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149話 戦おうぜ!


「美咲さんこれって……!!」


 ボクはタンスから降りて人間の姿に戻る。


「不味いね……もうかなり被害が出ているらしい。今DOは不在だ。このままじゃ……」

「ボク先に行ってくる! 美咲さんはみんなを起こして向かわせて!」

「待つんだ! 今君が行ったら……」


 彼女の言いたいことは分かる。今ボクが行ってもヒーローとしてではなくサタンの大量発生を引き起こした犯人と扱われるだろう。

 だがそんなことは助けを求める人を見殺しにする理由にはならない。

 ボクは彼女の制止を無視してここから飛び出してサタンが出没した場所まで変身して向かう。



☆☆☆



「誰か助けて!!」

「うわぁぁんお母さぁぁん!!」


 サタンが出没した場所は人通りが多い場所で、そこは地獄と化していた。

 人が貫かれ殺されており、巨大な蝙蝠が人を持ち上げて高所から落として地面に叩きつける。

 数多の魑魅魍魎が暴れ回る見たくもない惨状。ボクはこの状況を打開すべく跳び上がる。


[必殺 ヒートファング]


 空中にいる鳥や蝙蝠型のサタンを燃やして蹴落とす。こうすることで逃げられたり被害の拡大を防ぐ。


[スキルカード 疾風]


 次に地上で暴れているサタン達を流れ作業のように次々に倒していく。

 自衛隊や警察の人達はまだ見えない。恐らくまだ他にも大量のサタンがいてそっちの対応に追われているのだろう。


「いやぁぁ! 来ないでぇ!」


 だが一匹倒し漏らしてしまい、蛇のサタンが女性の元に向かってしまう。


「やめろっ!!」


[ブレイドモード]


 すぐにそこまで走り、噛み付く前にその頭を掴み上げて剣で切断する。

 しばらくのたうち回った後絶命しカードを数枚落とす。


「大丈夫で……」

「ひぃ……!!」


 だが彼女から向けられた視線は助けられた者に対するものではない。

 怯えがふんだんに練り込まれたその瞳が見つめるものに映っているのは何だろうか? 少なくともヒーローではないはずだ。


「何で……助けたのに……」


 助けた者からのヒーローであることの否定。

 それは予想以上にボクの心を揺れ動かす。


 しばらくの間辺りで燃え盛っている炎の音だけがこの空間に滞在する。

 女性がこちらを警戒しながら逃げていくも、ボクは追いかけて弁明する気も起きない。


「何のために戦ってるんだっけ……?」


 美咲さんにあんな風に啖呵を切ったが、ボクの中には言葉にできない虚しさが生まれる。


[combine……ウィンドファイター レベル50]


 聞き覚えのある機械音声と共に離れたところから人が走ってきてこちらに拳を放つ。

 風を纏ったそれを紙一重で躱せるが、同時にとてつもない突風が発生しボクは吹き飛ばされ近くの柱に叩きつけられる。


「久しぶりだな生人! パワーアップしたオレの力を見せてやるよ!」


 キュリアが意気揚々とこちらに決闘を申し込んでくる。

 答えなど求めず、そこから奴は一方的にこちらに攻撃を始める。


[ランスモード]


「お前もティオの……遊生の仲間になってたのか……今はお前に構ってる暇はないんだ!!」


 槍で拳をいなしながら、奴を吐き言葉と共に遠くに投げつける。

 こいつは一般人には積極的には危害出そうとはしない。あくまでもボクと戦いたいだけだ。なら適当にあしらって疾風で逃げればよい。


「遊生の仲間? 何言ってるんだ? 何でオレがお前らのところの奴と手を組まないといけないんだよ?」


 しかし奴は今のこの混沌とした状況を一ミリも分かってはいない様子だ。


「お前……今の状況分かっていないのか? というより一月から何してたんだよ?」

「お前に倒された後民家に転がりこんでな。そこで力を蓄えていたんだ。それで今お前を凌ぐほどの力を手に入れた! さぁ戦うぞ!」


 どうやらこの数ヶ月間悪事を働いていたわけではないようだ。修行に没頭していたのだろう。

 

「後で好きなだけ戦ってやるから今はそれより周りのサタンを倒さないと……」

「あ!? お前逃げる気かよ!? そうはさせねぇぞ!!」


 この場を離れて悲鳴が聞こえる方に方向転換するボクの肩を掴んで止めてくる。


「だから後でって言ってるだろ!? 今は人の命が……」

「そんなもん知るかよ!! いいからオレと……」


[必殺 ロベリアタイフーン]


 ボク達の口論に水を差すように、青色の花弁を巻き込み舞わせた竜巻がこちらに突っ込んでくる。

 不意打ちだったため防御もスキルカードも間に合わず、ボク達はそれに吸い込まれ宙に打ち上げられる。

 竜巻により加速した鋼鉄の花弁が体を切り裂き、鎧の至る所に傷がつき竜巻に赤色の絵の具が付け足され皮肉にも美しさに磨きがかかる。


「全く。こんな緊急事態でも争うとは。下民の考えることは理解できないね」


 ボク達は地面に叩きつけられ、攻撃を放った人物を確認する。

 声とあの花弁だけでも分かったがやはりその人物は塔子だった。

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