表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見感語  作者: 紀希
18/52

色打掛



女性がまた泣いている、、



何かを擦る様な音。


いや、引き摺っている音に、、



「っ、、んっ、、。」



静かに、悲しそうに。


泣いている声、、



「あぁ、、


もう朝か。」


カーテンから入る日差しが、


部屋の中を明るくしてくれる。



窓から入る冷たい風は、


少しひんやりとしていて心地好い。



友達が旅行から帰って来て。


「お土産がある」


との連絡があった。


それで、


「久しぶりに飯でも食いに行くか?」


との流れになり、現在に至る。



「なあに?女と行ったんけ??」


友達「ちげーよ。ひとり旅。」


「何でまた??」


友達「何となく。」


「はははは。


どうだった??



出逢いは。」


友達「お店の人と飲みに行ったぐらいかな。」



「好い人出来たかよ??」


友達「いや。」


なんて他愛も無い会話を続けた。



時間はあっという間に過ぎて行き、


別れ際に友達は土産をくれた。



友達「土産」


「変なヤツじゃねえよな?」


友達「お酒だよ。」


「じゃあ、何かつまみを買って帰るかな」


友達「割らない様にね?」


「あい。



ありがとな。」



いつも。行くまでが面倒だが。


こう、過ぎてしまうと。


良い時間だった、、と思う。



「さて、何だこれは。」


箱を開けると、陶器で造られた、


日本酒が入っている器があった。



器と言っても、平べったい皿ではなくて、


人間の形をした、中に酒が入ってる物だった。



「ほう、、」


綺麗な女性の、色打掛の姿。



既に酔いが回っていて、


開けて満足した私は、そのまま寝てしまった。



いつもならぐっすりなはずなのだが、、


その日は違った。



これが、初夜だった。



誰かが、、泣いている、、


啜り泣く様に、女性が泣いている。



どうしたんだろうか、、


何で泣いている。。



自分が何処に居るのか。


何をしているのかは分からないが。


女性の泣き声だけは分かった。



まあ。大して気にしちゃいなかったのだけども。


何度も繰り返すうちに、おかしいと思う様になった。



「、、きっと彼女だ。」



何度も繰り返せば少しずつ。


"夢"でも自由になる。



だが、原因は分からない。


"何故"泣いているのか。



フィィイル、、


布が、床をする様な音。


何かが動いている様な音。



目の前の開いている部屋から、


影がゆっくりと移動する。



「っ、、んっ、、。」


始まったか、、



時間を掛け、ようやく女性を確認する事が出来た。


気味が悪いとか、怖いとかではなくて、


何故か。可哀想で不憫に思っていた。



ようやく目で確認出来る様にはなったが。


対話する事は、難しかった。


口は動かないし、話す流れにならない。


見ている事しか出来ないのだ。



所詮、"近い夢"なのだから仕方ない。



いつまでもこうしては居られない。


丁度、長期休みを貰った為。


私は少し女性について調べてみる事にした。


、、最初からそうしろと思われただろうが、


中々そんな余裕は無かった。



「そもそも、何処の土産だ?」


今は直ぐに調べられる。


が。


同時に考える事をしなくなった。



「んん、、」


調べるも、特には見当たら無かった。



「ぅんん、、。」


何故泣く。


あれは、、引き摺っているのは、、



一瞬にして、何かが晴れたかの様に。


"答えは導き出された"


「挙式か??」



調べると、丁寧に出てきた。


これは、対で造られている物だった。



『独り身の方々に、良い出逢いがある様に、、



男性なら女性の陶器を。


女性なら男性の陶器を。



贈ると、"良縁"が、、』



と言う物だった。


女性の陶器を優しく撫でる。


「ごめんな??」


売られている場所まで、そう遠くはない。


「よし。。



私が!!



良い相手を見付けてやるからな??」


女性を割れない様に綺麗に包み、


バックの中へと優しく入れる。



きっと寂しかったんだろう。


元々一緒にあったんだ。


そりゃ、悲しくもなるよな。



流れ行く風景を見ながら。


新幹線の中でお弁当を頬張る。



「うまっ。」



彼女がもたらしてくれた良縁のお陰で、


私は美味しいご飯にありつけそうだ。














この陶器は男女両方セットだと。


"幸福"


をもたらせてくれるのだとか。



どうやら私には。


まだまだ結婚とは程遠い様だ。




















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ