183話 譲れない、許せない
「ここに居たのか!」
鎧を解除し虫の姿で飛び回る中、そう遠くへは行ってなかったおかげで三分程でキュリアを見つけられる。
誰も居なくなった道路の真ん中で寝そべっている。
「ちっ……生人か」
彼は舌打ちをし悪態を取る。怪我はもう大体治っており、これならボクに力を貸せるだろう。
「一つ頼みがある。智成さんを倒す方法が見つかったんだ。でもボクだけじゃその力をコントロールできない。だから力を貸してくれ。
お前がボクに寄生して、二人がかりで力を制御したい」
「イヤだね」
考える間もなく提案を蹴られボクはこの緊急事態に取られた態度に怒りを覚えるが、今は争っている場合ではない。
ボクはその感情を胸の奥にしまって、一回深呼吸してまた再び話し出す。
「頼む。もし今あいつを倒せなかったら世界中の人達がサタンになって殺されてしまうんだ! だからボクに力を貸してくれ!」
「うるせぇ!! お前らの事情や世界の事情なんて知ったことか!! 勝手に死んどけよ!!」
「はぁ……?」
キュリアの言動に我慢がいかずつい口から怒りの声が漏れてしまう。
「お前……その言葉の意味をちゃんと理解して言ってるのか!? 世界中の人達の命が……大切なものが奪われるんだぞ!?
それを平気で見捨てようとするな!!」
「あぁ!? だからこの前もそうだけど何言ってるかわかんねぇって言ってんだろ!!」
「キュリア……!!」
彼を見てると言葉にできない怒りが湧いてきて、ボクはもう自分を制止することができず胸倉を乱暴に掴み上げ立ち上がらせる。
「んだよ……離せっ!」
キュリアはボクの顔面に拳を放ってくるが、ボクはそれを真正面から避けも受け流しもせずに受ける。受けてなお微動だにしない。
「ふんっ!!」
反撃としてボクはキュリアの顔面に全力で頭突きする。一回後ろに下げてから当てたその本気の一撃は彼を大きく仰け反らせる。
彼は鼻から血を噴き出し眉間付近が赤く腫れる。
「何すん……」
喋るその口を閉ざさせるように彼の顔面を更に一発殴りつける。それにより彼はボクの手からすり抜け地面に転がる。
「お前……もしそうなったらあのお婆さんも死ぬんだぞ!?」
こいつを世話していたお婆さん。キュリアはあの人に対してだけは言うことを素直に聞いていたし感謝もしていた。
そのことについて言及すれば説得できるかもしれない。
「それがなんだ!? 婆ちゃんはお前のやりたいようにやれって、人生を楽しめって言っていた! なら死んでも文句ないだろ!」
「お前……それ本気で言っているのか?」
命の大切さを全く理解していない。自分以外のことなどどうでもよく自分本位に振舞う。
この姿や言動にボクは見覚えがあった。
あぁ……そういうことか。やっと分かった。
ボクがこいつに拘る理由……そういうことだったのか。
このいつも以上の怒りの理由がやっと理解できた。そしてその理解から一つの結論に辿り着く。これ以外方法がないことも瞬時に分かってしまう。
「生人……お前やる気なのか?」
ボクがランストを取り出し装備した途端キュリアの声が震え出す。数歩引き下がりいつもの好戦的な態度ではない。
「どうした……いつもみたいに構えろよ。怖いのか?」
「ふざけんな……もうお前には負けない。オレは……負けないんだ!!」
彼もダイアを取り出し装備する。
「……変身」
「変身っ!!」
[complete……レベル 80 armed……ホッパー レベル100]
[complete…… フォースエレメンツ レベル100]
ボクはバッタの最強鎧を身に纏い、ゆっくりと、明確な殺意を持ってキュリアに歩み寄る。
「キュリア……お前を……殺す……!!」