102話 二人で一人のヒーロー達(風斗視点)
体が思うように動かない。もう一度変身してせめて足掻こうと思うものの手が震え精密な動作ができない。
「寧々君は死んだ。愛君と真太郎君ももう動けない。生人君の心も壊した……私の勝ちだ!!」
奴は腕を広げ天を仰ぐ。完全に勝ち誇った様子で不愉快だが、今の俺には奴をどうこうする力は残っていない。
「俺は……もう間違わ……ない。失わ……ない……!!」
血反吐を吐きながらも立ち上がる。まだ脳に衝撃の余韻が残っており腕は力が入らずダランと垂れてしまう。
「君も諦めが悪いね。前はそんな性格じゃなかったはずだけど……これも生人君に感化された影響か」
確かに奴の言う通り俺は元々こんな根性を振り絞る熱血キャラのようなことはしないしできなかった。
だが生人と出会えたおかげで変わることができた。いつでも全力でまっすぐ前を向くあいつを側で見ていたからこそ、無駄だと分かっていても進んでいく勇気を身につけることができた。
「その勇気に敬意を払って苦しまずに殺してあげよう。それじゃあさよなら。真太郎君」
奴はまともに動けない俺に拳を放つ。それは正確に俺の頭部を捉えておりそれをくらえば頭は弾け飛び脳味噌が飛び散るだろう。
だが視野外から飛んできた矢によって拳の軌道が逸らされ俺は首の皮一枚で助かる。
「なっ!? 誰だ!?」
矢が放たれた方に立っていたのは寧々だ。服に血が付着していたり、左胸の部分に穴があるものの特に外傷は見られない。
「何故生きている!? 確かに心臓が貫かれ鼓動を止めていたはずだ!!」
美咲の反応を見るにあの言葉はハッタリなどではない。なら尚更何故寧々は今あそこに立っているのだろうか? 俺は今亡霊でも見ているのだろうか?
寧々は生身でありえない程の脚力を見せ奴の懐に飛び込む。
「なっ!? この速さは!?」
そのまま奴の腹に一発拳を入れ殴り抜く。生身であの強度の鎧を殴ったら殴った方が怪我しそうなものだが、ダメージを受けたのは美咲の方だ。
「人間態でこの力……まさか、まさか君は!?」
美咲は寧々の持つこの力の正体に気付いたようで、今までの態度を崩し狼狽の声を漏らす。
「今度こそ終わりだよ美咲さん。僕があなたを倒す」
寧々の口調がいつもと違う。まるで生人が彼女に乗り移ったかのようだ。
いや違う……まさかそういうことか? それなら美咲が寧々が死んだと言ったことも、彼女があんな力を引き出せることにも納得がいく。
「生人君……何故だ? 何故寧々君の体を乗っ取った!?」
俺の予想は的中していた。今寧々の体で喋っているのは生人だ。彼が今寧々の体に寄生している。
「今僕の中で峰山さんが眠ってる。でも死んでいるわけじゃない。すぐに目を覚まして戻ってくる」
「馬鹿な……寄生は宿主の精神を蝕み乗っ取る行為だ。そんな芸当が、心を守り傷の治癒の代行をするなど……!!」
「僕と峰山さんは一心同体だ。だからこそ、お互いに心の底から信じ合ってるからできたんだ!!」
生人はランストを装着しカードを二枚取り出す。
「ありえない……そんなご都合的なことが起こるなんて……それに君は心が壊れていたはずだ。何故立ち直れている!?」
「もう一人じゃないから。あなたみたいに私利私欲で接するんじゃなくて、本心からぶつかり合える人達がいたからだ!!」
[ラスティー レベル30 ready…… アーマーカード ドラゴンホッパー レベル49 start up……]
鎧が出現し、空気を震わせるほど高速で回転して生人の全身に装着されていく。
前と同じ見た目だが、何故か一目でこの前とは違うことが分かる。キュリア同様に格の違うオーラを纏っている。
「いくよ峰山さん……さぁ、ここからはヒーロー達の出番だっ!!!」
生人は意気揚々と、前までの明るさを取り戻し美咲に立ち向かう。その姿はまさに希望そのもので、ヒーローが悪と対峙する瞬間であった。




