表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

第4章 瑠奈の過去



 その日の夜、瑠奈は幼き頃から、龍一に出会った頃までの過去を思い出していた…… 

 

 二十年前……

 「どうした瑠奈、そんな事では強くなれんぞ!」

 「はい、お父様!」

 「まあ、今日はこれくらいにして、帰ろう、母さんが、ご飯の支度をして、待っている。」

 

家に帰ると、瑠奈の母が食事の支度をして待っていた。

 「お母様、ただいま帰りました。」

瑠奈にとって、この頃にはまだ、家族がいて幸せだった。

この後に悲劇が起きる事も知らずに……


 「瑠奈、明日が楽しみね。」

 「はい、武も凍矢も楽しみにしているみたいです。」

 「ワシは用事で行けんが、思いっきり楽しんで来い。」

「はい、お父様」


明日は、武田一家と水谷一家と瑠奈と瑠奈の母とでキャンプに行くはずだった。

しかし次の日、悲劇は起きた。

キャンプ場に向かう途中トラックと正面衝突を……

そして、その事故で生き延びていたのは、瑠奈、武、凍矢の幼き三人だけだった……

瑠奈の父良昭は、自分があの時、一緒行っていれば……そう思い、武と凍矢を弟子にした。


三人は、本当の兄弟みたいに仲が良かった

後に瑠奈をめぐって二人が争うなどその時は、知る由もなかった……


それから四年後……

瑠奈達が十歳の時、ある男が現れた。

「月形 良昭殿ですな!?私の名は、神威 武蔵と申す!貴殿と試合たいがために、参りました!」

そう、この男こそ龍一の父、伝説の格闘王である。

「おぬしが今、話題の格闘家か……」

「お父様!」

「お前達は、下がっていなさい……おぬしは何故、私と試合たい?」

「私は今日で、格闘家を引退します。」

「引退?まだおぬしは、二十代後半……まだまだ引退するには早いのでは?」

「妻に傷つく姿をこれ以上見せたくない・・あいつは武道家の妻として、私が勝利すれば、確かに微笑んでくれます。だが、それは心の底からではない……それに二週間前に子も生まれたし……だが、最後にあなたと本気で勝負したいのです!私の師堀辺 正宗先生が、亡くなる前に、もし天神流の後継者に勝てたらお前は、最強の格闘家だ……とおっしゃられて……」

「堀辺 正宗……その名は父から……先代の天神流の継承者から聞いた事がある。よろしい、天神流十六代目として、相手をしよう。」


実は堀辺は、後継者にはなれなかったが、瑠奈の祖父と共に天神流を学んでいたのだ……

その後堀辺は、天神流を捨て、骨法や柔術などの他の古武術を学び、天神流を越える武術を編み出そうとした。

そして、その理想は、龍一の父武蔵に受け継がれていった。


そして試合が始まった!

いきなり仕掛けたのは、武蔵だ!

だが、彼の正拳突きをかわし、天誅が炸裂!

だが、まったく効いてない

良昭は、足払いをし、武蔵が倒れそうになった瞬間、顔をつかみそのまま地面に頭を叩きつけた!

 「天神流忍術鉄槌!」

だが、武蔵は立ち上がった。

更にものすごい攻防戦が続いた。 

 「おぬしは、あの宮本 武蔵の生まれ変わりか?」

 「父が、宮本 武蔵のような(つわもの)になるようにと願って付けてくれた名前なんで……」

すると彼は、腰に差してあった二本の木刀を抜いた。


あの、宮本 武蔵が、初めて試合をしたのは十三の時。

相手は新当流の有馬喜兵衛で、そして、武蔵は喜兵衛を木刀で殺したという。

 

「リングの上では武器が使えないんでね〜、神威流は体術だけじゃあないんです。」

 「二刀流とは、まさに宮本 武蔵の二天一流……だが天神流は忍術、体術はもちろん、剣術、槍術、棒術など様々な武器が使える。瑠奈!」  

 「はい、お父様!」

瑠奈が父良昭に、木刀を渡した。

再びものすごい激戦が……

そして、良昭の頭に武蔵の木刀が、だが良昭も木刀で防いだ。

「(胴ががら空きだ)」

武蔵のもう一本の木刀が良昭の胴に、だが良昭は、中国拳法の気功のような技で、気合いとともに、木刀を折ったのだ!

良昭は木刀を捨て、奥義龍神を使った!

武蔵は立つ事が出来なかった……

これで武蔵の不敗伝説は終わった……

だが彼にとって今日の試合ほどすばらしい試合は今までに、無かったであろう……


さらに時が流れて、瑠奈達は中学生になっていた。

この頃になると、瑠奈と凍矢はヤンキーになっていた。

特に凍矢は補導されたり逮捕されたりして、何度も警察の厄介になっている。

武と凍矢と瑠奈は同じクラスで、また隣のクラスには、北斗とランが、さらに違うクラスに原田がいた。

この頃から、瑠奈と武は付き合っていたが、武が瑠奈に何も言はないのは、いつか自らの過ちに気づいてくれると信じていたからだ。


だが中学を卒業して半年経った頃、摩利支天の三代目に北斗が、特攻隊長にはラン、そして、原田がいた。

また、凍矢が作った百鬼にはジュンジとユウヤが……

さらに、瑠奈が結成させた死乃美が……

  

ある晩ついに摩利支天と苦乃一対百鬼の戦争が始まった。

 「瑠奈、武みたいなクソ真面目なヤツよりも、俺の女になれ!」

 「凍矢、ふざけんじゃないよ!?」

 「お前が北斗か?」

ジュンジが北斗を睨みつけた。

 「上等だよ!?お前……」

北斗がそう言った。

 「なんだ!?この女みたいなヤツは?」

ユウヤがランを挑発した。

 「誰が女みたいだって!?殺すぞ、コラ!」

ランが木刀を強く握った。

物凄い乱闘が……こうなったら、誰も止められない……と思ったら、一人の男が現れた!

 「瑠奈、凍矢こんなとこに居たのか!先生が心配しておられるぞ。」

そう、その男は武であった。

 「何じゃてめえ〜は?死にてえのか〜?」

百鬼の一人が武に攻撃しようとしたが……

 「そいつに手を出すな!お前らじゃ無理だ!」

凍矢が自分の舎弟にそう言った。

 「へえ〜以外と仲間思いなんだな!?」

 「勘違いするな……お前を殺すのは、この俺だ!てめえら〜行くぞ!」

 

この戦争をきっかけに、瑠奈は武にふさわしい女になろうとするが、凍矢はかなりのワルになっていた……

そして、その傍若無人さゆえに、凍矢はついに天神流を破門された……


 それから一年が経った……

武と瑠奈は阿の山と呼ばれる所で修行していた。

天神流には道場がなく、この山は代々天神流の者が山ごもりの場として利用されてきた山である。


 その頃、月形家に一人の男が現れた!

 「お久しぶりです……良昭先生。」

 「何しに来た?凍矢!」

 「瑠奈を俺の嫁にしようと思いまして……」

 「たわけたことを、いいか、瑠奈は武と結婚させるつもりじゃ。」

 「そうおっしゃると思いましたよ。」

そういいながらニヤリと笑った。

 「ならば、先生と武を殺さなくてはなりませんね!?」


そして死闘が始まった

だが、さすがの凍矢も良昭には勝てそうもなかった。

 「(クソ、やはり今の俺では勝てんか?)」

 「許せ、凍矢よ…今楽にしてやる。そして、ワシもお前の後を追う……」

良昭が、凍矢にとどめを刺そうとした……

だがその時!

 「う、うう〜、こんな時に発作が……」

なんと良昭は、胸を病んでいた。

 「これは、これは……なんとも……まさか病んでいたとは……安心してください先生、今楽にして差し上げます。」

そして良昭は……

 「次は武だ!」


 その頃瑠奈と武は……

「瑠奈そろそろ山を降りよう、先生も待っておられるだろうし……」 

 「そうね」

 「……瑠奈、来年になったら、結婚しよう」

 「……うれしい、すごくうれしい」 

二人はそのまま熱い口づけをした……


その時!

 「やはり、ここにいたか」

 「凍矢!何しに来た?」

武は冷や汗を掻いた。

 「瑠奈を俺の女にするためさ!」

 「私は、あんたの女になる気はない」

 「いい事を教えてやろう。瑠奈、お前の父良昭は俺が殺してやった」

 「嘘を言うな!」

 「嘘ではない、お前らも気づいてたんだろう!?あの男が胸を病んでいたことを……感謝してもらいたいもんだ。どうせ早かれ遅かれあの男の死期は近かったに違いない、だが俺のおかげで、病死ではなく戦死したんだからな。」

 「凍矢、なんて事を……」

武が構えた。

 「次はお前だ!」

凍矢が攻撃をしかけた。

二人の実力は互角だった。

この戦いを当時の瑠奈には止める事ができなかった。

 「やるな〜、武!」

 「(すまん瑠奈、お前だけでも生きて……そして幸せになってくれ)」 

武は死を覚悟し、凍矢と共にガケから転落した。

すぐさま瑠奈は、ガケを駆け下り、武の所に……

 「しっかりして、武!」

 「す、すまん……瑠奈……ハアハア……だが、お、お前だけは、幸せになって……」

武はついに息耐えた……

だが!

 「ハアハア……く、くそが!」

なんと、凍矢はまだ生きていた!

 「凍矢!」

瑠奈は父と武の仇を討とうとしたが、凍矢の凍りつく目に瑠奈は、金縛り状態におちいった。

 「ど、どうした?い、今のうちに、俺を殺しておかないと、後悔……

するぜ!?」

ついに瑠奈は、動く事が出来ず凍矢を逃がしてしまった……


やがて、瑠奈は、天神流の後継者となり、ただひたすら強くなろうとしていた……

そして、裏の世界に足を踏み入れた。

すでに、瑠奈の強さは、格闘王はもちろん、父良昭をも超えていた。


瑠奈は裏の世界で、何人もの人間を殺めてきた……

ほとんどが人間のクズばかり……

だが中には、本物の戦士とも命をかけ戦った事も何度かある。


初めて、瑠奈が殺した相手は、ただの通り魔だった……


ある日、一人のOLが帰宅途中に殺された。

それから、三日後に今度は女子大生がバイトの帰りに殺された。

犯人は同一犯と思われるが、どうも金銭目当てではないらしい。それは殺された二人から財布などを盗んだ形跡がないからだ。


そして五日後の夜……

 「お、お願いです。お金ならあげます。」

「へへへっ、お前、新聞読んでないのか?おれは、金なんかいらねぇよ。」

 「も、もしかして、あなたが、あの通り魔!?」

 「そうだ。俺が最近OLと女子大生を殺した男だ!」

「あ、あなたの目的は何?」

  「俺の目的は、恐怖に怯える女の顔を見ながら、ゆっくりと殺すことだ。」

男は無職で、名は宮下勉(37)で人間のクズのクズだ。

 「(お願い、誰か助けて!)」 

女は恐怖のあまり、逃げることも出来ず、やがて、声すら出せなくなった。

 「ついに声まで出ないくらいに怖いか?今からこの包丁でゆっくりと殺してやるよ。」

その時!

 「今日、死ぬのはお前だよ。」

 「なんだ!?誰だ、おまえは?」

 「私は、始末屋(スイーパー……お前を殺しに来た!」

瑠奈だ!瑠奈がついに現れた!

そして震えている女性の近くに行き、彼女を守るとした。

 「へへへっ、それにしても美しい女だ。まずはお前を、ゆっくりと殺してやるよ。」

 「もう大丈夫よ。今のうちに逃げなさい。」

女は、瑠奈のやさしい顔を見たら安心し、そして、ゆっくりと歩き始めた。

その時、男が瑠奈に襲いかかった!

だが瑠奈の天誅が炸裂!

さらに瑠奈は、男が気絶しない程度で攻撃を続けた。

女は瑠奈を信じ、無事逃げることができた。

男は再び包丁で襲いかかるが、瑠奈は男の手首を蹴り、その勢いで包丁は男の腹に突き刺さった。

 「血、血が……い、痛いよ…お願いだ、助けてくれ。」

 「無理ね。あんたは、そのまま、苦しみながら死んでいくのよ。」

そう言って、瑠奈は去っていった……


「(スイーパーか……所詮天神流は、人殺しの技、今の私にはちょうどいいかも)」

こうして瑠奈は、スイーパーとなり、後に裏の世界でアルテミスと呼ばれ、多くの人達から恐れられるようになっていく……

「た、頼む、救急車を……」


その翌日、すでに男は死んでいた。

発見者がすぐに、警察に連絡した。警察はこの男が通り魔だと分かった。

そして、包丁には瑠奈の指紋が無いため、この男は自殺したことになっている。

  

それから半年後、ちょうど武が亡くなって、一年が経った頃……

北斗は自分の思いを瑠奈に告げた。


そして、一ヶ月後……

 「どうしたの?北斗」

 「……瑠奈、俺ではお前を幸せすることが出来んみたいだ。お前の心の中にはまだ、武が生きている」

 「……ごめん北斗、でもあなたに告白されてうれしかった。だから……」

そして二人は、恋人からまた友達という関係にもどっていった。


 それから数日後、ジュンジとユウヤの前に北斗とランが現れた。

 「この前の解散ギグ観たぜ。短当直用に言う。俺達と音楽(ロック)をやらないか?」

 「何で俺達が、てめえらなんかと……絶対にヤダ!」

ユウヤは嫌がっていたが、ジュンジは、考えていた。

 「北斗、俺もこいつらといっしょにやりたくねえよ〜」

するとジュンジが、

 「お前らにとって、音楽(ロック)とはなんだ?」

 「貴重な宝だ!」

と、北斗が言うと、ジュンジはニヤリと笑い、そしてプレシャスが結成された!


 さらに時は流れて、瑠奈は二十歳(ハタチ)になっていた……


その頃、龍一は、上級生や中学生までマジって、堤防でいじめられていた。その中には、あのマサシもいた。

 「お願い、やめてよ」

 「龍一!俺達はお前のためにやってるんだぜ。」

 「お前は、格闘王の子供のくせに弱いから、俺達が鍛えてやってるんじゃないか。」

 「明日までに、授業料五万持って来い!」

そう言ってヤツらは去っていった……


 次の日、龍一はお金を持ってこなかった。

そのため、また堤防に連れられ、ボコボコにされた後、真冬の中、川に投げられた。

 「ゲホッ……ゲホッ……!」

龍一は自力で岸に上がった・・

 「お前が悪いんだろう!金もってこねえから」

さらにリンチが続いた。

だがその時!

 「確かに、悪い子にはお仕置きが必要ね。」

瑠奈が笑いながらそうつぶやいた。

 「綺麗な姉ちゃんだな〜俺達の仲間になりたのか?」

と次の瞬間いじめっ子達はあっという間に瑠奈にお仕置きされて、そして一目散に逃げていった!

龍一の体は、ビショビショに濡れていた上に、泥だらけであった……

そして泣きながら、

「もう嫌だ!もう死にたいよ!」

とつぶやいた……

すると瑠奈は、

 「死ねば!早く死んで見せてよ。一人で出来ないなら手伝ってあげようか?」

そう冷たく言い更にナイフを取り出した。

すると龍一は、

 「……本当は死にたくない、本当は死ぬのが怖い……」

すると瑠奈は、ナイフを置き、濡れて泥だらけの龍一をそっと抱きしめた……

「(温かい……そしてすごくいい匂いがする。)」

龍一は照れながらそう思った・・

 「そうよ、死んだらそれで終わりなのよ。もう二度とそんな事を言ってはダメだからね」

 「僕、強くなりたい!お父さんみたいに……」

 「……努力すれば、強くなれるわよ」

こうして、龍一は瑠奈の弟子となり、純粋に強さを求めていった……

 

 しばらくして、瑠奈はヴァイオリンを弾き始めた。


実は昔、瑠奈もプレシャスのメンバーでヴァイオリンを担当していたのだ。

やがて龍一に、天神流を教えるため脱退した。

プレシャスは、その後解散をしたが、三年後に、再び活動を開始した。


そして、二年後には、インディーズバンドとして、アルバム「ファンタジア」をリリースした。

アルバムの最後の曲に、瑠奈も参加して、ヴァイオリンを弾いている。


瑠奈は父から天神流を学び、母からヴァイオリンを学んでいたのだ。

瑠奈は、南や武そして、父と母のためにヴァイオリンを弾いていたのであった……


  




キャラデータ

小林秀一・・・小野寺清の弟子で、少林寺拳法の達人。

文武両道でルックスもよく、恵みという彼女がいる。


岡村徹・・・暴走族、摩利支天の元特攻隊長でボクシングをやっているヤンキー。

龍一とは中学時代からの仲間である。恋人は事故死した南だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ