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40話 壊わされた心

 学校に不審者が侵入してきた。


 敵地に飛び込むことによる緊張と私に対する敵対心ですぐに分かる。

 被害が出ないように生徒会室で迎え打つ。


 距離的に異能かどうかまでは分からないが敵は私の位置が分かるらしい。


 無言で授業を抜け、生徒会室で待っていると敵対者の匂いが消えた。


 匂いが消えた?

 私の鼻は相手の本質を見抜く。匂いがしない人間はそれこそ何も考えていない何も()()()()()()ような人間だけ。


「はじめまして。私はキョムです」


 気配にすら気づけなかった。無表情の女が扉の隣に立っていた。


「ここまで無感情な人間は初めて会う。何が目的だ?」


 近くに来たから分かるが、この女は強い。

 圧倒的な暴力。女の心の奥底の根底となるものが無感情に抑えられ、微かな匂いしか出させていない。なんとなく因果が分かった気がする。


 感情を抑えることで力を得ているのか。異能とはまた別の力っぽいがどういう力だろうか。


 異能と関係なく感情によって力を変化させる人間か。これで二人目だ。


 二人目? 一人目は誰だ?


「後数分であなたはここから落下します。それ以外はありません」

「なるほど、お前にはそれができるか?」


 全魔力を使い教室全体を凍らせた。おそらく、あの女にとってこの程度の攻撃は無意味だろう。

 生徒会室は三階にある。当たり所にもよるが死ぬことはない。


 諦めるか。窓を開けて息を大きく吸い込んだ。


 この匂いは――


「時間です」


 氷が粉砕され、女はわざわざガラスを割ってから私を突き飛ばした。


 不思議と恐怖はなかった。

 ここから落ちれば、私の心を埋めてくれる存在が助けてくれる。そう分かっていた。


 久木和希。彼こそが、私に足りなかったピースだった。


 ――――――


 私は由宇に大事な記憶を奪われていた。


 幼少期、私は体が弱く病院に通っていた。

 当時は普通の女の子で、周りから隔離する意味も込めて地方で養生することになった。


 和希とはその時に出会っていた。お互いの身分を知らない状態で将来も約束して……


 和希は頭が良くないから覚えていないかもしれないが、私たちは所謂『真実の愛』で結ばれている。私があいつのことが好きになってしまったのは運命であり避けようがない。

 和希の匂いを思い出すだけでも安心できるというのに服を貰ってしまった。


「お嬢様。大丈夫ですか?」

「和希に会いたい……」


 和希は私の思いを受け入れてくれるだろうか?


 

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