第13章 伝説の悪魔
龍一が継承者となってから、二ヶ月が経った。
龍一は、更に強さを求めた……
だが、たまに、生活費を稼ぐために、瑠奈の店でアルバイトをしていた。
そして、舞、一、四郎のいつもの三人が、店にやって来た。
「龍一、お前から借りていた漫画、ここに置いとくぞ!」
「あ、うん」
三人は、ジュースを頼んだ。
「久々に読んだけど、面白いな、タイガーボールは……」
「でしょ!今度は虎衛門を貸してあげるよ。フシギ・F・フシオ先生の漫画は、最高だよ!あと、ナースムーンとか、るろうのケンシロウとかもいいよ!あっ、最近、ジャッキー・リーのポリス・怒りの鉄拳のDVDを買ったから、貸してあげるよ!」
「龍ちゃん……ナースムーンを読んでいるの?」
「うん、特に、ナースヴィーナスが好き……ルナさんとは全然違うけど、ああいう女性もいいね!」
三人と、楽しそうに、漫画などの話をする龍一……
その姿を見て、瑠奈は、自分がいなくなっても大丈夫だと確信した。
もう、瑠奈が龍一に教えることは何もない。
瑠奈は、自分がこの街にいる限り、龍一に出会いはと思っているのだ。
「でも、タイガーボールが一番好き!」
「僕も、あの漫画は好きだな」
「おう!俺も、なんといっても、孫空悟の鶴林波は最高の技だぜ!俺も、あの技が使えたらなぁ」
「男の子はいいね。単純で……あんなの漫画の技じゃない……気で相手を倒すなんて……大体アンタ、山嵐はどうなったの?」
「あれは、今特訓中なのだよ。その後は、鶴林波の特訓だ!」
「だから、あれは漫画の技……龍ちゃんも何か言ってあげてよ」
「鶴林波は、確かに漫画の技だけど、天神流には、気で相手を倒す神技一天波がある」
「龍一、ホントかよ!?」
「ウソ!」
「ウソかよ」
「当たり前じゃない。あれは漫画の技なんだから……四郎ってホント単純ね」
「うるせぇな〜」
「いや、僕が言ったウソというのは、一天波が、正式な天神流の技じゃないということ……天神流の後継者になるためには、全ての技を会得しなくてはいけない。だけど、その技を使った人は、天神斎という人だけで、僕やルナさん、他の継承者となった人たちも、その技だけは、会得出来なかった。天神斎自身も、一度しか使ったことがないと云う……あれは、神の身が使える業……だから、一天波の上に神技がついている」
再び、四人が漫画などの話で盛り上がる。
そして、話疲れたため、三人は帰ることにした。
舞達はお勘定を払おうとするが、瑠奈は、三人からお勘定をもらうつもりはない。
三人は、瑠奈にお礼を言って、店を出た。
しばらくすると、一人の男が店に入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
龍一が丁寧に接客した。
男は、長い髪を金色に染め、冷たい瞳をしていた。
瑠奈が珍しく、怯えた表情をしている。
「リュウ……私はこの男と話しがあるから、今日はもういいよ」
「は、はい」
龍一はエプロンを脱ぎ、男の横を通り、そして店を出た。
「久しぶりだな……瑠奈……」
「やはり、生きていたか……凍矢!」
その男こそ、かつて、瑠奈の父と武の命を奪った男、凍矢である。
「俺が今まで、どこにいたか知りたいか?」
「……」
「俺は武との戦いで、重傷を負った。俺の傷が癒える頃、お前は俺より強くなっている……そう思った。だから、それ以上の強さを手に入れるため、俺は、世界に出た!」
「世界!?」
「そうだ!強いヤツを求め、世界に出た!そして、お前に勝てるという自信がつくのに、十年かかった……全ては、お前を、俺のモノにするため……」
「ふざけんじゃないよ!私は、アンタの女になんかならないわ!」
「帰国したのは、一ヶ月前、その間に、お前の事は、いろいろと調べた……アルテミス……裏世界では有名らしいなぁ。それと、お前の弟子でもあり、格闘王の息子でもあるさっきの餓鬼……今は、アイツが、継承者らしいなぁ。破門されたが、俺は全ての技を会得している。アイツを殺せば、俺が、十九代目だ!」
「リュウに手を出したら、殺す!」
「フン、俺を殺す事が出来ないのは、お前自身が、一番よく知っているはずだ〜。まあ、天神流の後継者に興味はない……お前が、俺のモノになれば、それでいいんだ」
「……」
「三日だけ、時間をやる。あの餓鬼の命は、お前の返事しだい……おれは、阿の山で待っているから、いい返事を期待しているぞ!」
そう言って、凍矢は去っていった。
「(この街を出て行くのには、ちょうどいいかも……)」
ついに瑠奈はこの街を出ることにした。