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11話 罪悪感(椎葉視点)

「これでいい美咲さん?」


「あぁ大丈夫だよありがとう」


 サタン大量発生から三日後。とりあえず今までサタンが再び現れることはなかった。今もキュリアくんは外で逃げ遅れた人を助けたり、サンプルの採集を手伝っている。

 美咲さんはアタシから貰った試料を用いて何かしらの実験を行う。相変わらず何をしているのかはアタシにはさっぱりだが、表情から察するにかなりの進展があるようだ。


「それで何か分かったの?」


「田所君達は生と死の狭間に連れていかれた可能性が高いね。分かりやすく説明すると、あの黒い稲妻は触れた生物の魂をそこに送るというわけだ」


 逆説的に言えば魂をこっちに連れてこれるということ。だから愛花ちゃんが……


 この体の本来の持ち主。風斗愛花。彼女が今のアタシを見たら何と思うのだろうか。間違いなく良い感情は抱かないだろう。


「でもどうしてそんなことを? 世界征服とかが目的なら回りくどい気がするし……」


「現段階では分かりようがないね。でも奴らへの対抗策ならできた。それがこれだ」


 美咲さんが一枚のカードを取り出しそれをこちらに見せびらかす。

 ”リバース”と書かれたスキルカード。英語と考えるなら逆転、反転という意味となる。


「被害範囲はまだこの街に収まっている。このカードを量産してワープ装置から反転効果を散布すれば、生と死の狭間にいる人達は戻ってこれるはずだ」


「なら今すぐにでも量産を……」


 アタシの言葉を遮るようにこの建物全体を大きな衝撃が襲う。大地震が起きたかの威力の揺れにアタシ達は地面に伏してしまう。

 しかしそれは地震でないことは明らかだ。揺れが断続的で一瞬ずつしか襲ってこない。


「まさか……敵襲!?」


 アタシは窓を開き衝撃の出所を探る。

 元凶を見つけるにはそう時間はかからなかった。あんな数の団体でいたら見つからない方が無理だ。

 推定五十近くはいるサタンの群れ。そいつらが建物に攻撃し揺らしていた。肩には大砲のようなものが着いており、そこからエネルギー弾を発射している。


「美咲さん!! サタンの大群よ!!」


「くっ……量産にはまだ時間が……」


 苦虫を潰した顔で、焦り混じりに量産を始める。その間も揺れが強まっていきこの建物の倒壊もすぐそこだ。


「アタシが時間を稼ぐ!! 美咲さんはそっちをお願いっ!!」


 アタシは窓から飛び降りつつランストを装着し変身する。


[アイドル レベル1 ready……]


 宙を落下しながら鎧を身に纏い戦闘にいた奴の顔面を蹴りつつ大砲の標準を他のサタン達の方に移す。

 先頭の奴から放たれた弾は群れの真ん中に着弾し凄まじい爆風を出す。サタンらは体勢を崩しその場に倒れ散らかる。

 倒れたそこにマイクの球体を飛ばし、奴らを次々に踏み台にしつつ頭蓋を踏み潰していく。


[アーマーカード デネブルアイドル レベル50 start up……]


 半分ほどまで数を減らし、そのあたりで奴らも大多数が立ち直る。アタシはアーマーを一枚重ね着し激戦に備える。

 しかし奴らが襲いかかってくる気配はもうない。大砲は斜め下を向き明らかに戦う様子ではない。まるで誰かにそう指示されたかのように。

 呆気に取られていると奥の方からパチパチと拍手が聞こえてきて、ビルとビルの隙間から姿を現す。


 この体の本来の持ち主……愛花ちゃんが。


「久しぶり……って言った方がいいのかな? この場合は」


 彼女の目を見つめられない。目線を逸らしてしまう。彼女の瞳を見続けたら罪悪感で心が締め付けられてしまうから。


「愛花ちゃんがここにいる理由は察しがつくよ。でも、これだけはまだ分からない。今のあなたは本当に心まで愛花ちゃんなの?」


 その言葉を聞いた途端彼女の張り付いていた笑顔が消え去る。そして無の表情のまま淡々と話し始める。


「それを聞いてどうするの? あなたは自分の罪悪感を誤魔化したいだけじゃないの?」


 図星を突かれ、まだサタンがそこらじゅうにいるというのに激しく動揺してしまう。

 アタシは今日まで愛花ちゃんの体を使って自分の好きなように生きてきた。

 アイドルになってみたり、生人くんや寧々ちゃんといったかけがえのない友人を作ったり。


 そして……この子の記憶や感情が抑えきれなくなり真太郎さんとも……


「まぁいいや。あなたがどう考えてようと関係ないし。ねぇ……死んでよ」


 彼女はランストを装備し二枚のカードを挿入する。


[アイドル レベル1 ready…… アーマーカード リベンジャー レベル50 start up……]



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