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04 プロローグ


 決断をしてから一ヶ月後。美咲さんが完成させた宇宙船の前にボク達は集まっていた。


「へぇ……すっごい大きい。アタシの何倍の大きさなんだろ?」

「侮るなよ。ダンジョンの異空間システムを使い愛君が思っている以上にこの中は快適だ。

 私はやるからにはとことんやる性格なんでね」


 ボクも試運転に乗せてもらったが、中は凄く快適でまるで高級ホテルのようだった。

 設備も整っていて星と星の間の移動中も飽きず感覚が衰えたりもしないだろう。


「それで君達はどうするか決めたかな? もちろんついて来いと強制はしない。みんなと過ごしたこの星に残るのもまた一つの選択だ」


 ついに訪れたこの別れ道。あれからみんな意見を交換し合ったが、結局のところボク以外は今の今まで決まりきらなかった。


「オレはやっぱついてくことにするよ。生人もいるしな。

 それにお前に勝ち越されたままさよならってのも気に食わねぇしな」

「えーっと、トランプがボクが十四勝多くて……」

「いやトランプは十三勝だぞ間違えるな!」

「あははそうだったねごめんごめん」


 キュリアは美咲さんとボクがいるこちら側まで来て自分の決断を主張する。


「アタシも行くことにするよ。もちろんお兄ちゃんが居たこの星に居たいって気持ちもあるけど、やっぱり今居るみんなと離れたくない。

 それに宇宙相手にもこのアイが通用するって、お兄ちゃんの妹が宇宙で活躍できるって証明したいしね!」


 椎葉さんもこちら側に来てくれて、あとは田所さんだけとなる。


「なぁみんな……人生って、いや人生って言うのも自分らじゃおかしいか」


 田所さんは一回咳き込み言葉を言い直す。


「物語ってどうなるか分からねぇもんだよな。警察やってたら親友が殺されて、それを追いかけてたらいつのまにか可愛い後輩に囲まれて、それで突っ走った結果今度は自分が殺されて」


 田所さんが美咲さんのおでこにデコピンをし、ふらふらと歩いては頭の後ろに手を組んで遠くの黒い空を見上げる。


「かと思えば寄生虫として生き返ってこうして千年近くみんなと一緒に居る」

「確かに、私もこんな物語を紡ぐことになるとは思いもよらなかったよ」

「だよな……」

 

 彼はその場に座り、見えもしない星に向かって手を伸ばす。


「この先にはまたたくさん人が居て、そこに生人ちゃん達が行ってたくさんの物語を作っていくんだろ?

 じゃあ行かない手はないでしょ! どんな未来になるのか、物語がどう続いていくのか。おじさん気になって仕方ないんだ。

 だからこれからもよろしくな!」


 田所さんはボクの肩にポンッと手を置き美咲さんの目の前まで向かう。


「なら決定だね。よし! みんな荷物をまとめてくれ! 三時間後にはここを出る。問題はないね!」


 ボク達は特に異論はなく、各々持ってきていた荷物を宇宙船に運び、それぞれの部屋に入れる。

 

「それにしても本当に中広いなー。なぁ生人? 聞いた話だと次の目的地の星には数ヶ月かかるんだってな」

「そうだね。ボクとキュリアなら数時間で行けるけど、他三人は虫になれないからね」

「じゃあ今からの数ヶ月何やって遊ぶ?」


 まるで修学旅行のバス移動の気分で、ボク達は心を躍らせて騒ぎ出す。


「そろそろ出るよ。みんないいかい?」


 そして出発の時間がやってくる。美咲さんがタブレットを操作して次の目的地を指定する。


「そういえばそこってどんな場所なの?」


 つい気になり横からそのタブレットを覗き込む。


「ん? 無人探査機によると、結構地球と文化が似ているらしくてね。何やら丸い球みたいな物を用いて私の作った鎧のようなものを身につけて戦っているね」

「へぇ……それは面白そうだね!」

「じゃあ本当に行くよ……さぁいざ出発だ!!」


 美咲さんが最後にボタンを押すと、宇宙船が浮遊して大気圏を突っ切り更に加速していく。

 窓から見える景色は絶景そのもので、色んな星々が見えそして地球が遠ざかっていく。


「なぁ生人? 前々から気になってたんだけどさ、そのネックレスって何なんだ? だいぶ昔からずっと付けてるよな?」


 出発して地球が見えなくなってきた頃。ふとキュリアがボクの首元を指差す。


「あぁこれ? 思い出……かな。絶対に消えないボクの大切なものだよ」


 ボクはこのネックレスに、何回も改造してまでも残したこの思い出に触れる。


 ボクの物語はまだまだ始まったばかり。やっとプロローグが幕を開けただけなのかもしれない。

 やがてはみんなはボクを置いて先に死に、最後はボクだけとなるだろう。きっとそれは避けられない運命だ。


 それでもいい。このネックレスのように消えない確かなものが、思い出があればみんなは側にいるから。

 だからこそボクはこれからもこの物語を、思い出を紡いで進んでいく。


 この果てしなく壮大な物語を……いつまでも……

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