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186話 最強無双


「キュリア……」


 彼はボクの元に降りてきて、場は微妙な空気に包まれる。そんな中でも構わずボクと面と向かって話し始める。


「あの時……オレ分かったんだ。殺される怖さが、自分の弱さが。生人が言うことも少しは分かった気がするし、婆ちゃんが死ぬって改めて思ったら……何だか胸騒ぎが収まらない」


 彼はボロボロの自分の服を強く握りしめる。彼なりに悩んだ末にこの答えを導き出してくれたのだろう。


「でもまだ分からないんだ。生人やこいつらに……智成が考えることが。そんなまま終わるのはなんだか嫌なんだ。

 なぁ……オレもヒーローになれば分かるのか?」

「あぁ……きっと分かるさ。だからなろうよ。ヒーローに」


 彼の暗い光を含み恐怖に染まった瞳が段々と明るくなっていく。勇気が込められていく。


「さぁ……ここからは……ボク達タッグヒーローの出番だ!! キュリア!! ボクの体に入って!!」

「あぁ……!!」


 ボクは変身を解除して、キュリアを自分の体に寄生させる。元々は一つだった者同士のせいか違和感なく入り込み、同時に体が共鳴して信じられないほど力が溢れ出す。


「させるか!!」


 智成さんが時間停止ボタンに手を伸ばし止めようとするが、それを四人は見逃さない。


「さぁ生人ちゃん! 後は頼んだよ!」

「はい! いくよ……キュリア!」


 あぁ! ヒーローとして、やってやろうぜ!


 彼の声がボクの胸の中で反響する。ボク達タッグヒーローはお互いに力を合わせ、今度こそあの力を制御するべくランストを再装備する。


「変身!」


[armed……最強無双 レベル最強!!]


 虹色の鎧の上に更に黄金の鎧とローブが被さる。

 神々しく永遠に光り輝く、最強のヒーローが今ここに舞い降りる。


「その力……ワタシの神の力とどちらが上か、どちらが正しいか答え合わせをしようじゃないか!」


 智成さんは時間を停止させ、四人を一発ずつ攻撃し跳ね除けてボクの元まで向かってくる。


「遅いよ」


 彼の鎧は特殊能力を考慮しなくても、今まで類を見ない基礎能力を持ったものだ。しかし今のボク達にとってはそれも止まっている同然の速度。

 彼がこちらに向かってくるよりも先に拳が彼の顔に命中し、その際にボクがボタンを押して時間を再始動させる。

 そしてみんながそのことを知覚するよりも、智成さんが反撃を行うよりも速くみんなを離れた場所まで避難させる。


「成功したみたいですね生人さん……それにキュリアさん!」

「君に言うのも癪だが、頼んだぞキュリア君! 生人君をサポートしてくれ!」


 言われなくてもそんなこと……あっ、今は喋れないのか。


「キュリアも分かってるって。準備はいい?」


 あぁ……いくぞ!!


 疾風を超え、神速の速さには彼もボタンを押すことも、ガードや受けも反撃もできず次々に体を傷つけていく。


「ふ、ふふふ……これがキミ達の力か。面白い……!! ならこれで最後にしよう!!」


[必殺 パラダイスロスト]

[必殺 ライバルストーレン!]


 ボク達は跳び上がり、虹の光を纏って彼の空間を歪ませるオーラを纏った回し蹴りに向かって足を向けて突っ込む。

 互いの必殺技がぶつかり合い、辺りに衝撃が飛び交う。


「はぁぁぁ!!!」


 最後の最後でこちらが打ち勝ち、ボクの蹴りは智成さんの胴体を貫く。


「ワタシの負けか……」


 智成さんは変身が解かれ、体には多量のヒビが入り、もう一部は粉塵となり風に攫われていっている。


「甘んじてこの結果を受けいるさ……ただ、これだけは約束してくれ。ワタシの楽園を否定するくらいなら、それに相応しい世界を作ってくれ」

「約束します……何があっても、この世界をより良い平和な世界にしてみせます」

「そうか……まぁ……こういう終わり方も……」


 途端ひとしきり強い風が吹く。それに彼の体は持ってかれ、この街、この世界に彼の体がバラバラになり流されていく。


「智成さん……」


 平和を祈った一人の人間が、塵となり世界に混ざり消えていく。

 飛んで行った向こうの空にはどこまでも青空が広がっている。明るく、晴れた未来が広がっている。

 ボク達の物語はまだ続いていく。

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