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188話 謝ることで進む未来


【椎葉視点】


「あっ、寧々ちゃんやっほー!」


 美咲さんからの身体検査が終わり自室に入る際に、ちょうどどこかから帰ってきた寧々ちゃんと鉢合わせる。

 

「こんばんは椎葉さん。その……最近体調は大丈夫でしょうか?」

「うん大丈夫だよ! 遊生に寄生された後遺症とかも残ってないし」


 遊生に寄生されて無理やり体を弄られてとてつもない負担がかかった。それに生人くんに爆弾を取り除かれた際も緊急事態だったこともあって脊髄が変な風になっているかもしれない。

 だがそんな心配は杞憂で、この一ヶ月ずっと美咲さんの協力の元身体検査を受けたが特に異常は見られなかった。


「それで……一つお姉さんのお願いを聞いてくれるかな?」

「はい……それでそのお願いというのは?」

「ちょっと生人くんに聞かれたくないからアタシの部屋で伝えてもいいかな?」


 寧々ちゃんは快く了承してくれてアタシの部屋に入ってくれて、行儀良く座布団の上に座る。


「それでお願いというのは何でしょうか?」

「いや〜実は生人くんに改めて謝りたくて」


 アタシは今まで彼に対しては酷いことをしてきた。あの海で初めて出会った時から騙すこと前提で近づき、それからも遊生に命令されるがまま彼に質問攻めして情報を得ていた。

 彼はアタシのことを大切な友達だと思い、アタシ自身もそう思っていたのにそれでも我が身可愛さで騙し続けてきた。


「毎回会う度謝ろうとしてるんだけど、あの明るい笑顔を向けられるとどうしても暗い話は切り出しにくくて……」


 子供のように純粋で、アタシみたいに着飾っているわけではないあの笑顔。それはアタシにとっては眩しすぎるものだ。


「実はわたくしも一つ生人さんに謝りたいことがあるんです」

「えっ……寧々ちゃんも?」


 正直驚きだ。寧々ちゃんは正式に付き合うことになってからいつも生人くんにベッタリで、謝る時間ならいくらでもあったから。


「生人さんがいながら生きることを諦めてサタンに取り込まれてしまった件です」

「あぁあの時の……」

「わたくしも椎葉さんと同じで中々言い出せなくて、だから今度一緒に謝りにいきませんか?」

「ふふっ……そうだね!」


 なんだ。寧々ちゃんも生人くんみたいな……良い顔してるじゃん。


「お互い助け合っていきましょう。仲間なんですから」

「そうだね……よろしくね。寧々ちゃん!」



☆☆☆


【キュリア視点】


「はぁ……なんって言えばいいんだ?」


 川沿いの道を生人と歩く中。不安に苛まれてつい愚痴が溢れてしまう。

 

「別に素直に思ってることを言えばいいと思うよ。少なくとも今のキュリアならできるはずだよ」

「そうかなぁ……なぁ婆ちゃん家に着く前に一つ聞いてもいいか?」

 

 散歩日和で通行人とすれ違いながら、オレは一ヶ月前のいつもとは違う形相だった生人のあの顔を思い返す。


「別に責めるわけじゃねぇんだけどさ、何であの時あんな必死にオレのこと殴ったんだ? 明らかにいつものお前とは雰囲気が違ったし、どうしても気になるんだよ」

「そのことか……もちろんちゃんと理由があるよ」


 生人は昔を懐かしむように遠くを見つめ、若干辛そうにして話を続ける。


「ボクもね、昔はキュリアみたいに命の価値が分からなかったんだ。だから人の命をどうとも思わなかったし、自殺だってしようとした」


 生人が自殺……?


 今のこいつからは考えられないその行動。だがしかし嘘など言っておらず本気の口調だということはオレでも分かる。

 

「でも、死にそうになって助けられて、そのおかげで命の大切さが知れた。ヒーローに憧れるようになったんだ。

 だから同じような目に遭えばお前も考え直してくれると思って。ごめん。こんな強引な手段しか取れなくて」

「いやいいよ。あの時のオレはそれくらいしないと分からなかったしな」


 今なら分かる。今までのオレの身勝手な考えや行動の愚かさを。無慈悲さを。

 

「なぁ……どうしたらヒーローになれるのかな?」

「それはボクにも分からない。でもこのままみんなのために戦っていれば、きっとヒーローになれるよ! 

 まぁでもそのためにはまずちゃんと人に謝るくらいはできないとね!」

「そうだな……!!」


 また生人のおかげで勇気が貰える。オレもヒーローになれる。

 まだそれがなんなのかはよく分かっていないが、オレの寿命はまだまだある。だからこれからも生人達仲間と一緒に知っていけばいい。

 

 憧れのヒーローの隣でそう思えるのだった。

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