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44.不死

 「また派手に壊したね~」


 「悪いな。あそこでやらなきゃ次勝てる補償どころか、確率がかなり低い敵だったんでな。装備に関しては任せる。直るまでは金稼ぎにでも専念するさ」


 「ふっふっふ!はーっはっはっは!」


 高らかに笑い出すサイーダ。久しぶりに会ったらやたらハイテンションでちょっと引く。


 何となくしょっちゅう会ってるつもりだったが、いつも小包で新装備が出来るたびに贈ってきてくれるからだった。


 何だかんだ顔を合わせずともこちらの事を気にして、装備の研究を進めてくれていた事に感謝をしなければならないし、折角の装備を破壊してしまった事を詫びなければと思ったのだが、何故か楽しそう?


 ちなみにフェニックステイルは蠍に預けてメンテしてもらっている。


 さて、放っておいて笑い続けた挙句か呼吸にでもなられたら困る。まぁゲームだしそんな事はないとは思うが、無視も出来まい。


 「何がそんなに可笑しいんだ?」


 「いや、こんな事もあろうかと!既にアンタの装備はリニューアルされている!」


 「リニューアル?」


 「そうさ!よく考えな!ヒーローがゴテゴテと次から次へと新装備を後乗せサクサクだよ?どこかで壊れて、パーフェクトフォームになるってのが筋ってモノでしょうが!」


 「そ、そういうもんか?」


 「そういうもんじゃなけりゃ、どういうもんだっていうの!最近なんかベルト回りはゴテゴテするし~、背中もごわごわするし~、斥力装置も武器しまわないと使えないの面倒だな~とか思ってたでしょ!」


 図星を突かれて、言葉に詰まる。


 しかし、どれも自分では作れないモノばかりだし、真面目に感謝はしていた。


 元々半分は生産職の自分だ。道具で補強するしかない以上、ピーキーな装備を扱うのも腕の内だろうと【訓練】していた訳だが、確かに瞬間的な判断が必要になる戦闘において面倒であったのは否めない。


 「ま、まぁもう少し扱いやすければと思う事はあったが、性能は抜群だったしな……」


 「そりゃ、私の開発した装備だからね!しか~し!それらを統合し、一つにまとめる事で、デザイン性すらも完璧な者とするのがこの私だ!と言うわけでコレ装備して!」


 言われるがままに出された装備を装着していく。


 左腕の〔盗賊の篭手〕と冑はそのままに、まずアンダーウエアはこれまで通り黒地にラインが入っているのは変わらない。つまりまた光るという事だろう。


 まず右腕だが、手甲から肩まで一体型になっている?相変わらず見た目だけ金属っぽいが感触は皮や魔物の甲殻と言った所だ。


 「随分と張り込んでいるが、これはどうなってるんだ?」


 「ほぅ……そこから行くとはお目が高いね~。まずまぜーるくんナックルはその装備内に内蔵されてるよ。前腕の内側をよく見てみな」


 手をねじり腕の内側を見ると、何かボタンのようなものがついているので、よく観察する。


 するとそれが全てチビチビフィルムケースだと言うのが分る。


 「入れ替え式だったチビフィルムケースを最初から全部内蔵してるのか」


 「そういう事!差し替えなくても使いたい奴を選択すればいいのさ!陰と陽は使ってないって話だから、全部で8種好きに組み合わせな」


 「なるほどな。それでなんで肩部まであるんだ?」


 「肩部にはアンタの術士の石をいくつか仕込んであるから、これで戦闘中精神力の消費を気にする必要なくなったろ?その名もフェニックスアーム!」


 「アームだと武器って意味もあるから、まるでパンチ主体みたいじゃないか?」


 「じゃあ、勝手に名前つけなよ!ほらほら次の装備!」


 何故か急かされるので、次はブーツを履いてみるが、コイツは慣れた感触だ。


 「なるほど、蹴りは今まで通りなんだな」


 「そう思ったろう!全然違うぞ!」


 「な!履いた感触は同じなのに、全然違うって……、何が違うんだ?変わる要素が思いつかんのだが?」


 「ふっふっふ!何とその新型は両足同時に蹴りを起動できるのだよ!」


 「それって……凄いのか?」


 「そりゃ凄いよ!何言ってんの!精霊の攻撃的ダメージを2種類同時に当てるんだよ?そりゃもう敵はクラクラのグラグラでヘロヘロって寸法よ!」


 「そうなのか」


 微妙に凄さが伝わらないが、多分いいモノなのだろう。


 次にアーマーを取り出して装着。肩部が干渉しない様に少し首周りがすっきりしているが、軽くて着やすい。


 更にベルトも装着するが、こちらも大分すっきりしてかなり腰周りが楽だ。ギミックもフィルムケース二本挿しのみに戻り、スイッチも一つだけ。


 ただし、ベルトの側面から後ろにかけてフィルムケースを収められるホルダーと一緒に色々と付属パーツがくっ付いている。


 「どうだ?何がどうなってるか分からんだろう!」


 「ああ、すっきりしてかなり楽だが、どんなギミックかはさっぱりだ」


 「風精と重精は使ってたまま大きくは変わらないけど、あとは秘密!使ってからのお楽しみさ!一つ言える事は、これまでよりふんだんに術士の石を使わせてもらってるから、燃費が凄く良い筈。もっと思いっきり使っても大丈夫だよ。そろそろ時間だし、行きな!」


 「はぁ?行きなって?」


 「何言ってんだい!何の為にこんな所で待ち合わせたと思ってるんだい?」


 何の為と言われても、装備が壊れた事をNPCづてに手紙で知らせたら【闘都】で待ち合わせだと言ってきたのはサイーダだ。


 言われるがまま待ち合わせ場所に向かい、新装備を受け取った訳だが、何故この場所なのかは全く知らない。


 そのままサイーダに手を引かれ、一つの闘技場に入り、控え室に投げ込まれた。


 念の為予備の節尾剣を取り出し、腰に装備していると、呼び出しがかかる。


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 大きな斧を肩に担ぎ、つるっとして全く表情の読めないマスクを被った女がリング中央に立ち尽くしている。


 [それは呪われし斧、一人殺す度に力を増し、一振りすれば殺された者の怨嗟の声が響き渡る]


 女が大斧を地面に振り下ろすと、身の毛のよだつ様な幾人もの叫び声が聞こえ、地面からは怨念としか思えない恨みに歪むヒトの顔がわき上がり消える。


 そこでリングサイドに立っていた自分にスポットライトが当った。


 つまりここで登場シーンと言う事だろう。


 ゆっくりとリング中央へと歩を進め、斧を持った女と対峙する。


 「ブラックフェニックス……冥星と相打ちになったと聞いた」


 「復讐を遂げるまで……悪を滅するまで……俺は何度でも復活する」


 特に開始の合図もなく、女がゆっくりと斧を引き思い切り体を絞った所で、ベルトを起動。


 とりあえず最初は、土石と氷水の混ぜ物ボトルで防御しつつ様子を見ていく予定だ。


 斧のサイズから言って攻撃力に自信有り気だし、雷火風重で回避重視も考えたのだが、盛り上がりの事も考えれば最初は防御も悪くはないだろう。


 完全に間合いの外から振られた斧は地面を割り、足元にひび割れを作る。


 迎え撃つ為右腕の土精と火精を選択、そのまま地面を殴りつけるとお互いの地面に対する術がぶつかり合って相殺した。


 片や闘技場のリングはひび割れ、片や燃える地面、エフェクトはそのままに効果は残らないようで良かった。


 正直チビチビフィルムケースで、術にどれ程対抗できるのか分らなかったので、これはいい実験になった。


 さて、今は防御シフト状態で重量も結構あるし、避けるより受け止める方向で戦いたいのだが、重精の斥力ギミックはどうやって使うんだ?


 フィルムケースは腰の左右にそれぞれ5本づつ並んでいる。


 右手側に陽・火・水・風・土 左手側に陰・雷・氷・重・石


 それぞれホルダーのようなものに挿さっていて、ホルダーには目立たないボタンがついている。


 更にはそのホルダーの繋ぎに小粒の術士の石がくっ付いている事から、もうボタンを押せとばかりだ。


 まぁベルト本体みたいに持続時間はそんな長いものじゃなかろうし、いざという時に押して一発かわす程度だと思っておこう。


 新装備を確認している内に、走って間合いを詰めてきた女を節尾剣で迎撃する。


 振り回した右の節尾剣を斧で跳ね飛ばされ、代わりに左の節尾剣で


尾剣術 縛


 女の足を取り、引き抜くと女の足にダメージが入る。


 武器は重量タイプのようで、防具は金属製の重装備ではなさそう?


 構わず振り回される斧を回避しつつ、


掃蹴術 駝懲


 ボディに一撃入れて、一歩下がる。


 「鳴け!紅首落!」


 女が叫ぶと呼応するように斧が紅く染まり、そこから怨念のような不気味なエフェクトが立つ。


 そして一振りする度に、引き裂くような多種多様な叫び声が撒き散らされて、耳に付いて集中力を奪われる。


 何をどうしたのか、油断ですらない何かの誤認。


 完全に間合いを見誤った所で、ボディに斧の刃が迫る。


 重精のフィルムケースのスイッチを押すつもりで、手探りで左腰のスイッチを一個押す。


 すると一気に周囲の空気が真っ白になり、視界を潰し、斧の刃も紙一重で掠った程度で済んだ。


 すぐに、目の前で白く輝く靄?は薄くなって消えていくが、どうやら重精の代わりに氷精を押してしまったらしい。


 氷精の効果はいまいちよく分っていないものの、とりあえず結果オーライだが、やはりもう少し装備のギミックに慣れないとどうしようもない。


 「掠っただけ……まだ本気を出すまでもない?」


 「いや、最初から本気だが?」


 「じゃあ、何で色変わらないの?」


 「ああ、こっちが最新式なんだ」


 「ふーん、勝ってるのにまたアップグレード……」


 何が言いたいのか分らないが、女の斧を持つ手に力がこもったのは分った。


 自分が使った氷精ギミックの所為か、妙に空気が冷たく感じるまま、


尾剣術 串


 地面から奇襲をかけるも、あっさり避けられる。


 そして、カウンターとばかりに大振りに振られる斧の刃先から大量の不気味なエフェクトが発生し、一帯を押し潰す。


 今度こそ重精を発動しダメージを抑えるが、気がつくと体のあちこちに不気味なエフェクトが張り付いている。


 「なんだこりゃ?」


 妙に手足が重く鉛でも巻きつけているようだが、動けない事もない?


 「それが呪術師の呪い!この斧は呪術の媒介!軽量でフワフワしたヒーローにはよく効くだろう!」


 そう言いながら斧を振りかぶってくるが、確かに自分の筋力ではちっと辛い。


 火精と雷精のフィルムケースを引き抜き、挿し変える。


 赤地に紫のラインと文様が入るが、何かちょっと豪華になったか?


 一瞬気がそれた所に斧が迫り、縮めた節尾剣で受け止める。


 しかし、筋力にもデバフがかかっているのか、あっさり押し退けられ尻餅をつく。


 そこに唐竹割りに大斧を振りかぶられ、避ける事も儘ならない。


 即座に右手の節尾剣を手放し、右腕の火精と風精を選択しながら拳で迎え撃つ。


 素手系のスキルのないヘロヘロパンチだが、斧に拳が当てればそれでいい。


 生産職の器用さを駆使して何とか当てると爆発が発生し、斧が吹き飛んだ。


 態勢を崩した女の腹部に蹴りを一撃、その勢いで後ろ回転して立ち上がる。


 ベルトのスイッチを押すと、アーマーから色が抜けて、パイピングだけが赤と紫に光る。


 どちらで蹴っても良いという事だろうが、とりあえず火精で一撃蹴りを当てに行くと、バックステップで回避された。


 しかし、蹴りの勢いそのままに回転し、雷精側で後ろ回し蹴りにすると、先に地面についた火精が発動。


 地面が燃えた上、更に勢いがついて雷精の蹴りが女にめり込む。


 バチバチと派手に紫のエフェクトを纏った女が吹っ飛び、そのまま地面を背中で摩って斧の横で止まる。


 ゆっくりとエフェクトが消えていくのを見送れば、多分自分の勝ちだろうと一息吐いた。


 地面が燃えて自分がダメージを喰らいそうなので、少し離れたほんの一瞬の間。


 女が消えていた。


 気がついた時には頭上から巨大な斧が迫り、対応しきれず横に転がるしかなかった。


 「不死身はあなた一人の特権じゃない!」


 「いや、待て!俺だって流石にすぐに復活する訳じゃないぞ!」


 「問答無用!」


 先程までより明らかに動きがよくなり、ぶんぶん斧を振り回してくる


 節尾剣で迎え撃つものの、ダメージになっているのかいないのか、全部弾き飛ばされ強引に振り回される斧の対応に追われる結果に……。


 元々重装相手は苦手だったが、重装じゃなくても自分の軽い攻撃を弾き飛ばす猛者は幾らでもいるというわけか。


 フェニックステイルならと思わなくもないが、現在メンテナンス中でしかも闘技場では使ってない武器だ。


 今ある手札で何とかしなければと、右腕の水精と風精を選択。


 振り回される斧に横から当てると霧が発生、視界を真っ白に染めてお互いを視認出来なくなる。


 すぐさま冑のギミックを発動、影と入れ替わりながら女を捜す。


 すると、すぐ近くで影が斬られた。


 もう一度ベルトのスイッチを押し、パイピングが光る。


 その光で自分に気がついたであろう女が距離をとって、再び霧の中に隠れようとするがそうはさせない。


尾剣術 縛


 節尾剣を巻き付け、それを一気に縮めて距離を詰める。


 カウンターの斧が迫るが、ここはもう当てた者勝ち。


掃蹴術 篇吟


 進行方向は節尾剣に任せてそのまま蹴りをぶち込むと、炎上する女。


 少しすると勝手に炎上が止まった。


 [不死鳥と不死身の戦いは一旦幕を閉じる。しかしまた紅い月の出る夜には紅き斧の怨霊が出るだろう。努々夜道には気をつける事だ]


 なんとも力任せのようで、嫌な搦め手を使ってくる相手だった。

次週予告


 壊れた筈の装備もサイーダのこんな事もあろうか!で解決したブラックフェニックス

  闘技での活躍も止まらず順風満帆かと思えた日々はある日突然に前触れも無く崩れ落ちる

   何しろ邪神の化身『復活』は確定事項なのだから

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