白狐様
私の住んでいる場所では、古くからの、
『白狐様』の信仰が今も尚、ある。
村の皆が、大切に、大事に、社を守り、
白狐様を心から慕い、祀って来た。
白狐様は氏神様でもあられた。
毎年。祭りの日には沢山の屋台が出て、
"狐の村の祭り"としても昔から有名だった。
そのくらい、信仰が深かったのだ。
だが、ある日。
白狐様の住処であられる山を壊そうと、
新しく変わった市長が開拓し始めたのだ。
事もあろうに、あの、大山を、、
皆は反対した。
だが、そんなのは気にも止めなかった。
皆の為、
皆が豊かになると、、
そう、弁解した。
建前は、そう。言ったが、
利権や金が目当てなのは、
言うまでも無かった。
山は削れ、美しい緑は、
見る見るうちに無くなっていった。
皆は白狐様の祟りを恐れた。
白狐様は優しく、いつも皆を見守って下さるが、
敬い、尊重しなければ、恐ろしいモノとなりうる、
案の定。災いは起こった。
全くそう言うのを信じてない者達には、
木の根が無くなったから崩れた。
そう、口を揃えて言うのだろう、、
だが、あれは明らかに白狐様のお力だった。
山を開拓する者達の建物だけが呑み込まれ、
市長が下見に来た際も、市長らの直ぐ目の前に、
伐採した木が勢い良く、落ちてきたのだ。
それから何とか工事は終わり、
白狐様の話は出なくなった。
いや、火消しにかかったと言った所だろうか、
雲が大きく、青空でひとつになると、
雲は沢山の雨を降らした。
記録的な雨量は、川を溢れさせ、
山を少しずつ崩し始めた。
村には次の祟りが襲ったのだ。
山に付けられたパネルは悉く吹き飛び、
それら全てが役場の方へと飛んで行った。
怪我人等は居なかったが、
建物は崩壊し、更には土砂崩れで埋もれた。
皆は避難し、幸運にも、誰一人として
怪我をした者等は居なかった。
皆は感謝し、崇めた。
それでも、馬鹿は治らなかった。
何を血迷ったのか、
今度は社を壊そうとしたのだ。
皆は一丸となって、社を守った。
こうして、あの社は今もある。
白狐様と私達は深い結び付きがある。
それがどのくらいのモノなのか、
本当に居るのかは、、
全ては皆の心次第である。
そう、じいちゃんから聞いた。
子供の頃に聞いた話を、
私は今でも覚えている。
もうすぐ、じいちゃんが帰って来る。
祭りは出来ないけれど、
この季節が近くなると、
じいちゃんと一緒に、
白狐様の話を思い出す。
「白狐様。
今日も1日宜しくお願い致します。
暑いですが、どうか、御体に気を付けて。
また、あの日の様にお祭りが出来ます様に、、」
シャリン、、