蒼白い我が子
結婚して。幸せな家庭を築けたが。
私達には子供が出来なかった。
2人共。それを強く望んでいた。
"特に彼女は"
『原因』は分かっていた。
私だった。
それでも、彼女は私を責めなかった。
今思えば、責めてくれれば。。
持ってゆく"先"が【私】だったら。
こんな結末には、ならなかった。
子供が欲しいなら。
【養子】
と、いう手もあっただろう。
しかし、そう簡単にはいかない。
いくらこちらが求めていたとしても。
私達は該当しなかった。
、、それに、奥深い底の蓋の中の本心は。
「自分達の子」
が、欲しかったのだ。
日に日に彼女は窶れて行った。
無論。私もだ。
互いに互いを責めない代わりに。
自分を追い詰めて行った。。
私達は、【神】にすがった。
願った。
その神は対価と引き換えに、
私達の全てを奪って行った。
馬鹿だった。
でもそれも結果論。
過ぎてから気付いた事。
その時には其が全てであり。
其しか無かった。
大事なものを見失い。
盲目になっていたのだ。
『彼女が居れば良かったじゃないか。
ただ、それだけで。。
"それ"を望んでいたじゃないか、』
震える手。
膝に落ちた涙は暖かかった。
「今更、、」
■「大丈夫。大丈夫ですよ。
必ず。あなた達に素敵な子供が出来る。」
周りには、似たような人が沢山居た。
皆、、子供を求める者達だ。
死んでしまった我が子を呼ぶ者。
居なくなった我が子を呼ぶ者。
出来ない我が子を呼ぶ者。
■「大丈夫です。大丈夫ですよ!
必ず。必ずや!あなたの子供が。。」
莫大な献金で、施設は豪華だった。
しかし、誰でも使える訳では無かった。
使うには、費用が掛かった。
勿論、会員割り引きがあったが。
一般の値段とさほど変わらなかった。
ランクがあり。
そのランクに上がらないと施しは受けられなかった。
"何の為"に入ったのか。
今思い出しただけで鼻で笑えて来る。
【洗脳・マインドコントロール】
何十年。何百万。
家族や友人。人との繋がりを断たれ。
時間を無駄にした。
そうしてようやく"順番"が回って来た。
見慣れた施設。
一般の人も利用出来る宿泊施設の中に。
其所はあった。
□「どうぞ。」
■「~~~。ようやく救われる時が来ましたね!」
「はいっ!ありがとうございます!
お恵みに感謝致します!」
□「こちらへ。
お入り、下さい。」
【関係者以外立入禁止】
扉の奥には、長い浴槽の様な形をしたモノ。
穢を祓い、正装をして、その中に入る。
熱くもなく、寒くもない。
室内は全面鏡張りで、青白いライトに包まれていた。
音楽が流れていて、私以外には、誰も居なかった。
水の中でぼやけた音が響く。
ぼーっと。鏡に映る自分を見つめ。
抱き抱える様にした腕の中を見つめる。
「長かった。
本当に長かった、、」
ぼやけた頭の中を過去が駆け巡る。
「ようやく、、ようやく、、あっ。」
気付けば涙が流れていた。
涙を拭おうとした時。
腕の中で抱えている事に気が付いた。
それは重く。形があった。
「ぉっ、、おっ、、。」
声が上手く出なかった。
腕の中に子供が居た。
見上げる鏡に映って居る。
確かにここに居た。
「私の、、子。私達の子。。
なあ。?おいっ、?私達の、、」
その瞬間。
覆われていたナニカが剥がされた。
「うっ。!!」
彼女の遺影。
彼女は、、。
腕の中にある。異様な子。
大きい、大きい我が子。
「違う」
私達の子。
「違う。」
可愛い、可愛い。我が子。
「違う!」
ずっと求めてた。ずっと探していた我が子。
「違あうっ!」
蒼白い子「オギャァアアンッ,オギァァンッ,」
バシャン!
腕から滑り落ちる其と目が合った。
さっきまで居た其は水に溶ける様に消えて行った。
急いで駆け上がる。
身なりも気にせずに、逃げ出す。
「はっ、はっ、はぁ、っ、はっ!」
違う。
ここじゃない。
異様な眼差しで向けられる視線を潜り抜け。
私は走った。
「はっ、はっ!はっ、はっつ!」
見慣れた玄関。荒れた室内。
奥の扉のノブに手を当てて、勢い良く引く。
床に落ちていたそれを拾い、胸に抱える。
「ごめんょ、、ごめんよぉおお!!」
彼女の遺影の額縁には、埃が被っていた。
涙を拭って、思い付く物を詰める。
「逃げなきゃ!
彼女と。逃げないと!!」
自分の身成は二の次で。
思い付いた物を抱える。
走った。ひたすら走った。
ここじゃない。違う"場所"へ逃げなくちゃ。
「はあ、はあ。はあ、はあ。」
△「大丈夫ですか、?」
「は、っ。は。た、助けて、」
△「何かあったんですか?!」
「助けて、下さい、」
△「とにかく入って。!」
蒼白い我が子。
アレの【正体】が何だったのか。
今の私が知るよしもない。
"時効"だと思って話すが。
彼女への言い訳にすらならないだろう。
「きっと私は、、良い所へは行けないのだろう。
大切なモノは、最初から側にあったのだ。」




