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43.機械人間

 フロリベスとベガの提案をあっさりと受けた蠍とレディ。


 全てを賭けた裏闘技となるらしいが、俺は蚊帳の外。


 何しろ敵最高戦力といえば、ベガだろう。フロリベスも強いが正面戦闘なら自分と五分と言うところ。


 何よりレディが高みの見物でフロリベスが闘技場に降りて戦うのは、プライドが許さないだろうとの蠍の予想だ。


 そうなると誰を出すのか、賭けるのはレディである以上、レディ側の切り札となる事は間違いないだろう。


 多分、ガイヤ……得意の火の精霊術は封じられたも同然だが、いけるか?


 まぁ、火精のみのプレイヤーなら今頃闘技場最強なんて言われてないか。


 準備までまだ多少時間が有ると言うのなら、その間自分のやる事は一つ。自己強化これに尽きる。


 一つはサイーダの発明品、風精緊急脱出装置に続いて届いたのが、重精、斥力装置。


 また癖の強い装置なのだが、一時的に全身から斥力を発して飛び道具を逸らしたり、落下時の落下速度を抑えたり出来る。


 ここまでなら使い所ありそうなのだが、防具を起点にしている為に、自分の武器にも影響がある。


 それはもう必死に掴んでいても離してしまう力で引き剥がされるのだが、フェニックステイルを収納する腰ホルダーもついてきて、これに仕舞っている内は防具の一部とカウントされるのか、吹っ飛ばない。


 簡単に言うと、ホルダーに武器を収納してからじゃないと使えないのが、斥力装置だ。


 風精とは逆にセットし、ベルトのサイズもだいぶ大きくなった。


 一応これで、更に攻撃は喰らいにくくなったと思うが、果たして上手く使えるかが心配ではある。


 そしていつも通り少し多めに研究費を振り込んで、向う先は【森国】。


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 -【森国】瘴気溜まり-


 「ぉ主もまめじゃぁ、他国の瘴気溜まりをこんなにまめに掃除する奴は少ないのぉ」


 「まぁ、好きでやってることさ。よくは分らんが、瘴気生物ってのを倒したあとはすこぶる身体能力が上昇する……ような気がする」


 「当然じゃぁ、瘴気は霊子を変質させる。それ故儂達には毒じゃがぁニューターの肉体は仮初じゃからのぉ、変質を受け入れてその分余力となるんじゃぁ」


 「そういう理屈だったのか!初めて聞いたんだが、ヒュムなら誰でも知ってる情報なのか?」


 「うんにゃぁ、儂が勝手にそう思ってるだけじゃ」


 ゲーム上プレイヤーの方がNPCより早くステータスが育つとされている理由がやっと判明したと思ったら、小さい爺さんの妄想だった。


 しかしこの爺さん【隠密】の頭領らしいし、【隠密】の専門は情報収集、それには歴史や世の情勢も含めての事らしいし、予想や妄想であっても侮れない。


 そして、やたらと密度の高い竹林の前で頭領と別れる。


 あからさまに入り口と分る竹林の切れ目から内部に潜入すると、すぐに漂う瘴気でまた邪神の尖兵と呼ばれる瘴気生物がいるなと分る。


 そこいらでフルフルと震えるだけの小型邪神の尖兵はどんどん潰しながら歩き、竹林の奥へ徒歩を進めると、またあからさまに広い空間。


 いつも通り、邪神の尖兵のいる場所には余計な魔物は存在しない。


 寧ろ出来ないのか?魔物も瘴気で変質したものとは言われているが、高濃度の瘴気はやはり毒?


 こんな毒の中でも活動できるプレイヤーが特殊な存在であって、そりゃ神によって送られても来るよなと、ゲームの設定に勝手に納得する。


 竹林のイメージ通り、今回の瘴気生物は虎型と見ていいだろう。


 四足歩行の獣の姿だが、前回より動きが何となく柔らかい気がする。ただ前回も首だけ急に伸びてきたりしたし、獣と同じ動作であるとは思わない方がいい。


 一定距離に入ると反応して、ゆっくりとその距離を維持するように動き出す。


 正対した状態から、横に回るようにゆっくりと移動するのを自分はその場で見据えながら少しづつ角度をあわせていく。


 一歩こちらに踏み出したと見えた時には、姿が消える。


 左右を見回すも、いない?


 意味の分からぬ状況に、早速斥力装置を起動。


 自分の周りに落ちる影が濃くなったと思った瞬間、真上にいた虎が、何かに押し出されるように自分の横に着陸した。


 そのまますぐに、風精緊急脱出装置を起動、適当に直線にすっ飛び逃げた。


 いつもならハードランディングになる所、斥力装置の重精効果で適度に柔らかい落ち方をして、両方の装置の起動を止める。


 両手に武器を引き抜いて再び虎と対峙、結構なスピードタイプであり、奇襲をかましてくると分った以上、ここは果敢に攻めていくか。


 まずは左手のフェニックステイルで、


尾剣術 串


 無数に生える土の棘で虎を腹から突き破り、体積を一気に減らしてやる。


 相変わらずこの瘴気生物と言うのはダメージに無頓着と言うか、回避や防御と言う行動をあまり見せない。


 体積が減れば見てダメージが分るし、与しやすい敵なのに、倒すだけで身体能力が上がるのは、自分にとってはボーナスみたいなもんだ。


 そんな事を思っていると、今度は正面から走り寄ってきたので、右手のフェニックステイルで迎撃。


尾剣術 円


 雷精を纏わせながら振り回せば、また切り刻まれて体積を減らす虎、触れれば危険な相手だとは知っているが、接近タイプのプレイヤーじゃなければ、まずどうと言う事はないだろう。


 すると虎の全身から帯が解けるように垂れ下がる。


 これが真っ黒な敵じゃなければ、丁度縞の抜けた大型猫科動物になっているだろう。


 そのまま動かないので、じっと観察していると……帯が地面に伸びてる?


 気がついた瞬間横っ飛びに逃げるが、あっという間に足に巻きついてきた。


 すぐさま戻したフェニックステイルで、リボンのような黒い帯を切り裂き脱出。


 次から次へと襲い掛かってくる帯を走ってかわし、少しづつ虎へと距離を詰めていく。


 近づいた所で、右手のフェニックステイルを本体に叩き付けると、いつの間にか引き戻し、収束した黒い帯で迎え撃たれ、絡み合う。


 雷精効果で縞柄が見る見る溶けて、蒸気のように瘴気を発しているが、構わず他の帯で襲い掛かってきた。


 事ここに到っては、万事休す。


 何しろこちらは空いてるのがあと一本、敵は数本ある。


 やむを得ない、ここは一つ賭けに出ようか……。


 左手だけでベルトのフィルムケースを引き抜き、風精と氷精を挿しこんで起動。


 すぐさま風精側のスイッチを押して、


掃蹴術 鬼憂


 切り裂くような範囲攻撃でまとめて迎撃。空いた隙間に正面から突っ込む。


 氷精側のスイッチを押しながら、


掃蹴術 篇吟


 ジャンプしつつ、虎型の瘴気生物に突っ込む。


 あたった瞬間一震えして、動かなくなる虎型。


 それまでどんなに動かなくても表面は波打っていたのに、それすら止まる。


 左手のフェニックステイルの土精をオンにして叩きつければ、砕けて核が露出した。


 そいつを砕くと、完全に動きの止まっていた帯や残っていた肉体が全て臭い蒸気を発して消えた。


 竹林から出ると、やはり頭領の姿はない。


 「ベガにしてやられたそうだな?」


 「ああ、俺の攻撃は何にも効かなくなっちまった」


 何も言わず、槍を地面に突き立て、腰の刀を引き抜く。


 いきなり前回の続きからと言う事だろうか?やはり刀が得意なのか?もしくは一対一の時は刀の方がやりやすいとか?


 「今回は槍の術は使わないのか?」


 「アレは奇襲用だ。今回は力押しで行くぞ?今の内に色を変えて置いた方がいい」


 「白と緑じゃ気に入らないか?」


 「それならそれでもいいが、確か紫の時の方が、反応速度は良かった筈。多分そっちの方がいいだろう」


 敵なのにちゃんと攻略方法を教えてくれるとか、いい奴過ぎるんだが、何で邪神教団なんかにいるんだコイツ?


 そんな事を考えながらも、フェニックステイルから雷精を引き抜き、雷精風精にセットし直す。


 緑地のアーマーに紫のパイピングと模様が浮かび上がると、刀を腰から後ろに構えるキジンが飛び込むように突っ込んできた。


 確かに雷精の反応速度じゃなきゃ、あっという間に轢き飛ばされていただろう。


 転がって回避しつつ、右手のフェニックステイルに石精をセット。


 正直な所、石精は案山子を殴っても何も反応しないし、使い所が分らないのだが、ベガを殴った時は動きを阻害しているようにも見えたし、少なくとも重く硬くなるのは間違いない。


 ただ通り抜けただけで、寿命が縮む思いのキジンの一撃を受け止めるなら、石精しかなかろう。


 振り向けば、何をどう操作したのか、鎧に隙間が出来てそこから蒸気を吹き出すキジン。


 その隙間を戻すどころか、そこから緑の発光ラインが現れ、尚更未来型鎧にしか見えない。


 距離が開いているにも関わらず、その場で刀を素振りしてきたので、飛んできた緑のエフェクトを回避。


 普段から自分がやっていることだ。風精を使った中距離範囲攻撃。


 キジンの次の振りが来る前に、


尾剣術 串


 土精による範囲攻撃で、キジンの動きを止める。


 更にそこから、思い切り石精のフェニックステイルを叩き付けると、肩口に喰らいながら膝を折るキジン。


 やはり、更にもう一発と言う所で、強引に突進してきた。


 態勢を変えず、いきなり突っ込んでくるのは背中の噴射ギミックだろう。


 一度見ている攻撃なので、何となく感覚で横に転がるように回避し、寧ろキジンの止まり際に右手のフェニックステイルで追撃を加えて行く。


 ある程度読んで回避しようとしたキジンだが、今度は左足にヒットして、その場に膝をつく。


 「中々に厄介な攻撃のようだ」


 「褒めてもらってありがたいがね。ベガのように耐性を身に着ける相手じゃ無けりゃ、ジワジワと削らせてもらう」


 キジンの兜の隙間、目の辺りが赤く光り、いくつものラインが不規則に点滅している。


 「無理だな。読みづらい軌道ではあるが、既に演算は完了した。ここからは最低限の動きでその得物は回避させてもらう」


 言うが早いか、肩まで振り上げた刀を振り下ろしながら突っ込んでくる。


 範囲攻撃なのか直接攻撃なのか、絶妙に分かりづらいタイミング、フェニックステイルでカウンターを狙うと、宣言どおりあっさりと回避され、袈裟切りに振り下ろされた刀からは緑のエフェクトが飛んできて吹っ飛ばされる。


 元々素の耐久力が低く、装備の防御力も知れてる自分には重すぎるダメージ。


 相変わらず一発で状況をひっくり返されるのだから、やってられない。


 でもまあ、このままやられる訳にも行かないので、ゆっくりと立ち上がる。


 まだキジンに見せてない手札と言うと、斥力装置か?


 両手のフェニックステイルを投げ出し、右手のまぜーるくんナックルに雷と石をセット。


 「諦めたのか?ではトドメと行こう」


 そう言って、またさっきの異常なスピードで突っ込んできたので、近くにあった地面から生える石を右手でぶん殴る。


 すると、磁力を帯びた石にフェニックステイルを吸われ、張り付き更にキジンの刀も……。


 刀どころか全身を石に吸われて張り付くキジン。


 そこに雷精のスイッチを押して、蹴りを見舞う。


 するダメージで大きく跳ね上がるキジン。やはりこれまではやせ我慢だったかと思うと同時に、フワッと舞い上がる霊子に気がつく。


 自分の装備を見回すと、片足の装備が壊れていた。


 そう言えば、さっき邪神の尖兵に巻きつかれていたことを思い出しつつ、残っている方の足で風精を叩き込む。


 当然ながらもう片方も破損し、両足裸足の状態で、その場に立つ事になった。


 しかし、ここで決めなきゃ次はどうなるか、分らない。


 まぜーるくんナックルに火と風をセットしつつ、ぶん殴る。


 爆発と石に挟まれ、ダメージを負ったキジンが激しく痙攣し始めた。


 明らかにヒトのものとは思えない異常な痙攣に、若干ひいたが、今がやる時!


 もう一発殴ろうと振りかぶった瞬間。


 「ダメージ限界 コア 保存ヲ 優先 自爆シマス」


 「へ?自爆?」


 思わず呟いた瞬間、自分はどんな顔をしていただろうか、反射的に斥力装置を起動したような気はするが……爆炎に飲み込まれ意識が飛ぶ。


 気がついた時には目の前に爺さんの顔。


 「酷いやられ様じゃのぅ」


 「あ……あ?あぁ、死に戻ってないのか」


 「うむ、爆発音のあとお主だけ残ってぉったから、薬で回復だけはしてぉぃたが、装備は駄目そぅじゃの」


 周囲を見回すと、フェニックステイルだけは原形を留めていたのでしまう。


 近距離自爆の影響で鎧の大半が破損。足の装備は消えてしまったし、まぜーるくんナックルにも無理をさせてしまった。


 これは一旦フルメンテに出さなきゃどうしようもない。


 アイテムバッグから市販の何の効果もない靴を出して履き【森国】から引き上げる。

次週予告


 自爆によって倒したのか逃がしてしまったのかモヤモヤとした勝利

  しかしその勝利の代償は小さくない

   装備を直してもらう為発明家に会いに行った先で『不死』の化け物と戦う

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