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148話 悪魔と蔑まれ


「何だよこれ……何でボクのことが!?」

「どうしたんだい?」


 一番近くに居た美咲さんがボクのスマホを覗き込む。


「これは……みんな生人君の配信に上がってる最新の動画を見るんだ!」


 それからボク達は各々スマホなどで動画を視聴する。

 峰山さんは病院からそのまま抜け出して来たのでスマホがなく、ボクと一緒に視聴する。


「DO指揮官の寄元遊生です。今回は皆さんに重大な事実を伝えようと思います」


 画面に出てきたのは黒スーツを着たティオだ。壁を背にしておりそれ以外何もなく謝罪動画のような雰囲気だ。


「それはこのサイトで配信しているラスティーこと寄元生人についてです。私は彼を養子に引き取ってから今まで彼の正体に気づきませんでした。

 彼はヒーローなどではありません。ダンジョンを生み出し、災厄の日を意図的に起こした寄生虫と呼ばれる存在なのです」


 そこからは流れるようにボクのことを嘘を織り交ぜながら暴露していく。

 ボクが寄生虫であり、寄生虫がどんな存在であるか。そして身に覚えがない悪事をまるでボクがやったかのように語る。

 災厄の日の件や最近のサタンの出没。それら全てをボクのせいにさせる。


「おい生人……やばいぞこの動画の再生数。それにSNSで……」


 見てみれば動画の再生数は一時間足らずで百万再生いっており、SNSでは衝撃の声やボクへの誹謗中傷で溢れていた。


『うっわ最低だよこいつ。やっぱヒーローとか語ってるやつってロクなのいないな』

『これマジ? ラスティーのファン辞めます』

『待って。私の家族この前のサタンに殺されたんだけど? こんな悪魔見たことない!』

『生きる価値のないゴミクズ。早く死んでほしい』


「そんな……今すぐ動画を消さないと!」


 止めどなく流れてくる誹謗中傷にボクは焦らされ、動画の削除ボタンに指を伸ばす。


「待つんだ生人君!!」

「えっ……?」


 止められるもののしかしもう遅く、ボクは動画の削除ボタンをタップしてしまい動画を削除する。


「まずい……今消したら余計に話に信憑性を持たせてしまう……」


 そうだ。ここで消したら揉み消そうとしたようにしか見えない。

 美咲さんの言葉通りSNSでは削除されたことがよりこの話に信憑性を持たせてしまい、ボクへの罵詈雑言が更に加速する。

 しかも何人かはあの動画を保存していたらしく、事態はより最悪の方へ進んでいってしまう。


「ごめんなさい……こんなことにするつもりは……」

「いやいいんだ。君のせいじゃない。

 それより不味いことになったな。私だけならともかく生人君までも、いや責任追及で分断されてそこを狙われる可能性を考えたら、実質真太郎君や寧々君もお尋ね者か」


 絶望につぐ絶望。それに加えて今も増え続けるボクへの中傷やヒーローであることを否定する発言。

 胸が苦しい。脳内が一面真っ白になりもう何も考えられない。


「生人さん!!」


 そんなボクを現実に引き戻してくれたのは峰山さんだ。肩を揺すって耳元で大声でボクのことを呼んでくれたおかげで戻ってこれる。


「気を確かに……こんな意見に流されてはだめです」

「そ、そうだよね。ごめん。それより今できることを考えなくちゃ」


 強気に振る舞ったがボクの心の奥底には暗い気持ちが取れずに残る。

 こびり付いたその汚れは全く落ちる気配がなく、それが更に増える未来も容易に想像できてしまう。


「とりあえず人が少ない道を通ってまだ知られていない私の研究所にまで行こう」


 この場に居ては通りがかった人に見つかってしまう。ボク達は近くの木々に入り、近くにあるという研究所まで向かう。 

 そこまでの道で誰かに会うこともなく問題なく辿り着ける。


「しばらく使ってないから埃が溜まってるが、しばらくはここを拠点として使おう。一応最低限の設備はある」


 山の斜面に隠されたそこは綺麗とは断言できないが汚くもない。

 しかし生活に必要なものは最低限揃っている。寝床は……ベッドにソファーに座布団に……ボクは床で寝るか寄生虫の姿になってから体を小さくさせればいいだろう。


「みんな徹夜で疲れただろう。今日はここで休んでくれ。その間にも私が色々情報収集を行おう」


 美咲さんはデスクに向かい、パソコンを開いて調べ物を始める。

 

「いや美咲さんも休んだ方が……」

「私は大丈夫だ。たとえ死んだとしても……ね」

「? まぁとにかくボク達は休むから起きたら今後どうするか話し合おう」


 この二十四時間でたくさんのことがありすぎた。ティオや椎葉さんの裏切りに、田所さんの生存。

 それに塔子が姿が現したことにボクの正体がバラされてしまったこと。


 眠れない。ボクがこうしている間にも一体どれだけの誹謗中傷が書き込まれているか。

 そんなことを考えていたためかボクだけが眠れず、薄目を開けてぼーっとしてしまう。

 今ボクはタンスの上に数センチ程のサイズの寄生虫になって寝ており、眼球の役割を果たす器官が自然とパソコンの画面を捉える。


「なっ……これはまさかあいつ……!?」


 だからこそ美咲さんが見て驚愕した画面が見えてしまう。

 サタンが街に大量発生したという記事だ。そこにはボクが犯人だという旨の内容も書かれていた。

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