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161話 見抜けない演技


「ナイッスタイミング!! 打ち合わせ通り完璧だったな! それにしても流石はアイドル演技上手いねぇ〜!!」


 ティオが軽快な口調で喋りながら立ち上がる。傷こそあるものの動くには支障がないようで、よく見ると椎葉さんが膝を入れた場所には強い力をかけられた痕跡がない。


「椎葉……さん?」


 返答はない。容赦のない攻撃によりお腹に風穴が開き、死ぬことはないが想像を絶する苦痛に再生するまでまともに立てないだろう。


「生人!?」

「油断したなキュリアちゃん!!」


 流石にこの状況ではキュリアも動揺し、その隙を突かれて顔面に一発もらってしまい田所さんを逃してしまう。


「うへ〜こりゃまたひっどい傷だね〜」


 タイヤを回転させてこちらに止まり、追いかけてきたキュリアの足にスナイパーによる一発で貫く。


「うぐっ……!!」


 キュリアも体を貫かれ、しかも足なのでこちらに駆けつけることができなくなる。遠距離攻撃をしようにもボクごと巻き込むのでそれもしない。

 

「はいこれ……これでいいんでしょ?」


 椎葉さんはティオにボクから奪い取った装置を雑に投げ渡す。


「態度が気に入らないが、まぁ上手く働いてくれたからよしとするか。いやー危ない危ない。これがあったら今のオレでも流石に勝てないからな」


 ティオはその装置の形手触りを確かめじっくり観察する。

 

「オレの計画の一部の機能を使っている……? 悪党同士考えることは一緒ってところか」


 何やらぶつぶつ呟くが、思考を一旦停止させてボクの方に来て髪の毛を掴み頭を持ち上げる。


「今のお前は人を信じすぎなんだよ。前までのお前だったらオレの正体だってすぐに気づいただろうし、椎葉の演技も見抜けてただろうな」


 ボクは放り投げられガードレールに頭を強打する。頭部と腹部から血が止めどなく流れ続け坂を下り川に染み込んでいく。


「あっ、キュリアちゃんは動かないでね」


 キュリアは足がある程度治り動こうするが、それを歴戦の猛者である田所さんが見逃してくれるはずもなく、今度は二発右肩と左足にもらってしまう。

 

「じゃあな生人。お前の父親を演じるのも中々楽しかったぜ」


 十分の一も再生が進んでいないというのに奴は無慈悲にもこちらに歩み寄ってくる。


「えっ……ここで殺すの?」


 田所さんがキュリアから射線を外さずに、すっとぼけた声を出す。


「そうだが……何か問題でもあるのか?」

「いや例の計画が進むのを見せてから殺した方が面白くない?」


 ティオを止める田所さんに、彼の口から述べられる例の計画。知らない単語が出てきてどういうことか分からないが今はこれを好機と見て全身から力を抜いて傷の再生に全神経を使う。


「ん? 再生してきたな……そろそろもう一発」


[必殺 斬突打乱舞]

[必殺 ホーリーカット]

[必殺 デスパイアエンド]


 その時少し離れた所から三つの機械音声が聞こえてくる。

 ミサイルや銃弾がメチャクチャに飛ばされてきて、三人を巻き込みそこに数多の武器が飛ばされてきて追い打ちをかける。


[スキルカード 疾風]


 キュリアが疾風を使いボクを掴み上げて爆風などに当てられないよう避難させてくれる。

 そして爆風を突っ切って美咲さんと風斗さんが飛び出してくる。氷柱と光の剣が田所さんの胸を襲い、その攻撃の激しさから大きく後退させられる。


「痛てて……先輩に随分なことしてくれるじゃん?」

「田所先輩……それに愛……何があったのか分からない。でも、生人を傷つけるなら容赦しないぞ」


 傷つけるためではなく守るために、半年前ボクに向けた剣をティオ達に向ける。

 

「へぇ……良い顔になったねぇ。じゃあ自分らも……」

「ダメだ退くぞ。オレ達の今の体力じゃ倒すまでに生人とキュリアが再生する」

「ちっ……」


[スキルカード ブースト]


 マシンガンモードでこちらに無造作に撃ちまくり、その隙にカードを挿入する。そこから撃ちながら加速して二人を回収してどこかへ走り去っていく。


「待てっ!!」


 峰山さんと風斗さんが追いかけるが、ブーストした田所さんには追いつけず逃げられてしまう。

 結局この戦いでボク達は何も戦果を上げられず、挙句の果てには美咲さんが作ってくれた装置を奪われてしまうという結果に終わってしまうのだった。

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