137話 考察タイム
「美咲さん……その巨悪って一体誰なんですか?」
「そうだね……この件が終わったら君達に話してあげるよ。真実をね」
DOに入ってから数多の隠された秘密にぶつかって、もうそれを全て暴いてきたと思っていた。
美咲さんのやってきた悪事に、ボクが寄生虫だという事実。
それなのにまだ暴けていないことがあるのだろうか?
「調子に乗るのも大概にしろよ。そんな信憑性のない戯言を信じろと? 人をおちょくりすぎだ」
「待って真太郎さん! もうちょっと話を聞いてみようよ!」
風斗さんとは対照的に、椎葉さんは彼女の言葉に耳を傾けようとする。
「だがこいつは……」
「寧々ちゃんがどうなってもいいの?」
「くっ……分かった。話を続けてくれ」
彼は押しに負けて、折れて黙り美咲さんの話を聞く姿勢を取る。
「じゃあまずは寧々君を助ける作戦を立てようか。巨悪への対処はそれからだ」
美咲さんは椅子に深く座り背もたれにもたれ掛かる。
スマホを取り出し操作するとプロジェクターが動き出し映像が浮かび上がる。
「まず最近頻繁に出現しているサタンについてだが、あいつらは本来のサタンとは少々構造が違う」
映し出された映像にはサタンが表示されており、その身体構造などが図や文字を用いて表されている。
しかし説明されているものは難解で専門的で、ボク達に理解できるものではない。
「すまないね。これは研究の際に用いていた資料の流用でね。図の方だけを見てくれると助かる」
美咲さんがスマホをタップすれば画面が変わり、螺旋状の図式が出てくる。
「これは最近出没するサタンのDNAだ。そしてこっちが従来のサタンのものだ」
新たにもう一つ表示された方は歪な形をしておりとてもじゃないが地球上の生物のものとは思えない。
「まぁこのことからサタンは地球外生命体ではないのかという声もある。
だが最近出没しているサタンは地球上の生物、特に人間と酷似している。染色体も人間と同じ本数だ」
次に人間とサタンを比較するような画像が出てくる。それにはお互いの生物学的特徴がまとめられている。
「人間と似てるからどうした? 過去にも二足歩行型や人語を話すタイプは居た」
風斗さんが言うことはごもっともだ。人間に似てるタイプなら過去にも居たし何もおかしくはない。
だがそれでも三人とも最近のサタンがどこか異質な感じがすることは薄々分かっている。だからそれ以上は誰も意見を出さない。
「だからあれは人間をベースに、まぁ恐らくは私がキュリア君を作り出したのと同様の手口で、人間の髪の毛や血からサンプルを採ってサタンを作ったといったところだろう」
過去にキュリア自身がボクの生体サンプルから作り出された存在だということを述べていた。
仕組みは理解できるのだが、なんだか不思議で歯痒い感覚だ。
「でもそんなことして何するの? 人間ベースのサタンより、もっと凶暴な……それこそクマとかライオンとかのサタンの方が強く作れそうだけど?」
「大事なのは強さではない。知能だ。
もしサタンが完全に命令に従い人間と同等の知能で戦略的行動を行えるとしたら? それはもはや怪物ではない……兵器だ」
ボク達のように変身できるのなら奴らに対処できるが、普通の人間からすれば銃すら効力が薄い怪物だ。
もし今美咲さんが言ったことができるのならそれはどんなものよりも脅威的なものとなる。
「だからこそ私が言う巨悪はそれを国の一部の過激派に売れ込み資金を得たんだ。
そして人間とサタンの融合。その先にあるサタンによるランストの変身を目指している」
文字だけでも伝わり想像できてしまうそれらの脅威。本当にそんなことができてしまったらボク達でも止めれないかもしれない。
それこそ世界の終わりだろう。
「さっきのサタンはその研究過程の産物だろう。そして寧々君と波長が合ったから偶然取り込んでしまったというのが私の考察だ」
「波長? 峰山さんとあのサタンが?」
「そうだ。私はあまり詳しく観測できなかったが、奴は何か寧々君と似通っている部分はなかったかい?」
似通った部分。そう言われても彼女と奴の接点らしいものは見当たらない。戦闘スタイルや能力も関係ないし、言動や性格も共通点は見られない。