勇者召喚の悲劇
「魔王を打倒できるものをここへ呼び寄せ給えー!」
魔法陣が輝きを増し、空から一条の光が差し込んだ。
朧げな影が像を結び、ひとりの人物が浮かび上がる。
「「おおぉ! 成功だ!」」
見守っていた騎士や魔術師からどよめきが起こった。
「よくぞおいでくださいました勇者さm―『パンッパンッ!!』―あっ?」
何かが破裂するような音がした瞬間、王女の胸に真っ赤な穴が2つ開いた。
「ぐほっ……ごぽっ、がほっ」
「はっ、姫様ー!!」
胸を押さえて呆然としている王女の口から、どす黒く泡だった血があふれ出す。呼吸ができないのか、しばし喉を掻きむしった後に、王女が倒れ伏した。
何が起きているのか理解できない集団の前に、カランと円筒状のものが投げ入れられた。
次の瞬間、まるで小型の太陽が出現したかのような閃光と、耳元でドラゴンが叫んだような爆音が辺りを埋め尽くした。
頭の中を直接かき回された様な感覚に周囲すべての人がうずくまり、中には嘔吐している者もいる。
召喚された人物は倒れた人々の間を歩きながら、胴体に2つずつ、真っ赤な穴を作っていく。ちゃちな鉄板では防ぐこともできない。
都合40個、20人の人間すべてに穴を作り終えた男は、一息ついて声を発した。
「んで、こいつら一体何なんだ?」
後に歩兵師団を組織・運用し魔王を打倒する勇者の誕生である。
戦闘中にいきなり景色が変わったと思ったら、高らかにしゃべりだす人や、抜剣しそうな人や、変なローブを着ている人に囲まれていた。怖いなぁ。