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【WEB版】婚約者が浮気しているようなんですけど私は流行りの悪役令嬢ってことであってますか?  作者: コーヒー牛乳
-Season2-

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92/97

【6巻発売記念SS】孤児とあいつ

ピッコマさんで6巻先行配信始まりました!

この話はあいつのその後です。

時系列はシーズン1の直後ぐらいでしょうか。


 孤児院に、ムカつく新人が来た。

 俺は、あいつがとにかく嫌いだ。


 メシは残すわ

 見かけるたび、いっつもつまらなそうな顔をしているわ

 目が合うと嫌なものを見たような顔をして、ぷいと逃げる。


 ────すっげえ感じが、悪い。


 嫌いだわぁ。

 女共がきゃあきゃあ騒ぐのも馬鹿みてえ。


「なーにが『王子様みたい』だ、よ!」


 おもいっきり振りかぶって窓に泥団子をぶつける。

 あいつがいつもぼーっと外を見てる窓だ。


 その窓はもう泥が垂れるほどついている。


「働けっつーの!オラァ!!」


 最後の一つを思いっきり投げたら、ちょうどそいつが窓を開けたもんだから泥人間になってやがった。ざまあみろ。


 そいつが怒り始める前に急いで木の影まで逃げた。

 あいつは怒鳴るだろうか。


 あいつがココにやってきたのは夜中だった。

 あの日は夜中だっていうのに、孤児院に響くほど「ソーニャは」って男の怒鳴り声が響いたんだ。


 俺も、チビたちももちろん起きた。

 この孤児院には大人の男はいない。働けるようになったやつは出て行くから。だから、怖がるチビが泣いてくっついてきていい迷惑だった。


 あの時からむかついてたんだ。

 だから、あの時みたいに怒鳴って怒り散らすんだろうと思ったのに。


 あいつはつまらなそうな顔で泥がついた服を見てた。

 見てるだけ。


 その反応もムカつく。なんなんだよ。ムカつくムカつくムカつくムカつく!!


「────っお前!なんなんだよ!!」


 気づいたら、俺の方が怒ってた。腹が立ってしょうがなかった。


 こっちはもう怒り狂ってるっていうのに、あいつはボーッとした顔で驚きもしない。

 俺をチラッと見ただけで、また泥を見てる。


「~~~お前!!もう病気は治ったんだろ。なんで不貞腐れてんだよ!」

「……病気、だって?」


 うわ、気取った喋り方。なんだこいつ。かっこつけやがって。嫌いだ!

 いつもこんなに腹が立つわけじゃない。でもこいつには言ってやらなきゃ気が済まなかった。


「お前は母ちゃんみたいに白いから、病気でずっと寝てたんだろ。でもお前は母ちゃんみたいに痩せてないし、顔色もいい」


 母ちゃん、と自分の口から出た言葉に自分で驚く。

 でも俺の母ちゃんはそいつとは全然違った。濁ってて、固くて、ずっと寝てて、動かなくなった。だから。


「だから、もう充分、ぜんぶ治ったんだろ」


 それなのに、なんでお前はメシを残す。

 母ちゃんと違って喋れるのに。

 母ちゃんと違って動けるのに。


 お前の、そのつまらなそうな顔を見てると腹が立つ。


 全部を口にすると負けるような気がして、つい口を食む。


 そいつはまた俺から視線を逸らした。


「……怪我人にそう怒鳴るな」

「そんなもんツバつけとけバーカ!」


 これが俺とあいつの”対立した日”の出来事だ。


 あいつに大げさに巻かれた包帯がとれた頃、やっとあいつは外に出てくるようになった。

 皆で畑を耕したりしているというのに、あいつはただ見てるだけだったけど。


「お前はよく泥を投げるね」

「うっせバーカ!お前みたいなの顔だけ引きこもりの穀潰しっていうんだぞ!」

「……言っている意味がわからないな」

「バーカ!バーカ!」

「”バーカ”とはどういう意味なのかな。侮辱されていることは伝わるが……あぁ、もしかして”馬鹿”に近いのかな。変わった言い回しだね」


 あいつはぶっ飛んでる。こっちこそ何を言っているかわからない。こういうのが”世間知らず”というのだろう。もちろん、あいつのことだ。

 全部が全部こんな調子だから、いちいち腹を立てるのがめんどくさくなってくる。



「バーカ」は超絶下品なスラングにお好みで変換してください。


次回、2024/3/15(金) 12:00に更新予定。

(続くのにそこまで開けたら忘れますよね。大人の事情がアレやコレやですみません!)

16日に各サイトで配信スタートです。扉絵のローズ作の猫の絵が本当に最高なので全人類見てください。

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