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187話 各々が得た未来


【寧々視点】


「久しぶりお姉ちゃん。最近ちょっと忙しくて……」

「知っているわよ。中々大変だったみたいね」


 あの戦いから一ヶ月後。あれからわたくし達はありえないほどの対処に追われ、わたくしもここに来るのに一ヶ月以上間隔が空いてしまった。


「でも前よりずっと良い顔になってるわ」

「ありがとう。それでちょっと暗い話になるんだけど、わたくし涼風さんの妹さんを殺したことを警察に自首したの」


 事件が落ち着いてから、わたくしは警察に自首した。あの事件のことを事細かに話し罰を甘んじて受け入れようと思った。


「でも証拠不十分で妄言として受け止められたの」

「でしょうね。あの女なら証拠は残さないでしょうし、まぁ本人が自分が犯人と言っただけで逮捕はできないでしょうしね」


 正直なところ生人さんと離れ離れにならなくて良かったと思ってしまった自分が悔しい。人の人生を奪っておきながら彼と一緒に幸せな日々を送れるこの人生に疑問を抱いてしまう。

 だからこそある決断をした。


「わたくしはこの罪と向き合って、償いきれないでしょうが犯した罪以上に多くの人を救ってみせます。生人さんと共に」

「そう……それが良いと思うわ。今あなたにできる最善の選択肢はそれね。

 本当……たくましくなったわね。昔は私がいなきゃ夜トイレにも行けなかったのに」

「なっ……!! それ何歳の時の話ですか!!」


 わたくしは年甲斐もなく頬を膨らませて触れられないお姉ちゃんに顔を近づける。


「寧々……私は"向こう"でもあなたのことを見守っているわ。だから胸を張って、生人さんと一緒に幸せな一生を送りなさいね」

「うん……ありがとお姉ちゃん!」



☆☆☆



【田所視点】



「ねぇ〜風斗ちゃん。書かなきゃいけない書類ってあとどれくらいある感じ?」

「まだ半分もいってませんよ」


 やっとこの前の事件の後処理が終わり、世間への発表もある程度済んだというのに自分は何日もかけて始末書を書かされている。

 一度逃げようとしたため今は風斗ちゃんの監視付きだ。


「はぁ……俺も手伝いますよ」

「おっ、珍しいね風斗ちゃん〜」

「俺は今日これから暇ですからね。でも一つだけ約束してください。もう勝手に一人で無鉄砲に突っ走るのは、特に自分を犠牲に、悪役にして後輩を守ろうだなんて絶対に考えないでくださいよ」


 本当……たった一年と少ししか経ってないのに、後輩は成長したな……見抜かれちゃってたか。


「何のことかさっぱり。まぁでも寂しがり屋の風斗ちゃんが寂しがったら悲しいしそうすることにするよ〜」

「はぁ……でも正直俺はあなたとまたこうして始末書書く日々が……」


 その時DOの部屋の一室の扉が開け放たれそこから美咲が飛び出してくる。


「おい真太郎君! ここの冷凍庫弱くないかい!? 私のアイスが半分溶けてしまっているじゃないか!?」


 こちらの空気をぶち壊し一方的に自分の意見を主張する。こっちも相変わらずといった感じで、一ヶ月ずぅーっとこの調子だ。


「美咲さん……? あなたはあなたで特別扱いで監視処分になっていることを忘れないでくださいよ? 本来こうやってアイスを食べれてる時点で優遇されてるんですからね!?」


 文句を言う彼女の口にカップ型バニラアイスをねじ込む。


「ふぉ、ふぉっと! ふぁにしゅる……」


 彼女はアイスを溢さないように顔を上に向け、食べながらもごもごと口を動かす。

 このように俺の苦労や仕事は増えていくばかり。みんなと過ごす日々は、切り捨てず守った末に得た未来はこれからも続いていくのだろう。

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