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160話 自己中のアイドル


「あらら逃げられちゃった。いいの遊生?」

「別に今回は美咲に用はないからいい。それにあの一般人の女性も特に興味ないから放っておけ」


 相変わらずというべきか、こいつは興味がない人物に関してはとことん無関心だ。今回はそのおかげでお婆さんの安全が確保されたのだからありがたい。


[スキルカード マジック]

[スキルカード スパイダートラップ]


 二人がスキルカードを使用して各々能力を行使する。

 

 椎葉さんは三人になりボクに襲いかかり、間にティオの攻撃も挟まるため対処に追われ説得なんてできそうにない。

 田所さんは手から蜘蛛の巣を出しあちらこちらに張る。キュリアは最初こそ上手く避けていたものの、あっという間に巣に囲まれてしまいそれに足を取られてしまう。


[必殺 リフレクトストライク]


 彼は更に巣を宙に浮かせ、それをトランポリンのように扱い立体的に動きながらキュリアに数多もの銃弾を浴びせる。

 槍で防ごうにも足が動かせないので上手く体を捻れない。それに虫の姿になって逃げようにも一旦鎧を解除する必要があるのでそれもできない。


「今回は自分の勝ちだ!!」


 勝ち誇った宣言と共に、一点に集まった光弾を上空から蹴り落としてキュリアの全身が爆風に包まれる。

 

「キュリア!!」

「おいおい他人の心配してる場合か?」


 拳と腕が作り上げる赤い閃光の帯がボクの顔面に命中する。


[summon…… ホッパー レベル80]


 仰け反るのと同時にカードをセットしてバッタ鎧を召喚して二人の足止めを頼む。

 召喚は長時間保たないがキュリアを助けるまでの時間稼ぎには十分だろう。


[スキルカード ヒート]


 体を灼熱に焦がしトドメを刺そうとする田所さんの腕を掴み上げる。

 キュリアは変身解除はしてないものの鎧もボロボロで満身創痍だ。寄生虫の力を持ってしても再生に時間がかかるだろう。


「おいおい随分と熱烈なアピールだねぇ……おじさんに会えるのがそんなに嬉しかったのかな……?」

「もしも田所さんと椎葉さんが敵になるとしたら……何か事情があって悪に堕ちたのだとしたら……ボクはそこから二人を助ける!! それがボクの答えだ!!」


[armed……ドラゴン レベル100]


 鎧を切り替え十の力が籠った鎧に龍の刺青と鱗が入る。

 

[必殺 ドラゴンドライブ]


 数歩力強く踏み込み、そこから青色の龍の炎を全身に纏って彼を蹴り上げて、そこに追い打ちをかけるよう何度も炎を纏った体を押し付ける。

 長い龍の形を描いたボクの炎が彼を包み込む。しかし焼き尽くす前に蹴り飛ばし死傷だけは避けさせる。


「ぐっ……」


[combine…… ウィンドファイター]


 蜘蛛の糸を真後ろに飛ばして逃げようとするが、怪我がある程度治ったキュリアがすぐにその糸を風の刃で切り落とし田所さんを押し倒す。


「そのまま抑えてて! 殺したらダメだよ!」

「分かった!」


 キュリアに田所さんを任せ、バッタ鎧が消えてこちらに向かってくる二人に対処する。


「かかってこい……ヒーローとして二人を助けて、ティオ……お前はボクが倒す!!」


[summon……サムライ レベル80 ウルフ レベル80]


 武者鎧の狼鎧の二人。そしてボクの三人でティオと椎葉さんを圧倒する。

 流石のティオもレベル80の二人相手は厳しいようで、接近戦は侍の刀で封じ込められ、速度を出そうにも狼に追いつかれる。


「痛いと思うけど……ちょっと我慢してね」


 ティオが二人に翻弄されている間にボクは拳を固めて、椎葉さんのお腹のど真ん中にシンプルに正拳突きを真っ直ぐ放つ。

 鎧を凹ませるほどのその一撃をもらい、椎葉さんは鈍く低い声色で呻めきその場に伏してお腹を抱える。変身は解除されて口から血が溢れ出る。

 

[必殺 トリプルバースト]


 必殺カードを挿入して両挿入口を押し込む。ボクが宙に飛び上がるのと同時に武者がその刀でティオを激しく斬り裂き、狼の爪が高速で襲いかかる。

 その間に空中で全身に龍を纏い、飛びながら何度も奴にぶつかりにいく。傷口に炎が染み込み、最後は爆風により鎧も弾け飛び奴は血塗れでボロボロとなる。


「その鎧……反則だろ」


 寄生虫の体力を持ってしても限界が来たようで、その場に膝を突き呼吸を激しくさせる。


「これがボク達の力だ。お前はここで倒してそれから……」


 先程までうずくまっていた椎葉さんがボクの横を高速で駆け抜けてティオの元まで走る。

 そして間髪入れずにその腹に膝をめり込ませ奴に白目を剥かせる。


「椎葉さん……?」

「ごめんね生人君。裏切っちゃって」


 体を震わせ息も絶え絶え。それでも彼女はこちらに深く頭を下げる。

 

「やっぱり椎葉さん脅されてたの?」

「うん……実はアタシの体の中には、脊髄の中に爆弾が入っているの。それの起爆装置はこいつの脳波で、それでアタシは脅されてこんなやりたくもないことを……」


 彼女の瞳から数的の水が溢れ堕ちアスファルトの地面を濡らす。

 納得がいった。つまりは風斗さんの妹の死体を利用して生み出された彼女は、人間として同等の心を持っていながらも体内に埋め込まれた爆弾により命を握られて脅迫されていたということだろう。


「やっぱりこいつは生かしておいちゃダメだ。ここで……」

「それはダメ! こいつが死んでもアタシの中にある爆弾は起爆するの!」

「何だって!? くっ……!!」


 振り上げかけた拳を下げ強く握り締める。相変わらずこいつは抜け目なく邪悪な奴だ。


「なら美咲さんに頼んで常に気絶させるように……冷凍装置で封印しておこう。それで手術で爆弾を取り出せば……」

「うんそうだね……うっ!!」


 椎葉さんは顔色を悪くさせて尻餅をついてしまう。先程までの戦いで、というよりあの最後の一発が想像以上に効いたのだろう。

 

「椎葉さん!? ご、ごめん。強く殴りすぎちゃったみたい。肩貸すよ」


 無警戒に彼女に寄り添い肩を貸す。そして一旦この場はキュリアに任せて美咲さんを探そうとするが、それは叶わない。


 ガチャリと何かが外れる音が腹部の、ベルトの方で鳴る。

 変身が解かれ慌ててランストを確認したところ美咲さんからもらったあの装置がない。いや、あるにはあるのだ。椎葉さんの手元に。


「ごめんなさい……ごめんなさい……アタシは死にたくない……アイドルにならなきゃいけないの……!!」


 何かを我慢するように強く噛み締めて、涙を漏らしぐちゃぐちゃの顔をこちらに向ける。

 そして次に状況が理解できないボクに襲いかかるのは残酷な攻撃だ。彼女の加速し槍と化した腕がお腹に深々と突き刺さる。

 その手は貫通して背中から飛び出た後に引き抜かれる。

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