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158話 ボクとオレ


 木彫りの熊に使い古された謎の模様が入ったカーペット。

 軋む床の上を歩き居間に通される。


「あっ婆ちゃん! おかえ……」


 居間で座布団に座りくつろいでいたキュリアはお婆さんの顔を見るなり明るい笑顔と共に立ち上がるが、ボク達の顔を見ることで絶句してその明るさは消え失せる。


「何の用?」


 いつもならちょうどいいから戦おうとか言い出すところだが、予想に反して彼は変身する素振りすら見せない。

 不機嫌そうに口角を下げてこちらを睨みつける。


「お婆さん。私達は少し混み合った話がしたい。少し席を外してもらえないだろうか?」

「え……? 分かりましたけど、キュリィ? 喧嘩しちゃだめだよ」


 年の功か、事情を知らなくてもキュリアの態度を察して一言入れておく。


「分かってるよ。婆ちゃんは何も心配しないでいいから」


 お婆さんは不安がまだあるようだったが、それ以上は何も言わずに扉を閉めて二階へと上がっていく。

 美咲さんは机を挟んでキュリアの向かいにある座布団に座る。


「まぁこの前は災難だったみたいだね。君ともあろう者が塔子に負けて敗走するなんて」

「喧嘩を売ってるなら買ってやるぜ? お前くらいなら苦戦すらもしない。表に出て……」


 会って早々一触即発しそうな空気だったが、美咲さんが手を広げて前に突き出しその流れを一旦止める。


「別に私達は君と戦いたいわけではない。寧ろその逆……君と協力したいんだ。

 ムカつくと思わないのかい? 生人君との楽しい時間を邪魔したあいつらが」

「ムカつくにはムカつくけど……塔子はオレが倒す。お前らに手伝ってもらう必要は……」

「敵は塔子だけではない。彼女よりも強い存在が最低でも三人はいる」


 彼は机に置いてあった煎餅に手を伸ばして力強く噛み砕き食べ始める。


「まだオレより強ぇ奴がいるのかよ」


 嬉しさ半分苛立たしさ半分といった様子で口に含んだ煎餅を一気に飲み込む。


「お前も食うか?」


 キュリアはもう二枚煎餅を取ってその内の一枚をボクに手渡してくれる。


「うんもらうよ」


 その煎餅は味が甘めでボク好みの風味だ。そのままボク達は煎餅を食べながら美咲さんの話に耳を傾ける。


「私達に協力してくれるなら君の邪魔をする奴らを倒して、そしてその後生人君とも殺さない範囲内なら邪魔されず戦える場を用意しよう。

 生人君はそれでいいかい?」

「周りに迷惑かけないなら別にいいですけど……」


 無闇にランストを使って戦うのは気が引けるが、ここは訓練の一環だと思うことにする。


「君にとっても悪い提案じゃないと思うのだが……どうかな?」

「オレのダイアの強化もしてくれ。生人みたいに」


 この前の戦いをどこかで見ていたのかそれとも動画などで知ったのか、キュリアはボクのあの虹色の形態について知っているようだ。

 それを踏まえてボクと同等の強化を望んだ。気に入らないであろう美咲さん相手に。


「できる限り善処はしよう。恐らく三属性を混ぜるくらいのことはできるようになるはずだ」

「なら協力する。で、結局のところ敵はだ……」


 二階から聞こえてくるガラスを割る音と家に伝わる衝撃音のせいでボクとキュリアは煎餅を落として割ってしまう。


「なんだいあんたらは!?」


 二階から聞こえるお婆さんの悲鳴。ボクとキュリアはすぐに二階へ駆け上がる。

 お婆さんは仏壇が置かれている部屋におり、窓を突き破って巨大な二足歩行のカラスのサタンが入り込んでいた。

 奴はその鋭い嘴をお婆さんに向けようとするが……


「何してんだぁ!!」


 キュリアが放つ跳び蹴りにより窓の方へ飛ばされて入ってきたところから外に投げ出される。


「待て!!」


 キュリアは窓から降りて飛び立とうとする奴の背中の上に着地する。

 背中に大きな風穴ができ奴は絶命する。


「カー! カー!」


 ボクも窓から降りて上を見上げれば何十体も同じカラスのサタンが飛び回っており、こちらに攻撃する機会を窺っている。


「生人君! お婆さんの安全は確保できた! 手当てをするからそっちは任せてもいいかい!?」


 遅れて来た美咲さんが窓から頭だけを出す。


「うんお願い! こっちは二人でなんとかするよ!」

「分かった! 遊生達が近くにいるかもしれないからくれぐれも気をつけてくれ!」


 彼女は頭を引っ込めて手当てを行いにいく。

 ボク達の方も奴らを警戒しつつそれぞれ変身装置を取り出す。


[complete…… レベル80]

[combine…… ウィンドランス レベル50]


 ボクは虹色の最強の鎧を、キュリアは風を纏った槍を取り出せる鎧を身につける。


「その力……すぐに追いついてやるからな!」

「まぁ人の迷惑にかけない範囲ならいくらでも戦うから、いくらでも受けて立つよ」


 ギラギラとした野心溢れる瞳をこちらに向けてくるので、それをなるべく無碍にしないよう返してボクは空を見上げる。


「じゃあ協力プレイといこうか!」


[summon……ドラゴン レベル80]


 ボクはアーマーカードを一枚取り出し、龍鎧の者を呼び出す。

 

[必殺 ドラゴンラエダー]


「ほら一緒に乗るぞ!」

「あぁ……面白くなってきた!!」


 ボクは変形する龍も見て胸を高ならせているキュリアの手を引っ張り乗せて、サタンの大群へと三人で突っ込んでいくのだった。

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