表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

歴史に関連する作品

近代世界史(序章試作版)

作者: 恵美乃海

前世紀、民主主義を基幹として、公正な社会、高福祉社会の実現させた日本、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、西ヨーロッパ諸国は、各国家の独立を保ちつつ、世界連邦共同体を創設。さらに世界連邦議会、各国家の軍隊を廃して、ひとつの世界連邦軍を創設し、その経済力、軍事力は、世界のその他地域国家群を圧倒する。


がひとつの世代が交代した程度の年数が経過するうち、微温的寛容的社会となった世界連邦共同体は競争力を失い、世界連邦軍は、ソビエト社会主義共和国連邦、大華帝国、イスラム帝国の三国同盟軍に短期間で敗北する。

 前世紀、民主主義を基幹とした世界の国家群で、公正な社会、高福祉社会の実現を公約にした政党が政権を担った時期があった。

 その国家は、日本、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、西ヨーロッパ諸国であった。


 その国家群は、当時の世界において、経済的に先進国と称されている国家とも一致した。

 それらの国家は経済的に、そして政治的にも連携し、世界におけるその他の地域を圧倒する勢力となった。

 そして国家としての独立は保ちつつ、相互の鈕帯を強め世界連邦と呼ばれる共同体を形成した。


 そして、その他地域の国家群は、やはり政治的には独立していたが、経済的には世界連邦共同体国家群に従属する地位に置かれた。


 そして社会思想的にも、世界連邦共同体国家群では、自らが基幹とする民主主義と高福祉社会の実現に立脚した思潮がメインストリームとなったし、その他地域国家群の国民にもその思潮の受け入れを支持する層が増加していたのである。


 世界連邦を構成する国家群は、世界連邦議会を創設し、連邦議会議長が行政的事務の主管者となったが、その地位は独裁的権力を持ち得ない様々な制約が課され、各国家と社会的利害の調整者というのがその役割であった。

 世界連邦議会は、やがて各独立国家の軍隊を廃し、ひとつに統合された世界連邦軍を創設した。

 世界連邦軍は、軍事力においてもその他地域の国家群を圧倒した。



 時が流れた。

 一世代が交代するほどの。


 高福祉社会。

 それは極端な富裕層も貧困も存在しない社会。

 社会に厳密なセーフティネットが存在する社会。

 働かなくても、最低限の生活は保証される社会。

 人間が考えうる中で、最も望ましい社会ではないのか。

 が、その社会は大多数の人々の勤労意欲の低下をもたらした。

 才能と活力に溢れた人材も総じてスポイルされた。どんなに大きな社会的成功をおさめても、極端な金銭的報酬があるわけでもなく、大きな社会的賞賛を得るわけでもなかったからである。


 全世界における世界連邦を構成する国家群の経済的支配力は低下した。高福祉社会を維持するための税収が見込めなくなり、世界連邦はまず財政的に破綻していった。

 そうして競争的風潮のない社会、経済的活力なき社会は、改革的風土を失っていった。


 圧倒していたはずの世界連邦の経済力は、全世界の中で低下していき、世界連邦共同体を構成する先進諸国に追いつけ追い越せとの活力に溢れ、概ね競争社会でもあったその他地域国家群との最先端技術、学術の逆転現象も起こっていった。



 そして、共産主義社会の実現を国家目標とするソビエト社会主義共和国連邦。

 帝政を敷く大華帝国。

 さらにイスラム帝国。

 これら思想的には全く相容れないはずの国家が、反世界連邦共同体、そしてともに独裁的統制国家であるという共通点により三国同盟を締結した。

 三国は、インド帝国、アフリカ連邦、東南アジア諸国、中南米諸国の中立も取り付け、

 局地的な領土的紛争を奇貨として、世界連邦軍と戦端を開き、短期間で勝利した。


 講和条約により、世界連邦は廃され、世界連邦を構成していた国家は形式的独立は保たれたが、地方分権小国家の連合体とされ、政治的にも、そして経済的にも、勝利国家の従属的地位に置かれることとなった。



 そしてまた、時が流れた。


 新しい世紀が始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ