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157話 民家にて


「研究は大成功だ! 見たかいつも偉そうにして私を騙してた馬鹿がぁ!! はっはっはっ!!」


 隠れ家まで戻るとそこには子供のように喜び暴れ回る美咲さんが居た。

 資料が散乱しており、先程の女の子とは似ても似付かぬなんとも言えない笑顔をしている。


「あの……戻ったよ?」


 あまり話しかけたくはなかったが、このまま情報共有せずいるわけにもいかないので嫌々ながらも話しかけにいく。


「おーお帰りっ!! さぁその装置をよく見せてくれ!!」


 美咲さんはボクから奪い取る形で着けていたランストを回収する。それからそれと睨めっこしながらぶつぶつと専門用語を呟きながら研究に没頭する。

 こうなってしまってはこちらの話なんて聞かないだろう。でも一日もすれば元に戻ってることが多いのでボクは諦めてベッドに寝っ転がる。


 とりあえずはサタンも塔子もなんとかなったし、きっと今のボクならティオにも勝てる……でも、田所さんも椎葉さんは……


 二人相手には力で勝てばいいという話ではない。たとえ倒せたとしてもそれは根本的な問題解決にはならない。

 

 あの時田所さんは鎧の仮面の下ではどのような表情をしていたのだろうか? ボクの背中を攻撃した時椎葉さんはどのような感情だったのだろうか?

 次に会う時はお互い殺し合うことを覚悟していなければならない。

 迷いが生まれてしまったら他の誰かが死んでしまうかもしれないのだから。


 毛布を頭の深くまで被る。美咲さんがいつも使っている香水やシャンプーの匂いが寝具から漂う。

 その嗅ぎ覚えのある匂いについ眠気に誘われてしまい、それには抗えず美咲さんのタイピング音を睡眠導入剤にして意識を落とすのだった。



☆☆☆



「生人君起きるんだ! 外に出るぞ!」


 毛布を取り上げられてボクの意識は強引に現世へと引き戻される。


「ん〜後少し……五分だけぇ……」

「寝惚けている場合じゃない! キュリア君が見つかったんだ!」

「えっ!? キュリアが!?」


 その一言で完全に意識は目覚め、ボクは美咲さんの持っていたタブレットの映像を見せてもらう。

 それは監視カメラをハッキングしたもので、それには一般の民家にキュリアが出入りしている様子が映っている。

 玄関の前で虫の姿から人の姿に戻ってあたかもそこに住んでいるような立ち振る舞いをしている。


「いくらキュリア君でも遊生達に囲まれてしまっては殺されてしまうだろう。

 私を裏切ったことは正直気に入らないが、今の状況なら利害の一致で味方になってくれるかもしれない。今すぐ向かおう」

「まぁあいつは自分勝手なところはあるけど積極的に誰かを傷つけたりはしないからね。それに力になってくれたら心強いし行こう」


 ボク達は周りの人にバレないよう変装してからここを出て監視カメラに映った奴が出入りしている民家まで向かう。

 この街を流れる川の通りにある家で、隠れ家から歩いて数十分もすればその家の近くにまで来れる。


「そういえば世間からの生人君からの見解だけど、多少はマシになっているみたいだね」

「えっ、そうなの? 峰山さん達が何かしてくれたのかな?」


 今別行動している彼女らが動いてくれているのかと思ったがどうやらそうではないらしい。

 

「ほらこれだよ」


 美咲さんが見せてくれるスマホの画面には数時間前の塔子との戦いの後のボクの姿が映し出されている。

 田所さんの話にボクに感謝する親子の姿。どうやらその時野次馬の誰かが撮影していたようだ。


 その動画の投稿者はボクが実は悪人ではなく他に誰かが悪がいるのではないかと述べている。

 その動画のコメント欄もボクへの批判は少なく、ボクを悪と見做す風潮に疑問を感じる声の方が多い。


「まぁ君の努力が実ったって言ったところかな?」

「そうだね。頑張っていればいつかみんな分かってくれる。苦悩することでもなかったよ。

 ボクはヒーローとしてあり続けるだけだからね。やることは結局何も変わらないよ」


 そうこうしている内にキュリアが出入りしていた民家の前まで着く。

 少し古めだが人が十分住める家で、木造の建築がいい味を出している。


「おや。あたしに何かようですかい?」


 家のチャイムを押そうとした時杖をついて歩くお婆さんに話しかけられる。

 どうやらここの家主のようで、これでキュリアが空き家に住んでいるという線はなくなる。


「えっと、ボク達ここに出入りしている男の人に用があって……」

「あらまぁ! もしかしてキュリィのお友達かい? えぇぜひとも上がっててください。あの子はこの時間は中にいると思いますので」


 キュリィ? キュリアのことを言っているのかな? 


 ボク達は顔を見合わして、意を決してお婆さんの言葉に乗っかって彼の友人を演じる。


「じゃあお言葉に甘えて上がらせてもらいます……」


 困惑しながらも彼に会うべくボク達はお婆さんの家に上がらせてもらうのだった。

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