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4話 死を司る巫女(キュリア視点)

「誰って……ボクだよ!! 生人だよ!! みんなどうしたの!?」


 本当にそうなのか白を切っているのか。オレは埒の明きようがないのでいくつか質問することにする。


「まず五年前ならともかくお前はずっと寧々って呼んでたのにどうして呼び方を急に変えた?」


「あっ……そ、それは日本語を使うのが久しぶりだから間違えちゃって」


 話自体には筋は通る。だがこいつの目は泳ぎなにより濁っている。とてつもなく怪しい。


「あと今日最初に会った時、お前から生人じゃない誰かの気配がしたんだよ。それはどう説明するんだ?」


「えぇ……そんなの気のせいじゃないの?」


「じゃあここで埒を明かそうぜ。いま虫の姿になってみろよ。生人特有のあの力が籠った芋虫にな」


 途端にこいつの表情が消える。最初のあの虚ろな瞳に戻る。


「やっぱりすごいですね。こんなに早くバレてしまうなんて……」


 口調と声色がガラリと変わる。いつもの生人の人を安心させる温かく優しい気配から、何も感じない絶対零度のものへと豹変する。


「お前は一体誰だ!! 生人はどこに……」


「あの人は死にました」


 その一言に彼女の周りだけだった凍てつく空気がこの部屋全体に広がる。

 こいつは不気味ながらも嘘を吐くのは下手だ。だからこそこの発言が事実だということもこの場にいる全員が分かってしまう。

 雨が降り始め窓ガラスに大粒の水滴が付着する。


「えーと、皆さんここから実力行使に出るのですよね? あまり気は乗りませんが……変身」


[complete...... レベル 80]


 こいつの全身から黒いドロドロした液体が漏れ出し、中から可愛らしい生人と同じくらいの体格の女の子が出でくる。奴は生人のランストと美咲が開発したあの装置を着けており、ためらいなく虹色の鎧に裾を通す。

 オレ達も各々出せる最大レベルの鎧を身に纏う。レベル100のオレと50の二人。今のこいつを倒すには十分な戦力だ。奴はアーマーカードを一枚取り出し、鎧の重ね着か召喚かは分からないがセットしようとする。


「遅いっ!!」


 しかし鎧の性能の割には動きに無駄が多く、オレの蹴り上げの方が速くカードは飛ばされ宙を舞う。


[スキルカード マジック]


 分身した椎葉に翻弄され隙だらけになったところに寧々の小型ミサイルが何発も命中する。煙を裂いてオレが飛び出し武器の切っ先で胸を深く抉る。

 先程から薄々感じていたがこいつは戦闘に関しては素人だ。この程度で変身は解除される。見た目相応のガキの実力だ。


「あなた……他に仲間がいるわね? 誰かしら? そして目的は何かしら?」


 寧々もこんな色々と粗が多く拙さが目立つ女の子が単独で悪事を働くことに違和感を覚えたようで、その巨体で駆動音を鳴らし詰め寄る。


「あの人の目的は始まり……」


「あの人? 始まり?」


 こちらの認識など配慮せず奴は代名詞だらけの言葉を紡ぐ。


「そしてわたしの目的は……」


 先程の黒いドロドロが体から溢れ出す。本能で危機を察知しオレは寧々の足を引っ張り無理やり後退させる。


「死」


 ドロドロが沸騰し始め、そこから黒い閃光が何本も飛び出る。数多の稲妻が壁や天井に突き刺さり、そしてそのうちの数本が寧々の体を捉えてしまう。


「寧々!!」


「寧々ちゃん!!」


 彼女の変身は解けその場に膝を突く。


「あがっ……これは……!?」


 寧々の顔からみるみる生気が抜けていく。顔が青ざめていく。


「クソッ!! 一体何をし……いだっ!!」


 稲妻を手で掴み抜こうとしたものの触れただけで凄まじい悪寒が走り手を放してしまう。


 まずい……こんなものにずっと触れ続けているなんて寧々は……!!


「うぐっ!!」


 一瞬寧々の体がビクンと跳ねる。激しく痙攣したかと思えば動かなくなる。

 首が脱力し顔がガクンと垂れる。心配になり覗き込んだことをオレは後悔する。


 彼女の瞳は目の前の存在と同じ空っぽで虚ろな瞳をしていたのだから。

 

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