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118話 闇の中で願いを


「ありがとう峰山さん! よーし。二人でいこう!!」


 ボクと峰山さんとで動きを合わせ奴に休む暇を与えず猛攻撃をしかける。

 ボクが接近して剣槍斧で防御を崩し、奴がたまらず離れたら今度は峰山さんの弓矢や鎌の衝撃波が奴を襲う。

 数分もすればご自慢の鎧も傷だらけになっており、奴は再び鎧を変えようとする。


「そこだっ!!」


[スキルカード 疾風]


 鎧が脱げるほんの一瞬。ボクはそれを見逃さず加速して近づき奴の露わになった腹に蹴りをおみまいする。

 鎧は奴を捕捉できなくなったのかその場に落ち、奴は明らかに狼狽える。


[必殺 ヒートファング]

[必殺 デビルランチャー]


 ボクは峰山さんと同じくらいの高さまで跳び上がり、彼女はゲートを創り出しそれをランチャー砲の形に変える。


[必殺 パラサイトエンド]


 だがボク達が必殺技を奴にくらわそうとする直前で舞台裏から氷柱が伸びてきて奴の両肩を捉える。

 裏からある人物が飛び出てきて奴に回し蹴りを放ち、カードをすぐさま回収して舞台裏まで戻る。


「なっ!? 待って!! 何で……どうして美咲さんがここに!?」


 忘れるわけもない。あの鎧は美咲さんが使っていたものだ。 

 彼女は特殊なランストとカードもろとも溶岩の中に落ちたはず。あの鎧が残っているはずが、彼女が生きているはずがない。


「生人さん! 追いかけましょう!」


 峰山さんは空中でボクのことを掴み、そのまま舞台裏に飛び込む。

 機材や着ぐるみなどが置いてある暗い舞台裏。そこに美咲さん……だと思われる人が立っていた。ボク達のことを待っていた。


「誰? 美咲さんじゃ……ないよね?」


 警戒しながらゆっくりと奴に近づき様子を伺う。


「不正解。ふふっ、久しぶりだね……生人君」


 その声は美咲さんのもので、彼女はゆっくり特殊型のランストに手をやり変身を解除する。

 間違いなく美咲さんだ。偽物や影武者ではない。家族同然のボクにはそれが分かる。


「それに寧々君も、中々良い目になったね」

「あなたは生人さんに敗れて自ら溶岩に沈んで死んだはずです。どうして……?」


 ボクがあの時見た光景は間違いなく現実だ。見間違いでも幻覚でもない。

 この目で確かに彼女が溶けて死ぬ様子を目撃した。だからこそ今目の前の現実はありえないもののはずだ。

 

「この私が負けた場合のことを想定していなかったと思っているのかい? 私は生人君の成長を、君の可能性を誰よりも信じていた。だからこそ君が私を乗り越える可能性も事前に想定していたのさ。

 とはいえそれは限りなく低い可能性だったから驚いたけどね」

「そんな話はどうでもいい!! 美咲さん……今度は何を企んでるの?」


 美咲さんが何故生きていたのか。この際それはどうでもいい。問題は彼女が今何をしようとしているかだ。

 もしかしたらまたたくさんの人を苦しめるとんでもないことを計画しているのかもしれない。


「細かくはまだ言えないが、一つだけ言えることがある。少なくとも今の私は君達とは、人々を救いたいという正義とは敵対しないはずだ。

 現にさっき倒した特殊なサタンは私が生み出したものではない」

「待って。特殊なサタンって何? 確かにこいつは強かったけど……」


 美咲さんは押し黙ってしまう。失言をしてしまったかのように。

 

「まだ知らないか……いや悪いね。私は今幾多の監視を掻い潜って生きている身で取得できる情報に限りがあるんだ。

 まぁ今回は君達の前に姿を現すしかなかったけど、その分収穫はあった」


 彼女の手に握られた数枚のカード。先程の奴が落としたものだ。至って普通のドロップカードだが何か特別な力があるのだろうか?


「ここで君達と一つ交渉をしたい。今日ここで私と会ったことは秘密にしといてくれないか?」

「ボク達に悪に手を貸せって? それにボクはあなたとは………………決別した」


 ボクは言い迷ってしまうもののハッキリと彼女と距離を取らせてもらう。

 美咲さんは非常に残念そうにし悲しそうな表情を浮かべる。


「それにわたくし達があなたを逃すと思ってるんですか?」


 峰山さんは容赦なく弓を構え始めその標準を彼女に合わせる。


「分かった。ならこちらももう一枚手札を見せよう。

 私が今生きていることをバレたくないのは、生人君に前に言った、私以上の悪に存在を悟られたら厄介だからだ」

「この前の……美咲さんが言うその悪って一体誰のことなんですか!?」


 外から段々と物音が聞こえてくる。恐らく風斗さん達がここに到着したのだろう。


「それはまだ言えない。そこまでは手札は見せられない。それに時間切れみたいだね。君達が賢い選択をすることを願っているよ」


 美咲さんは峰山さんに向かってその場にあった道具を投げつけ、踵を返し背中を見せ逃げる。

 道具が弓の軌道を逸らし、ボクがすぐに追いかけるものの角を曲がったところで見失ってしまう。

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