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7話 死と夢の中(田所視点)

 

「おーい。浩一郎ちゃん」


 深い眠りの中俺は半ば強引に目を覚まさせられる。そこはDOの待機室だ。


「ここは……あれ? 俺は何でここに……?」


「どったの? 働きすぎて疲れて寝ちゃってたんでしょ。全く。自分みたいに息抜きしなきゃいつか死んじゃうよ?」


「うーん。そうだよな」


 頭が痛い。ぼんやりする。まるで長い悪夢を見ていたみたいだ。

 背筋を伸ばし大きく欠伸をし、頭の中をゆっくり整理する。


「……さん」


 どこからか男の子の声が聞こえてくる。頭痛が酷くなり吐き気もしてくる。


「あがっ……!!」


「浩一郎ちゃん!?」


 頭を押さえる俺背中を親友は心から心配してくれて背中を摩ってくれる。


「ろさん……ころさん……」


「うるさい……うるせぇ!!」


 頭痛を加速させるその不快な声を掻き消す。それでも音は消えなかったが突如として部屋とランストから鳴り響くアラームがその不快な声を掻き消してくれる。

 すぐに指揮官から連絡が来て俺達はその内容に絶句してしまう。同時に何十個もダンジョンが出現したらしい。


「クソ!! 何でこんな同時にダンジョンが!?」


 他の仲間はもう現場に向かった。俺達二人も変身して急いで現場に急行する。二人一組の三グループでダンジョンを制圧したり民間人を守ることとなり、俺と親友でダンジョンを制圧していく。

 

「はぁ……はぁ……これで八個目か」


「いや〜このままじゃ間に合わないかもね」


「そう思うならヘラヘラしてないで真剣にやれ!!」

 

 こんな状況のせいか、薄っすらと続くあの声のせいか俺は知らず知らずのうちにストレスや疲労が溜まってきており、つい怒鳴ってしまう。


「……そうだよな。悪いな。いつも……」


 いつものふざけた態度とは正反対の塩らしい態度。何故かその様子に見覚えがあり、同時にとても嫌な予感がする。


「そうだ! 今から別行動しようぜ! そっちの方が効率良いしさ」


 そうだ。俺は確かここで……ここで……


 曖昧だった記憶が鮮明になっていく。その時背後から一人の男の子が、生人ちゃんが歩み寄ってくる。


「そうか……全部思い出したよ」


「田所さん……」


 この世界に亀裂が入りどんどん崩壊していく。本来の記憶を取り戻し拒絶し、元の選択をしたことにより俺を閉じ込めるためのこの空間は意味をなさなくなる。


「浩一郎ちゃん……自分を、見捨てるのか? 今ならまだ間に合うぞ!!」


 親友は体をボロボロと崩壊させながらも、涙目になり訴えかけてくる。生きたいと。


「ごめんな。あの時お前の考えに気づいてやれなくて。自分自身のことしか考えていなくて……でもな」


 俺はランストを取り出しデッキケースから銃を取り出す。それを決別させるべき過去に向ける。


「俺は……自分は、今大事な後輩を持ってる頼もしい先輩なんだよ。だから……これでいいんだ」


 そう自分に言い聞かせて引き金を迷いなく引く。世界は完全に崩壊し、自分は辺り一面黒一色の空間に放り出される。


「田所さん……!!」


 その場にはたくさんの人がおり、寧々ちゃんや風斗ちゃんの姿もある。しかし全員虚な瞳で心ここに在らずといった様子だ。

 その中でも生人ちゃんだけは正気を保てている。額には虫を浮かび上がらせており先程まで寄生虫の力を使っていたことが見て取れる。


「後輩に助けられるとは自分もまだまだだね〜」


「そうでもないよ。田所さんが強いから助けることができた。風斗さんと寧々も助けようとしたけど、ダメだった。干渉すらさせてもらえなかった」


 生人ちゃんの顔を見るにだいぶ疲労が溜まっている。もう二人に対しては力を使った後なのだろう。そして結果自分だけが元に戻れた。


「それで一体これはどういう事態なの?」

 

「この事件はボクの昔の知り合いの寄生虫が起こした事件なんだ。目的はまだ分からないけど、どうやらあの黒い稲妻で刺されると魂だけこの空間に送られるらしい」


 魂だけ。にわかには信じられなかったが今のこの状況はそのことを事実だと証明している。


「でいいんだったよね? モルス?」


 生人が向けた視線の先には一人の黒髪で褐色肌の可愛らしい女の子が生気の籠った瞳を持ち立っている。

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