130話 証拠確保
峰山グループのビルの近くにあるファミレス。ここでボク達三人はドリンクバーだけを頼みジュースを飲みながら色々と準備をする。
「あー、マイクテスマイクテス。二人とも聞こえてるかな?」
ボク以外の二人は近くの公園でドローンから受け取ったインカムを耳につけ、それらは問題なく動作する。
「大丈夫のようだね。それじゃあ今からサタンを五匹ビルに送るから、今から丁度三十分したらそこから向かってくれ」
インカムの通話が一旦切れる。美咲さんが準備に取り掛かり、ボク達も腹を決める。
そうして二十五分程経ったあたりで支払いを済ませてファミレスの駐車場で時間になるまで待つ。
「準備は終わったよ。今からビルに向かってくれ。そうしたらサタンが暴れてるはずだからそこから変身して水希君の部屋まで向かってくれ」
指示通りに動き、ボク達は自然に偶然通りかかったかのようにビルの前まで向かう。
「うわぁぁぁぁ!! サタンだ!!」
ビルの中から悲鳴が聞こえてくる。ボクは罪悪感を抱きながらもビルの中に向かい、その先で雄叫びを上げその場で空振りを繰り返す二足歩行の狼のサタンを見つける。
「行こうみんな……変身!!」
[ラスティー レベル1 ready……]
[エンジェル レベル1 ready……]
[サイクロン レベル1 ready……]
鎧が舞い風が吹き荒れ羽が辺りに散る。
ボクは一番にサタンに向かっていき、奴を軽く小突き戦っているフリをする。
「グルルルルゥ……バウバウ!!」
奴は軽く吠え、階段を駆け上がっていく。
「これってそういうことですよね?」
「そうだね。良い感じに追いかけよう」
ボク達は小声で会話し、先導するサタンを適度に攻撃しながら十三階まで駆け上がる。
「水希君はまだその部屋にいる。今からそのサタンに扉を破らせる。君達はインカムを隠してその後について行ってくれ」
水希さん相手にインカムを着けていたら怪しまれて後々面倒なことになる。ボク達はインカムをしまいサタンがこじ開けた扉を通り水希さんがいる部屋に入る。
「あなた達何故こんなにも早くここに……!?」
今にも襲いかかろうとするサタンを前にし、水希さんは手にUSBメモリを大事そうに握っている。
「水希……そのUSBを……」
「待って涼風さん……!! 無理矢理強奪しても意味がないよ」
今回はあくまでも自然を装って証拠を掴まないといけない。
どうするかとあまりない時間で頭を悩ますが、サタンが標的をボクに移し襲いかかってくる。
「ぐっ……ん?」
上から覆い被さるようにし牙を突き立てようとするが、その力は非常に弱く明らかに手を抜いている。
「う、うわぁ〜!」
ボクは取っ組み合っている最中体の方向を水希さんの方へ動かし、体に入れる力を弱める。
奴はそれを合図と受け取り水希さんの方へと放り投げる。
「えっ!? ちょっと!?」
生身の彼女はそれに対応できるわけもなく、ボクの下敷きになる形でその場に倒れる。
その際に一瞬で彼女の手からUSBメモリを奪い取り峰山さんの方へ投げる。そして水希さんの背中に体を滑り込ませて自分がクッションとなり彼女へのダメージを最小限に抑える。
「あっ! すみません水希さん! よくもやってくれたな!」
用は済んだ。ボクはサタンの脇腹を蹴り抜きカードにする。
「姉さん。今の戦いでこのUSBメモリは破損したかもしれません。ちょっと確認しますね」
「なっ!? そんなことあなた達に何の権限が……」
水希さんは無理やりにでも奪おうとはするが、すぐに力量差を理解して抵抗をやめる。
そのデータを見ている間に父さんに連絡しておく。風斗さん達ももうすぐここに来るようで、下を適当にうろついているサタン達を順次倒してくれるだろう。
「姉さん……この記録は何ですか? 爆破指示や警察への口利き……尋常じゃない量の犯罪の証拠。
偶然見つけてしまいましたけど、これは感化できませんね」
「こんなことが許されると思っているの?」
「いえすみません。未熟なもので混乱した末の行動でした……が、それでも見つけてしまったことは変わりません。
これは動かぬ証拠として没収します」
USBメモリは峰山さんの手へと渡る。ひと段落ついたと息をつく暇もなく、次に涼風さんが水希さんの胸元を掴み上げ立ち上がらせる。
「今からはDOの手伝いやそんな建前はない。答えないのも自由だ。ただ話してもらうぞ……私の両親を殺した件を」