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【WEB版】婚約者が浮気しているようなんですけど私は流行りの悪役令嬢ってことであってますか?  作者: コーヒー牛乳
-Season2-

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悪役令嬢の暗躍 1

夕陽を跳ね返す濡れ輝く金の髪に、高い鼻梁。

伏せられた金の睫毛がふるりと揺れ、現れた瞳は海の色だった。


外の世界には髪の色も肌の色も違う人々がいると聞いていたが

その人は今まで知っていた者たちとは全てが違った。


海の色が私を捉え、色を無くした唇が動いた。

何かを私に伝えようとしている。


それだけで私の胸は高鳴った。

どのような声で、何を伝えようとしているのか。


震える足を叱咤し、彼に近づく。

僅かに動く唇に耳を寄せれば。


彼は──────



「そ、それで何と。何とおっしゃったの……!」


つい足を止め前のめりになる私をチラリと見て。

ふぅ、とサーラ様は遠い記憶をたどるように物憂げな顔でため息をひとつ。


「気に、なりますか?」

「気になるわ。海で溺れていたところを救助されたレイノルドお兄様はサーラ様になんとおっしゃったのか、早く教えてくださいませ……!」


「そんなに聞かれては困ってしまいますわ」


サーラ様は今度は頬に手を当てコテリと顔を傾けた。

自由奔放だった黒猫ちゃんは、日々順調に吸収しているようで、言葉遣いや仕草が見れるようになってきた。


取り急ぎ言葉遣いや仕草を修正しなければ連れ歩けませんからね。

サーラ様自身も学習能力が高いのか、素地があったのか、飲み込みが早い。


レイノルドお兄様が『貴族と同等に』とおっしゃっていた通り、一定の水準の教育は施されていたように感じる。



本日は王宮の庭園を散歩しながら、サーラ様の学習の進捗を確認すると共にレイノルドお兄様との出会いを聞いているところだ。


なんでも、自身の結婚について悩んでいたサーラ様は、気分転換にお友達の船に乗り沈む夕陽を見ていたそうだ。

そこで、海に慣れていない動きをする船が見えた。

日が落ちそうだというのに何をしているのかと様子を伺えば、海に落ちた者がいるようだった。

夜になってしまえば命は助からない。


なんとなく自棄になっていたサーラ様は止める友人たちを振り切り、捨て身で海に入り。

海の中で揺れ輝く金の髪を見つけたそうだ。


後から追って海に飛び込んだ友人たちにまとめて船に引き上げられ、無事生還したレイノルドお兄様の瞳がサーラ様を見つめ返す。

周囲の人間は未だ救助に向かっている。激しい怒号が飛び交う中、二人の時は止まったようだった───



なんて運命的な出会い……!!

それは恋に落ちてしかるべきですわ……っ


グッとこぶしを握り、ときめきを嚙みしめているとサーラ様は困ったように笑んだ。


「期待されても本当に困るわ。あの時のレイノルドったら『触れるな』って言ったのよ」


ピタッとときめきの衝動が止まる。


「『俺に触れるな。俺より他のやつを一人残らず陸に戻せ。さっさと行け』ですって。死にそうな青白い顔して。別に感謝されたかったわけじゃないけれど、もう一度海に放り込んでやろうかと……いえ。沈めて差し上げようと思いましたの」


丁寧に言い直したけれど物騒ですわ!


「手当をしようとしているのにうるさ……とても騒がしかったので、ウメボシを口に放り込んであげましたの。あの時の顔ったら」


柔らかな笑い声が風に溶けた。


「”ウメボシ”とはなんですの?」

「あぁ、ウメボシっていうのは木の実を塩で漬け込んだもので……、とにかく、とー--っても酸っぱいのよ」

「まぁ! それは毒……ではないのよね?」

「ふふ。レイノルドも言っていたわ。『俺に毒を盛ったな!』って。あーおかしい。ウメボシは薬みたいなものよ。船に乗る時は必ず持っていくのです。船の上はとても暑いので汗をかきます。

汗をかきすぎると体力を奪われますので、そういう時にウメボシや、ウメボシを入れた水を飲みます」

「そうなの……沿岸部ではそういった文化があるのね」


沿岸部といえば、先日お会いしたリーヴァ様の領地プラーシュ伯領も沿岸部だわ。

人魚の涙なる宝石の件も詳しく聞きたいですし、そろそろ他のご令嬢も交え会話の練習をしてみるのも良いかもしれないわ。


次の計画を立てながら、意識をサーラ様へ戻す。


「レイノルドは、私の周りの人間とは何もかも違いました。自分が死にそうなのに、他の人間を助けてくれって。人間の本質って死ぬ間際に見えると思いませんか?」


そう言ったサーラ様の顔に、少し陰が落ちた。


「……まあ、体調が戻ったら更に偉そうだし、意地悪だし、口が悪いし、女好きだし、良いところは顔だけって思っ……いました」


陰を振り切るようにわざと険しい顔を作ったサーラ様の口から出るレイノルドお兄様の印象は散々なものだった。

でも、確かにレイノルドお兄様は偉そうで意地悪なので概ね同意である。

悪いところが私の知っていることより増えている気がするが、概ね同意である。


「でも、何者かもわからない私のことを助けてくれて」


借りを作りたくないとか、どんくさいから見てられないとか言われたけど。

と、付け加えつつも思い出しながら語るサーラ様は、幸せな思い出の箱を開けるようにふわりと笑んだ。

お互いぶつぶつ文句を言い合っていたのだろうと様子が目に浮かぶ。


「まあ他人の側室になれと言われるとは思いませんでしたが」


サーラ様の形の良い眉がくいっと下がり、弱ったような笑顔をこちらに向けた。しかし、私には泣きそうな顔に見えた。


本編を最後まで書きあげたら……番外編でこのあたりの話を書くんだ…書くって決めたんだ…(フラグ)


本日、コミカライズ更新です!

無料で読める最新話は「悪役令嬢の真心」です。

個人的注目ポイントは

・ローズ心肺停止

・リヒトの勝った(笑)顔

・お兄様のメガネキラーン

の、3本です!

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