第十話 暗闇に烏は羽ばたく
裏社会というものは、表の社会に居場所のない者、居られなくなった者達が寄り集まり、助け合うことで生まれた生活共同体である。
力を持った犯罪組織や反社会勢力が取り仕切っていることが多いが、全ての住人が犯罪者というわけではない。
裏社会を構成する人々には幾つかの種類がある。
『貧民』
貧しい家に生まれた者が裕福になることは難しい。
それでも安定した家業があれば貧しいなりに生活していくことができるだろう。
しかし、何らかの原因でその家業を失ったり、大きな借金を背負い込んだりすると、更に貧しくなってそれまでの生活が維持できなくなってしまう。
職や住処を失った貧民が、それでも生きていくために最後に辿り着く先が裏社会なのである。
『流民』
何らかの事情で故郷にいられなくなった者のことだ。
田舎の農村などでは住民同士の結び付きが強い。普段は相互扶助を行う生活共同体も、一度そこからはみ出ると途端に生き辛くなる。
別に悪いことをしたからとは限らない。
共同体のボスに逆らったとか、悪い噂が流れたとか、運が悪いとかなりくだらない理由で村八分になることもある。
村に居辛くなって飛び出しても、受け入れてくれる所はあまりない。
王都のような大都市ならば見慣れぬ隣人にも寛容だが、親身になって面倒を見ることもない。
結局行く当てが無くて裏社会に落ちて来る。
『脱落者』
表社会の住人であっても何かのはずみで脱落することがある。
仕事で失敗したり、事故で働けなくなったり。犯罪に巻き込まれて被害者になったり加害者になったり。
当人の問題だけでなく、主要な働き手を失った子供や未亡人が生活苦に陥って脱落することもある。
脱落して戻れなくなった者は、容易に貧民や流民に落ちる。そして、そのまま裏社会にまで落ちて来るのだ。
元から裕福でない者はちょっとした躓きでも立て直せずに脱落するが、金持ちや貴族であっても油断はできない。持つものが多いほど、それを狙った事件や陰謀に巻き込まれやすくなるのだ。
裏社会には予想外に高い教養を持つ者もいる。
『不法者』
世の中には、社会にうまく適応できない人がいる。
感情を抑えられずに、すぐに暴力に訴てしまう者。
自己中心的で、己の欲望のままに突き進んでしまう者。
どうしても譲れないものがあり、それが社会のルールや慣習と衝突してしまう者。
中には止むを得ない事情で犯罪に手を染める者、冤罪で犯罪者扱いされてしまった者もいる。
一度犯罪者の烙印を押された者が表社会に留まることは難しい。
気質的に社会のルールと合わない者は何度でも罪を犯して破滅するし、仕方なく罪を犯した者や冤罪で犯罪者扱いされた者も周囲から白い目で見られまともな職に就くことも困難になる。
表社会に馴染まない者、脛に傷持つ者が寄り集まって裏社会を形成するのだ。
腕っぷしの強い者は裏社会ではエリートだ。無法の街では暴力こそが正義であり真理。
そうした乱暴者を大勢抱え込んだ犯罪組織が、必然的に裏社会を支配する。
だから、裏社会は犯罪者の巣窟である。それは間違いのないことだ。
しかし、裏社会の住民の全てが犯罪者なわけではない。
裏社会の大半を占める貧民は、辛かったり汚かったりイメージが悪かったりして表社会の人間がやりたがらない仕事を低賃金で引き受ける日雇い労働者である。
もちろん、犯罪の片棒を担がされることもある。何も知らされずに危険な役回りをはした金でやらされる、使い捨ての駒だ。
裏社会でも数多くの弱き者は、支配者たる犯罪組織に庇護される立場であり、そして搾取される者達である。
だが、その数多くの弱者の存在こそが社会を支えているのた。それは表社会でも裏社会でも変わることはない。
「一体何が起こっていやがるんだ!」
裏社会の顔役、犯罪組織『闇烏』のトップであるケイリーは焦っていた。
組織は静かに崩壊しつつあった。
今起こっていることは、人材と資金の不足だった。
「うちの幹部がかなりの数、しょっ引かれちまった。くそっ、政府の犬め、裏切りやがって!」
政府の犬とは国の諜報部の一部の事である。
コードネーム「ハウンドドッグ」。主に表沙汰にできない犯罪の調査等を行う機関である。
言ってみれば、国の裏組織であり裏社会とも親和性があった。
裏社会の犯罪組織は、国に関わるほどの大きな犯罪を犯すことはほとんどない。だから、一般犯罪は管轄外である諜報部とは協力することもあった。
だが、その諜報部の手引きによって、犯罪組織の主だった人物が逮捕されてしまったのだ。
「今回の事は、夏至祭で騒ぎを起こさせないための措置だろう。聖女様がいないなんて前代未聞だからな。」
夏至祭は王都でも大きな祭りであり、大勢の人で賑わうイベントは表社会でも裏社会でも稼ぎ時だ。
裏社会や犯罪組織が絡んでいたからと言って、必ずしも犯罪が行われるとは限らない。だが、トラブルにはなりやすいし、犯罪に発展することも多い。
だから例年この時期には取り締まりが強化される。
しかし、諜報部まで動員して徹底的に犯罪組織の動きを封じた理由は、やはり聖女の不在だろう。
聖女の不在により不安や不満が高まっている所に、下手に揉め事を起こせば、それがきっかけとなって暴動にまで発展する恐れがある。
国が動かざるを得ないほどの大事になりかねないからこそ、普段は静観している諜報部まで動員してきたのだ。
そこまではケイリーも分かっていた。
「だが、問題は組織だけじゃねぇ、裏の人間そのものが減っていることだ。」
犯罪組織と言っても、犯罪だけで稼いでいるわけではない。
実は、犯罪組織の最大の収入源は、貧しく弱い人々から様々な名目で徴収する金なのだ。
犯罪行為は実入りの大きいものほど失敗したり捕まったりするリスクもまた大きい。
それに、犯罪は所詮は犯罪。収入が多い、つまり被害が大きければそれだけ対策される。安定した収入にはなり難いのだ。
その点、貧乏人から徴収する金は税金のようなもので安定収入が見込める。他に行き場のない者達だけに、取りはぐれがあまり無いのだ。
もちろん一人一人は貧乏だから大した金は出てこない。しかし、貧民は数が多いのだ。
大勢の貧しい者達が必死になって稼いだ金を掠め取る。それが裏社会を牛耳る犯罪組織のやり方だった。
だが、ここ数年で裏社会を支える貧民の数が減少していた。
その理由も分かっていた。
「五年前から始まった、大規模な開拓団の募集か……」
グランツランド王国は、大陸北部に広がる農耕に適さない「不毛の大地」を開拓して作られた国だ。
建国から三百年経った今でも、少しずつでも国土を広めようと開拓作業は続いている。
それがここ数年でその規模を拡大していた。
これまで未開拓地に接していた辺境領と呼ばれる領地で細々と行っていた開拓を国家事業に押し上げ、王都でも開拓民の募集を行うようになった。
前歴不問、家族連れ歓迎の募集は実質的に裏社会の貧民を狙い撃ちにしたようなものだ。
辛く、苦しく、成功の保証もない開拓作業に挑みたがる者は、定職に就いた堅気の人間にはほとんどいない。一方で失うもののない貧民やその予備軍にとってはチャンスがあるだけだった。
募集がかかる度に次々と貧民は王都を離れて行った。裏社会の支配者であってもこの流れを止めることは不可能だ。
その結果、裏社会は急速に縮小した。
搾取される弱者の数が減れば、搾取する側の収入も減る。
裏社会の貧民の代わりに表社会の人間を犯罪の毒牙にかければ、捕まる者も増えて組織は人的にもやせ細っていく。
弱体化して行った犯罪組織は生き残りをかけて他の組織と抗争、あるいは吸収合併を行った。
最終的に唯一残った犯罪組織『闇烏』が裏社会の全てを牛耳ることになったのだが、これを勝利と呼べるかは少々疑問が残る。
表社会には大した影響は出ていないので、状況を理解しているのは画策した国の人間と、裏社会の面々だけだろう。
裏社会側で一番状況を理解しているケイリーは、しかしその意味が分からずに悩んでいた。
「国は裏そのものを潰す気か? いや、それにしては大掛かり過ぎる。」
大規模な開拓団を送り出すにはそれなりの資金が必要だ。
開拓に成功してもその資金を回収するまでには長い期間がかかるし、失敗すれば再び大量の貧民が生まれる。
単に貧民を減らすだけならば王都内で公共事業でも行って職を斡旋する方がよほど安上がりで即効性がある。
また、開拓事業には辺境領の領主の協力も不可欠だ。
中央集権の強いグランツランド王国ならば王命を出せば従うだろうが、理由が王都の裏社会を潰すためでは反発も大きいだろう。
結局、開拓事業は本気で辺境の地を開拓して国土を広げるために行われているのだろう。
だが、それだけでは説明のつかないこともあった。
「辺境の開拓はともかく、ガザム帝国の開拓団の募集を王都で行うなんてあり得ない!」
国民は国の財産だ。
国が主導して行われる開拓事業ならばともかく、他国に国民をまとめて取られるような真似は許すはずがなかった。
特にグランツランド王国は、農業に適さない土地を開墾してきた高い農業技術を持っている。
ただの農民と言えども、むしろ農民だからこそおいそれと他国に出すわけにはいかなかった。
しかし、大々的にではなくとも募集は行われ、実際にガザム帝国に向かった者も多くいる。
開拓民を送り出すために出国の基準を緩和すれば、国外に出したくない者まで出国して国益を損なう恐れもある。
犯罪組織とは言えそのトップにいるだけに、ケイリーは政治というものを理解している。それ故に国の意図が読めずに苦しんでいた。
「何かが起こっていることは間違いない。まだ余裕のあるうちに王都を、いや国を出るべきか。」
犯罪組織のトップだけに、危機や異変には敏感だ。ケイリーは即座に行動を起こした。
◇◇◇
「王都を脱出した貧民が八割を超えました。行先の大半は北方三辺境領、一部が他国です。」
「犯罪組織『闇烏』の首領及び幹部が王都を出ました。行先はガザム帝国と思われます。」
「よし、これで組織的な火事場泥棒は無くなった。これより、表側の誘導に注力する!」
国の諜報部はいくつかの部署に分かれている。
その中でも「シープドックス」は国民全体の意識調査を行い、大規模な暴動や騒乱を未然に防ぐことを目的とした組織だった。
本来は諜報部の中でも不要不急の重要度の低い部署だった。国全体の調査を行うにもかかわらず人員が少なく、外部の者を雇うことが多かったほどだ。
その閑職に近かった「シープドックス」の組織が突如拡充されたのは数年前の事だった。
理由はもちろん、聖女が失われた際の全国民の避難計画を極秘裏に進めるためだ。
国民全員の避難となると、国王が命じただけで実現できるような容易なことではない。
きちんと手順を考えて、定められたルートで順序良く移動しないと大混乱が生じてしまうだろう。
何よりも問題となるのが、民衆の心の問題だった。
これから国が滅びると言われて、素直に住み慣れた家を捨てて見知らぬ他国に行くことに同意する者がどれほどいるだろうか?
特に、最初に襲われることになる王都は、死霊が出現するよりもずっと前から避難を始めなければならない。
脅威を実感しないままに強制避難命令を出しても不満が出ることだろう。
渋る住民を強制退去させるのは手間も時間もかかるし、不満が爆発して暴動にでもなれば避難計画全体が破綻しかねなかった。
そこで、民衆の危機感を適度に高め、自主的に避難するように誘導する。その裏方の作業を担っているのが「シープドックス」だった。
そのシープドックスが一般の国民に先立って対処していたのが、裏社会の者達だった。
裏社会の住人は国の命令をなかなか聞かない。
犯罪者はもちろん、貧民等も国や社会に見捨てられたと感じている者達だ。簡単には命令に従わないだろう。
そして、裏社会の人間が残っていると必ず発生するのが火事場泥棒、つまり先に避難した民家や商店を狙った空き巣行為である。
ある程度は仕方がないにしろ、あまり大々的に行われると住民の避難に支障が出る。
泥棒を警戒して避難をためらったり、大量の家財を無理に持ち出そうとして混乱が起きるかもしれない。
そこで、表の政策とも連携して裏社会を構成する主要な者達、つまり貧民を王都から追い出す作戦を五年前から始めていたのだ。
「しかし、国外の開拓団への応募が予想より少なく、北方三辺境領の開拓枠がほぼ埋まりました。カイパー領とオールト領が定員の九割、エッジワース領も八割に達しています。」
「想定の範囲内だ。おかげで避難民の受け入れ施設が早く完成した。後は避難民の振り分けを調整して対処する。」
グランツランド王国の北部に広がる北方三辺境領――カイパー領、オールト領、エッジワース領の三領は開拓による国土拡大の最前線だ。
そして重要なことは、この三つの領がグランツランド王国建国後に新たに開拓された土地であること。
つまり北方三辺境領は滅ぼされた先住民族、ドラクレイル族が居住していなかった土地であり、怨霊にとっても復讐の対象外だと考えられていた。
この三領はグランツランド王国崩壊後に独立する予定である。
北方三辺境領で駄目ならばどこの国に逃げても無駄だろう。
「それりも、ここまでの状況を入力して再計算するのだ! この先はより慎重に行くぞ。」
諜報機関シープドックスの本部には奇妙な物体が置かれていた。
四角い台座の上に置かれた一抱えもある青色の球体。それは「ラプラスの神具」と呼ばれる古代の宝具だった。
その来歴は古い。グランツランド王国の建国以前、大陸を彷徨っていた時期よりもさらに古く、失われた彼らの祖先の母国が健在だった時代にまで遡る。
この「ラプラスの神具」は単なる宝物ではない。それは、未来を予測する装置であった。
単なる占いではない。
多量の情報を入力することにより、そこから予測される未来を算出すると言うものだ。
ただし、その能力は万能ではない。
十分な量の情報が無ければ予測の精度は落ちるし、誤った情報を入力すれば誤った予測をする。
また、予測に必要な情報が分からない自然災害や突発的な事故などは予測できない。
特定個人の行動を予測することも難しい――当人の生まれてから今日までの全ての情報があれば可能だろうと予想されているが、実質的に不可能だった。
しかし、一般的な民衆全体の行動についてはそこそこ正確に予測ができることが分かっている。
一般大衆の挙動に関しては千年に及ぶ情報の蓄積があると云われていた。
他の大国も手を出さないような厳しい北の地で、グランツランド王国が三百年に渡って安定して統治し続けられた理由として、この宝具の存在は大きかった。
その貴重な宝具をフル稼働して、全国民の避難計画は立案された。一人でも多くの国民の命を守るために。
作業は難航した。
ほんの少しでも条件が変わると計画が破綻し、国民の大多数が死亡する結末が予想されるのだ。
北方三辺境領の開拓事業のように時間のかかる事業は計画に影響の少ない範囲で前倒しで進めて行ったが、タイミングを間違えると死者が一気に増大する計画も多くあった。
特に国民に避難を促すために情報を流す作業については、タイミングが非常に難しかった。
聖女の祈りが途絶えた後に作戦を開始しても間に合わない。だが、情報の流出が早すぎたり、途中の段階を端折って一気に情報を公開してもかえって混乱を助長してしまう。
建国の歴史の隠された真実は、それだけで国を揺るがしかねない劇薬なのだ。
聖女ソフィアがいつまで聖女の仕事を続けられるのかを正確に予測することはできなかった。
医師の見立てではいつ倒れてもおかしくなかったのだ。
計画は行き詰ったかに見えた。
何も手を打たなければ、国民の六割以上が死亡し、逃げ延びた者もいつ終わるとも知れない過酷な避難生活に大勢の死者が追加で発生すると予測されていた。
しかし、最善を目指した計画が一つ失敗するとそれ以上の犠牲者を出す危険性が高かったのだ。
これでは下手に避難を促すよりも、自力で避難できた者の受け入れをお願いすることに全力を注ぐべきでないか、という意見まで出るありさまだった。
風向きが変わったのは、アベール王太子が参加してからだった。
学生が中心となって考えた計画は、予想通り稚拙なものだった。
殿下たちの考えが浅いわけではない。ただ、やはり素直過ぎた。
大多数の国民が国の命令を聞いておとなしく避難行動を行い、どさくさに紛れて悪事を働くことはない。
そんな前提が無意識に入っていた。
わざわざ予測演算を行うまでもなく、簡単に破綻することが目に見えた計画書。
しかし、そこにはただ一点、彼らの考えてもいなかった要素が含まれていた。
聖女ソフィアの救出。
それは、少しでも時間を稼ぐために聖女を使い潰す気でいた諜報部にはない発想だった。
また、情報操作のタイミングに合わせて聖女がまだ元気なうちに亡くなったと発表する方法も検討されていたが、嘘がばれた時点で計画が破綻することになる。
結局、諜報部で立案する計画では、聖女ソフィアの死は前提条件だったのだ。
ところが、アベール王太子の持ち込んだ、聖女ソフィアを存命の内に国外に逃がす案を導入したところ、状況が変わった。
まず、作戦を開始する時期をこちらの都合に合わせて決められるようになった。
聖女ソフィアの体調がそれまで持つかだけが懸念材料だったが、事前の情報操作と人心誘導を行った上で聖女の国外追放劇を行うことができた。
また、アベール殿下が悪評を一手に引き受けたことも効果が高かった。
貴族や王族の醜聞は民衆にとっては娯楽であり、いきなり不安にさせずに国民の関心を引くことができた。
そして何より、聖女の国葬という重大イベントを回避できたことが大きかった。
このグランツランド王国において聖女の存在は非常に大きなものがある。建国以来三百年分の民衆の情報を蓄積したラプラスの神具の予測にもそのことは現れていた。
大々的に国葬を行って知らしめなければ民衆は聖女の死を受け入れられず、聖女に守られていた国が滅びると言っても避難が進まない。
多大な労力と時間をかけて聖女の国葬を行えば、聖女の死を受け入れた民衆が意気消沈して投げ遣りになる。
これらの不安要素が消えたことで、計画は一気に進んだ。
八割以上の国民が避難に成功するシナリオが作成され、不測の事態にもある程度対応できる余力を確保することもできた。
シープドックスの士気も一気に上がった。
最悪何もしない方がましな計画しか立てられなくて鬱々としていたところから、大多数の国民を無事避難できると予測されるようになったのだ。
しかも、計画の進行に合わせて細かな修正を加えることでより成功率は上がり、予測される死者の数が減って行く。
この後もいくつか不確定要素があり、下手をすれば死者が増えるが、上手く対応すれば犠牲者を減らす余地もあった。
成功の目のある仕事は、それだけ遣り甲斐があるのだ。
「目標は全国民を生き延びさせること! 最後まで気を抜くなよ。」
基本的に諜報部は裏の仕事である。
最終的には国のために必要なことだとしても、時に非合法なことを行い、時に目の前の罪もない人を不幸にする汚れ仕事だった。
そんな後ろ暗い仕事を続けていた彼らが、今回かなり直接的に人を救う仕事を行っているのだ。
諜報部員たちは、燃えていた。
・ピエール=シモン・ラプラス
フランスの数学者。
「ある瞬間の全ての物質の状態を知り、その運動を完全に計算できる存在がいれば、未来も確定した出来事として見通すことができるだろう。」
と言う決定論的な世界観を提唱した人。
その、全てを計算して見通すことのできる存在を「ラプラスの悪魔」と呼ぶ。
・ケネス・エセックス・エッジワース
アイルランドの天文学者
・ジェラルド・ピーター・カイパー
オランダおよびアメリカの天文学者
冥王星辺りの軌道に存在する小天体が多数存在する領域を二人の天文学者の名を取って、エッジワース・カイパーベルトと呼ぶ。
・ヤン・ヘンドリック・オールト
オランダの天文学者。
太陽系の外側を球殻上に取り巻いていると考えらてれいる天体群を「オールトの雲」と呼ぶ。理論上の存在で未確認。
オールト氏が長周期彗星の起源として提唱した。