第0話:少し先のラブコメ
冒頭に0話を追加しました(9/27)
ある高校の教室──中央で男子生徒と女子生徒がただならぬ雰囲気で言い合っている。
その様子をクラスメイトは、距離を置き、固唾を飲んで見守っていた。
「わたしがあなたのことを先に好きになったんだから!」
「違います。僕があなたのことを先に好きになったんです!」
男女はお互いを指さしている。
つまり……よくよく考えれば──お互いのことを好きだと言っている。
「わ、私は折れないんだから!」
「僕も折れません!」
「「あなたのことが……」」
「「好きです、付き合ってください!」」
同じセリフを同時に言って──やはり、お互いに告白しあっている。
しかし、なぜか納得していないようだ。
「そうじゃない、違うの〜!」
女子の方が不満の声をあらわにした。
「あ、あのさ……」
その様子を見かねて、クラスメイトたちが口を出す。
「ま、まぁさ、気持ちは分かったけど……お互い好き合ってるなら、とりあえず問題ないじゃん」
「そ、そうだよ、そんな事でケンカするなんてバカみたいだよ」
「ほら、二人とも仲直りしなよ」
周囲から促されて、男女は少し落ち着いた雰囲気をとり戻す。
「は、はい……」
「う……うん」
少しの間のあと、少年が口を開いた。
「小町さん、これからも一緒にいてください。それが僕の一番の望みです」
そう言いながら、相手の少女を見つめる。
彼女はゆっくりと彼に近づいて、その胸に顔をうずめた。
「う……うん。私も……一緒にいたい」
クラスメイト達も次々に口を開く。
「おめでとう」
「おめでとう」
「めでたいな」
「おめでとさん」
謎の感動が教室を包み、拍手で二人を祝福していた。
二人が幸せを噛みしめている中──クラスの誰かが調子に乗って叫ぶ。
「そうだ、キスしちゃえよ!」
それに呼応して他のクラスメイトが反応する。
「お、いいね!」
「せーのっ!」
「「「キース! キース! キース!」」」
大合唱のコールが始まってしまった。
「小町さん……」
「純くん……」
男子が彼女の顔を引き寄せる。
彼女も雰囲気に流されつつ顔を近づけ────ギリギリのところで抵抗して押し戻した。
「……だ、だめだよ……人前で……。恥ずかしい……」
「……いえ」
少年は少し考えて言う。
「好きな人とキスをする事は恥ずかしいことじゃありません!」
真顔で言い切る。
少女の顔が蒸気していく。
(……うん……そういうまっすぐなところが好き……だけど……だけど……)
教室から飛び出して廊下を駆けだした。
「めっっっっっっちゃ、恥ずかしいんだよぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
──これは、不器用な少女と不器用な少年のラブ&コメディである──
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