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40.ヒーロー達

 「悪いが、俺にも都合がある。そういつもいつも闘技に参加できない」


 「そうは言うが、お前が四天王の一角を倒しちまった事で、俺達の闘技のパワーバランスが狂っちまったんだ」


 一瞬四天王という言葉が出てきて、心臓が大きく跳ねたが、今目の前にいるのは、前にも話した事のある緑と水色のヒーロー達だ。


 またあのヒーローごっこのような闘技に参加しろという要請なのだが、生憎自分はそこまで暇じゃない。


 そしてこいつらの言う四天王と言うのは、ついこの前戦った夜を模したようなローブの術士の女の事らしい。


 他にも蠍のよな尻尾を持った女や、チェーンソーを持った女に、チャイナドレスの女などいるらしいが、自分は邪神教団の四天王でいっぱいいっぱいなのだ。


 しかも四天王とか言いながらまだ3人しか会ってないし、最近はやられっぱなしで、気持ちも焦るばかり。


 正直闘技に参加する気分ではない。


 「悪いが、マジできっぱり断らせてもらう」


 「まあそう言うなって!予定はお前に合わせるからさ。それにあの色が変わるモードチェンジは、相当人気なんだぞ?コロコロ戦闘スタイルが変るあの仕掛けがどうなってるのかはさっぱりだが、中遠距離用の鞭剣と必殺のキックって、狙いすぎだろ?好きなんだろ?ん?」


 「偶々そうなっただけだ。それにこの前のだって、お互い目を潰しあったから、自爆して何とか勝ちを拾っただけだし、特別俺が強い訳じゃない」


 「いやいやいや!四天王の一角を倒しておいて、強くないなんてそんな訳なぁ?」


 「だから四天王四天王って、なんなんだよそのネーミングセンスは!悪党は取り敢えず四天王決めなきゃ組織がまとまらんのか?」


 「いや……え?どうしたんだよ」


 そこで、最近表の自分の窓口になっている白い騎士が横から口を挟んできた。


 「そいつは最近四天王って言葉にナーバスなんだよ。そう連呼しないでやってくれよ」


 「別にナーバスって訳じゃ……」


 「何でまた、そんな言葉に?」


 「そいつは、クエストでずっと裏の組織邪神教団と戦ってんのさ。そしてそこの四天王ってのが、そいつでも手に余るガチの強者や策謀家の女で、まあここ最近は尻尾巻いて逃げる度にナーバスになってんだよ」


 「うるせぇな!罠を正面から踏み破れるような強さが俺だって、欲しいさ!でもな、闘技で見せた以外の隠し技を駆使してもあざ笑うかのようにいなされ、力を奪われる俺の気持ちにもなってみろ」


 「いや~ちょっと待て!お前裏の組織と戦ってんのか?マジで?マジでヒーローやってんのかぁぁぁぁぁぁぁ?」


 何か急に切れ出した緑のヒーローの声が、肩のスピーカーで増幅されてやたらうるさい。


 「ヒーローなんていいもんじゃない。ただ怪しげな男から依頼されて、改人とか言う無限に回復する体質の連中と戦わされてたのさ。それが四天王ってのが出てきてからは、逃げて逃げて。どうしたもんだか袋小路って訳さ」


 「か、か、か……怪人だとぉぉぉぉぉぉ!いいな~いいな~マジかよ怪人と戦った挙句四天王に苦戦してるんだな。分ったちょっと待てよ大至急招集かけっから!!!」


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 「と、まあ依頼人から明かしてもいいと言われた情報は以上だ」


 結局大勢集まったヒーローと悪の組織風の奴等に邪神教団の概要を語る羽目になった。


 一応、蠍に許可を取りにいったのだが、秘密は明かすなと言うのを期待したにも関わらず、あっさり情報開示を許可してくれた。


 隠さなきゃいけないのは聖石とか言う願いがかなう玉の話と隊長の動向位で、実際自分も大した事を知らないと、話している内に再認識した。


 そして、集まった連中は一様に言葉を失い、頭を抱える者がいれば、腕組みをしながら独り言を言う者もいる。


 幾らヒーローコスプレして闘技をやってる奴等と言えど、こんな話をまともに聞かないだろう。


 自分だって成り行きで巻き込まれてなきゃ、幾ら説明を受けた所で意味が分らなかった筈だ。


 そこで、闘技大会の時も仕切っていた赤いヒーローが口を開く。


 「まさか、そんなクエストが存在したなんてな。平等なる破滅を望む教団か……」


 続くように、四天王の一人、蠍の尻尾の女が続ける。


 「悲しいわね。多くの苦しみと悲しみを抱える者を屠らないといけないなんて」


 また別の赤いヒーロー、マイクのようなマスクから緑のエレキギターのチームのリーダーだろう。そいつが、反発するように大きな声で叫ぶ。


 「だとしても、他者に迷惑掛ける者を放っておく訳にはいかない!」


 そしてまた、別の四天王、ホッケーマスクの女がそれに反論する。


 「でも、誰に迷惑をかけてるというの?彼は依頼を受けて教団の邪魔をしている。それは分る。でも被害者が名乗り出てくる事はない。だから私達は誰もその存在を知らなかった」


 そこで、一旦静寂が訪れる。


 確かに、自分は依頼で邪神教団と戦い散々邪魔をしている。


 そいつらが狙っているのは謎の願いがかなう聖石だが、それは使用済みと言う事らしいし、何故邪魔しなければならないかも分らない。


 ただやり方が荒っぽく、横から奪い取るような真似をしてきた改人達とそれを命令したであろう四天王達は明確に俺の敵と言うだけの事。


 その後も因縁が続いて、招待されたかと思われたらはめられ、逃げるの繰り返し。


 更には四天王キジンは何故かもっと強くなれと言わんばかり。


 正直、何で戦ってるのか分らないのは自分自身なのかもしれ無いという事を今はっきりと自覚した。


 ここまで来たら、蠍にちゃんと話を聞こう。そして四天王を倒す覚悟を決めよう。


 「そういう事だ。アンタ達に戦う理由はない敵だ。しかも敵は無限の再生力を持ってる化け物だし、打つ手もないだろう?」


 それだけ言って、立ち去ろうとすると、肩に手を置かれ引き止められる。


 「待つんだブラックフェニックス。そうやってお前は一人で戦おうというのか?確かに俺達は直接被害を被ってはいないかもしれない。だが!なら何故お前は戦う?本当に依頼を受けたから、それだけか?」


 「最初は、な。今は何故か因縁が出来ちまったからだ。四天王フロリベスには一泡吹かせてやらにゃならんし、四天王ベガは俺の所為で強化しちまったんだ。落とし前をつけるさ」


 「ならば、俺達も手伝おう!」


 「何でだよ!」


 「そりゃ仲間だからだろ?同じBグループで戦った同士!優勝した戦闘員Aを一緒に逃してやった。お前の正義の心を信じる!共に戦おう!」


 「いやどうやってだよ。敵が出てこなきゃ何も出来ないし、何より無限再生する化け物と戦う手段があるってのかよ?」


 「あるよ」


 そろそろノリで物を言う奴等に嫌気が差してきた所で、聞き覚えのある声が響き、一斉に全員の視線が集まる。


 そこには、闘技場最強とプレイヤー間では名高い、ガイヤが立っていた。


 自分はこの前のフロリベスの招待以来だが、何故こんな所にいるんだ?


 「アンタはガイヤだな。俺達も闘技場プレイヤーの端くれ、アンタの事は知ってるし尊敬もしているが、今は悪と戦う俺達の問題だ」


 何故か勝手に代表として話す仕切り屋の赤いヒーローだが、確かにこいつらよりはガイヤの方が因縁が有るだろう。


 「何言ってんだい?私の方がよっぽど関係者だよ!うちのスポンサー諸共四天王に狙われてんだからね。そしてアンタ達だって悪の組織がいるだろうに」


 あからさまにうろたえるヒーロー達をよそに、ガイヤに尋ねる。


 「それで、何でまたガイヤが来たんだ?またフロリベスから招待でも来たのか?」


 「いいや、ただうちのスポンサーがそろそろ嫌がらせに飽き飽きしてね。潰すつもりらしいのさ。それでアンタにも声を掛けろって言うお達しでね。まあ代理を行かせても良かったんだが、私はアンタと話をしたかったんでね」


 「ほう?それで何を話したい?俺は依頼で奴等と戦うだけで、大した事は知らんぞ」


 「別に私はそういうのは興味ないんだよ。興味があるのはただ強さのみ。何で闘技場で本気を出さないんだい?」


 「そりゃ、他に戦う相手がいるんだ。手の内を全て晒す訳にはいかんだろ」


 「ふん!でもその手の内ってのも全部使わされて、敵を強化しちまったんだってね」


 「情報全部筒抜けかよ。それで何だってんだ?」


 「アンタの改人狩り手伝ってやるから、闘技に参加しな」


 「ガイヤまでそんな事言うのか?」


 「うちのスポンサーはそれはもう闘技が好きでね。アンタ達のヒーローショーにも興味はあったらしい。それでブラックフェニックス!アンタが正式参戦するならそちらの闘技にも資金提供するし、色々と融通してもいいとさ」


 そこで、ヒーロー達がざわめく。


 ガイヤのスポンサーが資金提供するというのはそんなに凄い事なのだろうか?


 さてどうしたものか?こういう時の魔法の言葉はアレだ。


 「じゃあ、まあ一旦持って帰って上司に……」


 「アンタの依頼主には既に話は通ってるよ。まずは改人の数を減らして、その上で四天王を一人づつ潰すってさ。何か知らないけど、結構切羽詰ってるみたいだよ?アンタの依頼主ってのも」


 まじか?何かいつも涼しい顔してたが、やっぱり最近の自分の連敗で計画が狂っちまったのか?


 それなら、共闘も已む無しだが、自分はそもそも誰かと一緒に戦うのが得意じゃない。


 「一体どういう作戦で行くつもりなんだ?」


 「それはこれから説明する。それでそっちのヒーローと悪の組織達も参加するのかしないのか?参加するなら改人に対応できる方法を見せてやるよ」


 「さっきも言ったが、我らはブラックフェニックスの正義を信じている。当然共に戦おう!」


 と言う事で、話が決まってしまった自分とガイヤとヒーロー達の共同作戦。


 しれっと、白い騎士も参加するそうだ。


 まあ真っ白い軽装鎧に銀仮面とか、見ようによってはヒーローに見えなくもない。


 いや寧ろ、少女番組の助けに入ってくる王子ポジか?


 まあ本人に言ったら嫌がるだろうから、ここぞという時に取っておこう。


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【王都】アジト-夜-


 「と言うわけで、アンタの差し金で共闘する事になったんだが、俺は本当に何も知らないまま戦ってた。何で俺はあいつらと戦ってるんだ?」


 「やっと聞きに来たか。本当はもっと早くに話したかったんだがな。邪神教団の目的は邪神の化身の復活」


 「かなり前に聞いた事がある気がするな。何かでもそれは止められないんだろ?」


 「ああ、そういう予言が出てるからな。だが時間を稼ぐなり、少しでも弱体化した状態で復活を迎えた方が、いいに決まってる」


 「予言て、そんな確定的な予言なのか?」


 「ああ、かつての12英雄の子孫の予言だからな、間違いない。それに向けて世界の上層部はどこも準備を始めてはいるが……」


 「なんだよ。ヤバイ敵なら協力して戦うしかないだろ?」


 「ああ、だが敵がどんな姿で復活するのかはよく分っていないのだ。一応能力だけは伝えられててな。酩酊させる霧、空中を泳ぐ力、攻撃を防ぐ透明の壁、強固な壁すら破壊する衝撃、無数に手下を発生させる分裂能力、異常に硬い甲殻、瞬間移動、完全隠蔽、必殺の剣、遠くの標的を消し飛ばす破滅の光、炎を吹き出し加速する。そして何より誰も近づけないような濃い瘴気を常に纏っているとか」


 「…………はぁ???何だその理不尽の塊みたいなの!」


 「正に理不尽さ。でもそんな邪神の化身を時に倒し、時に退け、時に負けて今があるのだ」


 「そんなのが復活するって、完全に倒す事が出来ない敵ってことなのか?」


 「いや、12英雄達は倒すには倒したが封印と言う形を取らざるを得なかったんだ。あまりにも強大な敵を封印し、その功で邪神の化身の核から作られた何でも望みの叶う聖石が作られ、そして英雄達の子孫が守っていたのだ」


 「なんともまぁ、壮大な話に巻き込まれたもんだ。つまり俺が邪神教団の邪魔をする事で、その理不尽の塊みたいな敵の復活を遅らせたり、弱体化させる事が出来るって訳だ。じゃあやらなきゃな」


 「いいのか?お前の望む、暗闇で他者を傷つけてほくそ笑む連中を痛めつけるような仕事じゃないぞ」


 「まあ、そんな仕事はいつでも出来る。だがこっちは何でか知らんが、切羽詰ってるんだろ?」


 「ああ、隊長の奴が順調に聖石を集めてくれるからな。予言によると全部揃った時に、復活するらしい」


 「じゃあ寧ろ集めさせるなよ」


 「あの異常な逃げ足の男に持たせておくのが一番安全だと思ったんだよ。ところがあの性格の割りに、結構仕事ができやがる」


 「おいおいおい、他人を舐めて、足元掬われる。それも依頼を順調にこなした所為でって、やっちまったな」


 「ああ、まあこうなったら向こうはこのまま突っ走らせて、こっちはこっちで邪神教団の野望を邪魔してやろう」

次週予告


 ヒーロー達に裏の顔を知られてしまったブラックフェニックス

  責められるのかと思いきや乗り気で協力してくれると言う正義と悪の混成チーム

   散々煮え湯を飲まされてきた邪神教団に『同時攻撃』を仕掛ける

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