、その結果を僕に述べる。その内容に特に間違いはなく、今苦しい状況だということにも間違いはない。


「おーい! 二人とも何してんだ!?」


 離れた所から田所さんが足のタイヤを回転させながらこちらに走って来る。こちらに到着すると足を人間状態に戻して話を伺ってくる。


「エックスはどこに?」

「僕と峰山さんが戦っていたけど、この中に逃げられちゃって」


 僕は門の方を指差す。いつでも入ることはできるのだが、周りの市民の安全確認もできていない状況では下手な行動はできなかった。


「みんなの頑張りで外に出ているサタンはもういない。自衛隊の人達もさっき到着したし……後はその人達と風斗ちゃんだけで大丈夫っしょ」


 田所さんが門の方に歩き出し僕達について来るよう背中で促す。それを見て峰山さんは地面に降り、彼の後ろにつく。


「そうですね。事態は一刻を争います。制圧と平行しつつ奴を三人で捕えましょう」

「うん! もうこれ以上負けっぱなしってのも嫌だし、今度こそ勝ってひっ捕らえよう!」


 僕も頬を叩き気合いを入れ、そうして僕達はすぐ後にやって来た自衛隊の人に門の監視を任せ、中に入っていくのだった。


「あれ? 景色変わってなくね?」


 門を潜り早々に田所さんが首を傾げる。それは僕と峰山さんも同様。いつもならジメジメした洞窟や鬱蒼とした森なのだが、今回はそのままショッピングモールにやって来たのだ。ここまでモロに地上の影響を受けているのは珍しい。


「いや、違うか。二人とも外見てみ」


 彼に言われ上を見上げると、天井のガラスから見えた空は紫色に染まっていた。


「うえーなにあの空? 気持ち悪い」


 その常軌を逸した不気味なものを見てゲンナリとしてしまう。


「あまり長く見たいものではありませんね。早くエックスを捕えてボスを倒してここから出ま……どうやらお出迎えらしいですよ」


 物陰から十数体の様々な動物のサタンが現れ僕達を取り囲む。


「数は十七ってところか。自分らを倒すにはちょーっとばかし数が足りないな」

「僕達三人なら余裕だね」


 僕と田所さんはお互いに鼓舞し合うように言葉を投げかける。


「二人とも油断しないでくださいよ。どこかにエックスも潜んでいますから」


 一方彼女はそんな僕達に注意を促す。ごめんごめんと言う暇もなく奴らが一斉に動き出し僕達に様々な攻撃を仕掛けてくる。

 しかし僕達三人にはそんな攻撃ないも当然だ。互いに互いをカバーして、一切の隙を見せずに奴らを蹴散らしていく。


「さっ、二人とも下がって! 自分が一気にまとめて吹き飛ばすから!」


 田所さんが必殺カードを取り出す。気づけばサタン達は一箇所に集められていた。


 僕は一番最適な行動を選んでたつもりだったけど、田所さんはそれすらも読んでサタン達がどう動くのか計算してたのか。すごい。やっぱり田所さんは一流だな。


[必殺 バイクリフレクション]


 前に見せたあの技で、奴らを抉り取り蒸発させ、最後は大爆発で吹き飛ばす。辺りのガラスは全て割れ、僕達の方にも爆風が伝わってくる。


「おい! 三人とも大丈夫か!」


 倒しきったところで背後の門から風斗さんが飛び出てくる。


「見て分かるでしょ? 大丈夫。おじさん経験長いから~」


 それに田所さんはふざけた声色と伸ばした言葉で返答する。これで実際強いのだからあまり文句も言えない。


「心配もしますよ。配信はエラーで音声も映像もない通信も繋がらない状況じゃ」


 確認する暇なかったけど、やっぱり配信は起動していないのか。じゃあまだエックスがいるってことだよな。


「エックスちゃんはシャイだなー。そんなに配信に映るのが嫌か。じゃーおじさんエックスちゃんの中身ここで盛大にバラしちゃおうかなー!!」


 田所さんはわざとらしく大声で奴を挑発する。明らかに見え透いたブラフだったが、なんとこれに釣られたのか奥の方からエックスが姿を現す。


「本当に出て来た。まぁ中身知っているのは嘘じゃないんだけどね」


 その言葉にエックス含め全員が驚き彼に視線を向ける。舞台のスポットライトが彼に当たるように、今みんなの視線と注意が彼に集まる。


「ねぇ? ダンジョン研究代表の……安寺美咲。こーんな危ない所で一体どんな秘密の実験をしてるんだ?」


 その発言に真っ先に、そして血相を変えて反応したのは僕自身だった。あまりに信じられない内容に反応を即座に返してしまう。


「な、何を言ってるんですか? 美咲さんがそんなわけないですよ! あの人は優しくて、小さい頃から僕の面倒も見てくれて……あ、いつもの冗談なんですよね?」

「生人……悪いけど、お前には厳しい現実を突きつけなきゃいけない」


 僕の冗談に違いないと信じた希望は、彼の真剣な返答によって否定される。しかし思わぬ所から僕の希望を掬い上げる助け舟が出される。


「オレは美咲ではない」


 エックスはそう言うと乱雑にランストを引き剥がし変身を解く。

 そこに立っていたのは……


「えっ? 君……誰?」


 僕がつい素っ頓狂な声を上げるくらい見覚えも接点もありそうもない、高校生くらいの男の子だった。

 黒いパーカーに白いシャツを着ており至って普通の人間だ。


「田所先輩……こんな時にまでふざけた冗談やめてください! 美咲さんどころか性別すら外してるじゃないですか!!」


 あまりに間の抜けた空気に僕と峰山さんは呆気に取られ、風斗さんは田所さんの態度に我慢ができなくなり憤慨する。

 肝心の田所さんは、


「あ、あっれぇ? おかしいな。絶対あの人以外ありえないのに……」


 顎に手を置き結構真剣に頭を悩ます。


「ま、まぁ結局やることは変わんないから! 自分らで捕まえて情報吐かせる! 以上! 行くぞ!」


 彼は清々しい程の開き直りを見せ、謎の青年に向かって銃口を突きつける。


「変身している奴が四人……やっと揃ったか」


 それを見て奴は変身するでもなく、僕達に対して悪意のない、非常に無邪気な笑顔を見せる。


「役者は揃った。さぁ、ここからが本番だ。オレを楽しませてみろ!」


 奴はどこかからか金色に光り輝くひし形の物体を取り出す。ランストかと思ったが全く違う形状の物で、僕達は何をやっているんだアイツと軽く混乱する。

 その横には透明なカードを入れるであろう部分があり、彼はそこにカードを一枚セットする。次に腹部にそれを押し当て、ランストのようにベルトを出現させる。


「変身!!」


 奴は力強くカードを入れる部分を本体の方に向かって叩き中に押し込む。次の瞬間奴の目の前に正方形の物体が出現し浮遊する。

 それは色が四等分されており、赤、青、緑、黄色で作られている。奴はそのうちの赤色をタップする。


[select……フレイムファイター レベル25]


「レベル25ですって!?」


 謎の形状のベルトから流れたありえないレベルを告げる音声に僕達は驚愕する。峰山さんに至っては驚きのあまり叫び声が漏れていた。


 赤色以外の部分は消え、赤色の部分は大きくなり奴の全身を勢い良く通り過ぎる。すると奴の姿はいつのまにか僕達同様鎧を纏ったものとなっていた。

 真紅のような燃え盛る赤に、炎だと錯覚してしまいそうな色のボクサーのグローブのようなものを手につけていた。


「バトルスタートだっ!」


 奴がより一層楽しそうに声を荒げ僕達四人相手に襲いかかってくるのだった。

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