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153話 諸行無常


「はい生人君口を開けて」

「あぁー……」


 サタンが大量出没した日の夕方。ボクは美咲さんに起こされてから色々と身体検査を受けていた。

 今は口の粘膜を綿棒で採取している。


「ゲホッ……! ゴホッゴホッ!」


 しかしむせ返ってしまいボクは大きく咳き込んでしまう。


「あ、ごめん。大丈夫かい?」

「大……丈夫。ちょっと気道に唾液が入っちゃっただけだから……」


 首元を抑えれば数秒で症状が収まる。それでも美咲さんはこちらを想ってくれて背中を摩ってくれる。

 

「も、もう大丈夫だから!」


 いつまでも手を退かさないので段々恥ずかしくなってきて、ボクは彼女から離れる。

 

「そうだね。もう君は子供じゃないからね。いやー子供の成長は早いなぁ……」

「だからもうボクは子供じゃないから! それと寄生虫時代の歳を加えたらボクの方が年上だから!」

「はは……そうだね」


 美咲さんは楽しそうに笑いながら綿棒を瓶に入れてそれを機械に挿入してまた複雑な操作をし始める。

 

 そうだ……ボクは変わってるんだ。ずっと今のままじゃない……


 美咲さんが何やら実験を行なっている最中。机の上に置いてあったスマホが振動する。


「峰山さんからだ。ボクが代わりに出るよ」


 通話アプリを通して峰山さんと繋がる。

 スマホの向こうからは冷静ながらも暗い声が聞こえてくる。


「非常にまずい事態です」

「何があったの?」

「まず遊生は行方を眩ましていてDOに顔を出していませんでした。田所さんや椎葉さんとも連絡がつかず正直八方塞がりです。

 美咲さんのことを伏せて智成さんにも相談してみましたが、彼も状況を把握しておらず協力はしてくれるものの力になれるかどうか怪しいと言っていました」


 つまりボク達はまた受け身に回ってしまったというわけだ。奴らの情報がない以上、何かアクションが起こってからじゃないとこちらからは動けない。


「それと警察や政府関係者は血眼になって生人さんを探しています。

 今まで寄生虫だということを隠してくれていた一部の人達も遊生によって情報をバラされてしまい今は動けません」


 警察の人達には悪いがボクは捕まるわけにはいかない。もしそうしたらその隙にティオは取り返しのつかないことをするだろう。

 

「こちらはとりあえずDO内部で情報を探ってみます。何か進展があったらこちらから連絡しますのでそちらも何かあれば連絡をお願いします」

「うん……気をつけてね」

「はい。任せてください」


 この前の爆破未遂事件の時から彼女の頼もしさには更に磨きがかかったような気がする。

 レベル50の鎧も手に入れたし向こうは大丈夫だろう。


「ねぇ美咲さん。何かボクにできることはないかな?」


 みんな頑張っている。そう思ったらウジウジしていられず何か自分にできることはないか探す。


「ならキュリア君の動向を探ってくれ。彼なら上手く説得すれば利害関係でこちらに引き込めるかもしれない。

 監視カメラを覗き見たりその他機能は既にプログラムしてある。君ならすぐにでも使いこなせると思うから頼めるかい? 私は今手が離せなくてね」


 美咲さんはずっと資料を見ながら何かを作り出そうと試行錯誤している。

 置いてある機械は数回動かしてはいるものの彼女の納得するものは作れていないらしく、ボクが確認する限りでは彼女は一切休まず活動している。


 美咲さん体大丈夫かな……? でも顔色を見ると結構元気そうだし、一睡もしてないはずなのに……いや、ボクも美咲さんの負担を減らすために頑張らないと!


 ボクは寄生虫の力をフル活用して反射神経と視覚を人間の限界を超えて機能させる。

 コンマ数秒で一時間分の複数の場所の情報を処理してキュリアの行方を捜索する。彼が虫の姿になってから飛んでいった方向から推測していくつもの場所のデータを確かめる。


 それから二日はキュリアやティオ達の情報を探ったり、美咲さんの実験に付き合ったりして過ごす。

 峰山さん達からの連絡はなくこちらからも連絡はしていない。


「設計図によればここをこうすれば……はっ! できた……これで遊生に勝てるぞ!」


 数時間黙って作業していた彼女が声高らかに笑い出し、機械の内部からランストのカードを挿入する部分に類似する物体を取り出す。


「ティオに勝てる……? それは一体どういうものなの?」

「これは……」

 

 その時ボクが見ていた画面に通知が表示される。災害による避難通告だ。

 そこにはまた再び大量のサタンが出没したため近隣住民は避難しろという旨の内容が書かれている。

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