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プロローグ…始まりに告白される奴大抵クズい

「好きです!結婚してください!!」

「……断る」「なんで!?」

「俺──男やぞ?同性にコクられて喜ぶ趣味ねぇわ!マジ有り得ん。きっしょ!!つーか吐く。もう無理。吐くわ。…おぇぇぇっ!!」

「!?!?ま、マジで吐いてる……ッ!?え゛っ?ぇえ゛えっ゛!!?」

オロロロロロ~~~ッ!と、道端で昨日の晩御飯を吐く少女──いや、()()はもう入学してこの方何度目かの“同性からの告白”に断りの返事と…嘔吐をもって否!を突き付けている。

片やそんな事は知らんとばかりに無神経にも一方的な愛の告白をする無知無謀無神経が服を着て歩いているバカ野郎(純朴少年)は…偶然廊下で擦れ違った少年──戸塚(とつか)佑樹(ゆうき)16歳は今月でもう何度目になるかも分からない同性からの欲を孕んだ瞳で見詰められ限界が来るとこのように何処だろうと吐くようになった。──想像してみて欲しい。自分は対して意識しているわけでもないのに同性から“性的”に見られ、あまつさえ“いけるかもしれない”なんぞ思われ一方的によく知りもしない同年代、同性の男に告白される……悪夢だろ。それか嫌がらせだな!精神的に弱らせて病ませようとする俺アンチの仕業…!しかもどーみても脈無しと分かる彼女持ちの相手に告白…気持ち悪い。果てしなく気持ち悪い!!吐瀉物の一つや二つは吐きたくなる。

…逆にえっ?と言いたくなるのはこちら側だ。

「…俺、男なのは──知っているよな?」

なあ、と吊り上がったアーモンド形の形の()で睨む。

「い、いや…その、ワンチャンあるかとおも…」

「あ゛あ゛んっ゛?ぶっ殺すぞ、てめぇ!!」

「ひっ!?」

みなまで言わせず掴み掛かる…いや、佑樹は身長低いから告白してきた相手にアスファルトの上で正座させ掴み掛かっているから出来ることだ。

あどけない少年…茶髪短髪の少年は身長175㎝で、佑樹の身長は158㎝…これも()()同性からの告白が絶えない理由の一つだ。華奢な体型に小柄な小動物を思わせるような身長。その上瞳はぱっちり二重の大きな黒目、小さな薄い唇、赤色ほっぺ、小顔美少女。…サラサラな白銀のハーフアップ、編み込んである髪型も彼にとても良く似合う。

本当()()()()()()美少女で通ってしまう白磁の陶器染みた肌、きめ細かくシミ一つない綺麗な手。線が細く“女の子”と見間違う小さな手…だが、良く見れば同年代の同じような背丈の女の子と比べると分かるほどに意外とゴツゴツしているのだ…当たり前だろう。佑樹は“男の子”である。

それに声はアルト寄りのテノール。…流石に間違えないだろう。

それに──

「大体トイレは男子トイレを使っているし、小便は普通に小便器でしてる。あんたの事は知らんが。…小学校が一緒の奴は慣れたものでトイレ一つでいちいち騒がんし、“女子が男子トイレに来ている!”と叫ばれる事もない。本当こう言うのやめろ。俺は普通に男だし、好きな相手も女…と言うかかわいい彼女にこの現場見られたくないんだわ。……心配させっからあいつに“男に彼氏を盗られる”と一瞬たりとも過って欲しくない。目なんて逸らさせねぇ。あいつは“俺だけ”の女だ。将来の結婚の約束だってしてんのに。不安に思って病んで引きこもりになって自殺したらどうしてくれる!?おめぇが責任取れんのか!!ああっ!?」

──そう、佑樹はどんなに可愛くとも男なのだ。

…いや、その胸部…B75㎝はあるお胸の破壊力──いや、これも生まれつきのものだ。華奢な手足に乳房…、下半身に()はなく、男の子の性器。乳房はあれど子宮はなく、当然に文字通り“乳”を与える用途では使えない…。そもX線検査でこの乳房にあるのは脂肪()()…、と分かったからな。夢を見るのは勝手だが押し付けないでほしい。

「は…っ!?彼女…ッ!?ひぃぃ~~~っっ!?」

泡を食って気絶した男の襟を雑に離してふん、と鼻息荒く吐き捨てて彼女の家に向かった…。

あ、(くだん)の彼女は──佑樹の幼馴染みで、二軒隣の“小鳩(こばと)家”の三女、小鳩(こばと)菜月(なつき)。16歳の黒髪ショートヘアー、180㎝の長身、貧乳…いや、まな板だったのは3年前の5月2日までだったな、確か。

キリッとした細長い黒目、すらりと伸びた手足、整った顔立ち、凛とした雰囲気を常に纏うまるで宝塚の男役のような“絵に描いたような美形(イケメン)”──“かわいい”と“清楚”と“綺麗”だとすると、10人中10人が『綺麗』な男よりもカッコいい女の子…そう言われる。佑樹からしてみれば余計なお世話だ、勝手なイメージを押し付けるな、と声高に反論したい。

そりゃ、佑樹が将来を約束した女性は()()()確かに美形。今すぐ宝塚に一人混じっても違和感ない。

…ただ、本人の内面も普段の仕草も知る者からすれば──愚問。愚問である!

「…今迎えに行くからな、なっちゃん!」

かわいい彼女の笑顔を脳内に反芻しながら後10歩もしない距離を足早に向かって行く。

……。




「──てなことがあったんだよ、斎賀(さいが)。有り得んほどキモい話だろー?」

「…ああ、うん…まあ、そうだな。入学式が4月でまだ一月と経っていないのに男子5人に告白された偉業を持つ“オタサーの姫”」

「誰がオタサーの姫か!なったことねぇーわ!?てか誰が言ってんの、それ?!」

「え?」

「え?」

「「みんなだろ」だよな?」

…そんな事を教室で駄弁っていた4月31日の末日である。

因みに斎賀(さいが)──黒髪おかっぱの戦の細い長身の美形(イケメン)()()()()()()綺麗系美人。ジャ○ーズなら間違いなくキムタクではなく亀梨タイプ。ストイックに何でもこなす印象があるが…わりかし雑で冗談も揶揄(からか)いも親しい相手なら平然とする気さくな人柄が男女共に好まれている。

斎賀(さいが)鉄治(てつじ)──佑樹が中学に上がる頃にクラスに親の仕事の都合で編入してきた転入生。それからの付き合いだ。

「…その愛しの彼女さんは何処に?一緒に登校したんだろ。」

「日直の日誌を受け取りに職員室行った」

「ああー、そうか。それより、お前5月1日 (明日)から公式配信される『箱庭物語』は遣るのか?」

「ああ、やる予定だ…と言うか俺はゲーム大会の優勝賞品で、なっちゃんは懸賞で当てた…と言ってたな?斎賀だって遣るつもりだろう。そう訊くって事は」

「ああ、勿論。」

『箱庭物語』──完全没入型VRデバイス“タナトス”を用いて、VRゲームは多種多様に存在し、種々様々、多種多様に変化、具現化、細分化したこれら“VRMMOゲーム”はこの時代2300年代の人間にとってはごく当たり前のものとなっていた…。

娯楽、医療、文化。

時には病室から出れない患者の心を癒し、VR技術を用いての手術や診察・診療の研修、実習に使用されたり、VR会議したり…。

ゲームはせず、通学に使うだとか、バイトや会社の会議でのみ使いたい場合はヘッドセットのような物を左右の側頭部に着け瞼を閉じれば脳内にVR空間が展開される。

予め登録された職場や学校、バイト先にホノグラムを出現させる…半透明のそれは使用者に代わり動き、しゃべる。

物を掴むだとかは出来ないが…対応している機械を動かし調理したり、配膳させたり、客のレジ打ちをサポートしたりできる。

会議の場合は電子ボードに文字を書き込んだり、プレゼンしたりが可能。

…そして、今佑樹と斎賀が話していた『箱庭物語』は公式配信を明日に控えた“タナトス”の産みの親──エンタープライズゴルゴタ社、そこの期待のVRMMORPG…その最新作。ネットや駅の改札、電車内で散々に宣伝されたゲームソフト。

オンラインゲームであるが、ソロプレイ、役割プレイ(ロールプレイング)に徹すのもよし、生産に生きるも何もせず釣りやカジノで散財するもいい。そんな自由度高いゲームとなっている。

従来の“キャラクタークリエイト”──所謂(いわゆる)初期ステータスの割り振り、職業(ジョブ)種族(イース)の選択、生産ならどれを重視するかとかそう言ったやつ──を手動(セルフ)で一つ一つ決めるのか、

はたまた半自動半手動(セミオート)で大まかに用意された詰問の中で選んでいくタイプ、

それから完全運任せ(マニュアル)でまるで昔あったSFCのソフト、ラン○リッサーのような光の女神的な存在に詰問され(フルボイスで)答えていく…そんなラノベ擦られ転生の間のような場所で行う…。

正直佑樹の心情的にこのマニュアルを選択するだろう、と本人も斎賀も分かっている。

「因みに俺はセミオートで遣ろうと思ってる」

「ふぅん」

「ふぅんって…お前…」

「興味ねぇー」

「佑樹はマニュアルだろ?」

「ああ」

「知ってた」

「…なら訊くなよ」

「暇なんだわ」

「……ホームルームすら始まってねぇが?」

「帰りたい」

「俺もだわ…なんか眠くなるよな。春のぽかぽか陽気だと」

「おぅ、正にそれ。眠い!帰りたい!そしてゲームしたい!!」

「鳥籠世界?」「ああ。明日の予習代わりに」

「予習…。予習…に、なるのか……??」

……。

「……ならないか、やっぱ」

「いや……、ならない事もない…?公式がなんも言わねぇしな。あながち嘘や噂とは言えねぇ…。」

『鳥籠世界』──明日配信のソフト『箱庭物語』の前身。

プレイヤーは人類──人間、エルフ、ドワーフ、獣人の四種族のこと──の中からしか選べず、レベル上限(カンスト)は50。

王国と帝国と共和国の三国しかない上、真っ直ぐ走り抜けるだけ(戦闘せず、レベル上げせず、移動のみ)ならリアル時間三時間…ゲーム内3日で辿り着ける。王都と帝都と首都の三都市の移動のみなら、という前提条件が着くが。

公式の発表ではこの他にも精霊種(ジン)幻想種(ファントム)天族(フィアー)が居るとの事だが…未だ見た者はいない。全プレイヤー5000万人中()()()見たことはない…どうやら掲示板界隈でも今回の新作、『箱庭物語』とリンクしているのでは…?と囁かれている。

エンタープライズゴルゴタ社なら遣りかねない──彼等がタナトス以前のVRゲーム時代だってそうだった…。

“前作”とされたソフトと“新作”とされたソフト…その二つを持ってリンク&クロスさせたシナリオ展開ををを…っ!!

MMOとしてはかなり鬼畜な事を平然としてくる。

皆“前作”が好きだよ?知ってるよ?でもね!

──レベル上限突破が“次回作(新作)”配信開始…って。

そりゃないよ、おとっつあん~~っ!!?(泣)

しれっとストーリーも追加されるし…前作に。

…そして“前作”のストーリーを進ませなければ“新作”のストーリーもある一定まで進ませたらロックが掛かって進めない仕様。クソである。“一見さんお断りゲー”……そのように言われている。事実だが。

「タナトス1台15万円、『鳥籠世界』ソフト1個5000円。『箱庭物語』1個6000円…限定版だと──」

「ひぃっ!?」「やめろ!?」「聞きたくないー!!」

両耳を塞いで青ざめる愛すべきゲーム馬鹿──クラスメイト達の阿鼻叫喚とした空気の中…ガラッ。

「…?何?えっ、何があったの…ッ!?」

「お?……なっちゃんお帰り~♪」

「…う、うん。ただいま。……てか、何があったの?」

青ざめ項垂れる男子女子、天に祈りを捧げる男子女子、「お金…お金がが…ッ!!」と虚ろに呟く男子女子…総じてこのクラスはエンタープライズゴルゴタ社のソフトを遣り込んでいるようだ。つまりはゲーマー。……いや、平和だな!?

ニッと笑う佑樹に菜月は呆れたような眼差しを向ける。

「あー…、うん。その顔だけで分かったわ。“お金”の話は禁句よ。ゴルゴタ社のヘビーユーザー多過ぎよ…なんでこんなに集まったかな?」

「さあ?」

「さあ?」

「「「「「なんでだ!?なんでだ!?なんでだろう~~♪♪」」」」」

「うわっ!?うるさっ!…いきなり古いネタぶっ込まないでよ…ッ!!」

「「「「わはははっ!!!計画通り♪」」」」

「謎の統一感!──ハッ!?(゜ロ゜)!?しまった…ッ!!」

昔のお笑い芸人のM-1王者○○○○のツッコミ、○品みたく突っ込んでしまった…ッ!?

…本当このクラスゴルゴタ社のヘビーユーザー多過ぎる。

ゲーマーで人口の全てが洗脳…、侵食…、浸透している。

誰が言ったか…『鳥籠世界』のロック解除もうすぐだよな?の言葉。

…ほぼ全員が反応して、目と目でコンタクト。頷いて親指を立てサムズアップ。…それで殆んどのクラスメイトが“ご同類”だと判明。

…と言うか…全員うっすらとアバターとダブるのだ。

「「「「わはははっ!!!」」」」

ガラッ

「お前ら~、ホームルーム始めるぞー。」

「はい」

「いや、素直っ!」(゜ロ゜)!?

フッ…フッ…フッ…フフンッ♪♪

皆得意気にニヒルに笑い呆れた目の担任が溜め息混じりに点呼を取る。

「…浅井ー」

「はい」

「朝田ー」

「はい」

……。

連帯感がハンパない()()()()()『優等生』なクラス…1年5組。だが、実際は──?

優等生≠ゲーマー=ゴルゴタ社ソフトヘビーユーザー。







これは後に“外見詐欺”と言われるとある少年のVRMMORPG内でかわいい彼女とデートとデートを重ねたデート旅の一部始終──要約すると“リア充”ライフの幕開けである。


「かわいい女の子だと思ったのにーーッッ!?」

「男ってなんだ!男って…!!それにコクった俺……ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~ッッ゛!!?」

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…うs」

「男の娘と思とったわい、『彼女の希望』の一言にワロタ…はは、ははは、ははははははは」

「リア充って何だっけ?……リアルで呪殺したくなる人の事かな。ハハハ」


黄昏俯く者、自分にキレ自分でバグり始める者、ブツブツと呪詛を呟く者…王都の広場はそんな阿鼻叫喚の男共(プレイヤー)でごった返していた。


「……いや、俺悪くないよな?ちゃんと男だって聞かれたら答えてるし。」

「そうよ、レインは私の自慢の彼氏だもの。愛しているわ。」

「お、おぅ…俺も。愛しているよ…クシナダ」

「レイン…」

「クシナダ…」

見詰め合うリアルでも恋人、勿論ゲーム内でも恋人同士の二人。


「やめろ…ッ!やめてくれ……ッ!?」

チュッ、と軽いリップ音。軽く触れあうだけのキスを交わすカップル。

……ああ、阿鼻叫喚再び。

嘆き項垂れる者、ブツブツひたすら呪詛を呟く者、壁…はないから、地面を叩く者、口から白いモヤを吐き出す者…様々な嘆き悲しむ男共の虚しい…見苦しい姿。


「…てかこのゲーム別に出会い系でも相席居酒屋でも何でもないんだろ。なあ?クシナダ」

「ええ、そうね。私は聞かないわ」

手を繋いで見詰め合って会話する姿…何処からどうみてもカップル。

崩折れる阿保共を冷たく一瞥するとまたお互いにお互いを視界に捉える。

「…そもそもこのゲーム『結婚』はできるシステムだけど……同性同士でも可能だもの。それで特別な恩恵があるかと言うと……違うわよね?」

「ああ。共同のハウスが持てたり、インベントリの共有が出来たりするくらいか?……あとはーー」

「カップル限定のNPCの店…と言ってもピンク一色のメルヘンカフェでお茶出来る…くらいだと思うわ。そもそもこのゲーム全年齢対象で“そんな店”はフレーバーでプレイヤーは利用不可だもの。」

「稀に娼館からの依頼で精力剤や避妊薬や風邪薬を作ったりするくらいだと…来栖から言われたな」

「あら、そうなの?」

「ああ。…と言っても薬師か錬金術師のジョブ持ちにしか発生しないみたいだけどな」


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