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彼の恋(仮)  作者: 塩津湖
6/6

大幅追記予定です。

六・結末


「……はっ?」


 静まり返った宴会場で誰かが言った。語り手が『退学』というパワーワードを口にした時と同じように、その予想もしない言葉にこの場にいる誰もがまたその意味をそのままの意味で飲み込むことができなかった。

 そして、俺自身もまた語り手が言った『SNSから友達の名前が消えた』ということがどういったことなのか全くわからなかった。

「ブロックされた、ってこと?」と言ったのは委員長だった。

 すると、語り手は「それは違う」と否定した。「ブロックしても、ブロックされた側はブロック前後では、一見何も変化していないように見えるようになっている。ブロックしたことを悟られないためのメーカーの配慮があるためだ」

「つまり、俺がブロックされたとしても『俺と【彼女】は友達のまま』のように見えるのだ。俺の場合は、【彼女】のアカウント自体が俺の友達欄から消えたんだ、間違いなくブロックされたわけじゃない」と語り手は言った。

「それは本当なの?」と委員長が反論すると、「調べた。ブロックした場合の、した側とされた側の画面の変化を掲載したウェブサイトがあったから、それを見た」

「じゃあ、どういうこと?」

「……思い当たる節があった。

 これよりずっと前に、俺のSNSに俺以外誰もいないトークルームが作られていたんだ。それは発見した昨日まではなく、突然作られていた。

 そのトークルームには、『このアカウント、もう使わないからこっちを登録して』と書かれたメッセージと、URLだけが書かれていた。

 怪しいと思いながらもそのリンクから飛ぶと、そこには特に仲は良くなかった部活仲間のニックネームが書かれたアカウントがあった。念の為、部活の連絡用グループのメンバーを確認すると、昨日そのアカウントが招待された跡があった。

 つまり、何らかの理由で複数のアカウントを作っていたその部活仲間がその内の一つを『削除』したんじゃないか、と俺は思ったんだ」

「つまり、【彼女】がアカウントを削除した、と思ってるわけ?」と委員長が訊くと、語り手は「そうだとしか、思えない」と呟いた。「春休みが終わった後、【彼女】と仲が良かった〈女の子〉にSNSの友達欄に【彼女】の名前があるか、尋ねてみるとその〈女の子〉もまた【彼女】の名前が消えていた」

「そうなってくると、【彼女】がアカウントを消したとしか思えないんだ……」と項垂れるように語り手は机に突っ伏した。

 語り手はそのままの体勢で、嘆くような声色でこう話し始めた。

「……彼女とは修了式以来、会ってない。

 SNSという繋がりが消えた今、【彼女】と直接やり取りをする方法は無い。

 ……いや、あるにはあるんだ、彼女を追跡する方法が。

 そう、それが無くは無いがそれをして良いものなのか、俺はずっと考えている」

「それは、……しちゃいけなさそうなことなのかな」と委員長が訊くと、「大体そうだな」と語り手は言う。

「【彼女】が大体どの辺りに住んでいるかは察しがついていることからそのあたりをしらみ潰しに探す。【彼女】の電話番号を知っている奴に心当たりがあるから、そいつから電話番号を教えてもらう。

 ……などなどなど、思いついた方法のほとんどがストーカー紛いの行為ばかりだ。そんなことをしてまで【彼女】とよりを戻したいとは思わない、絶対に」


 語り手はその話を終えた後、左胸のポケットに仕舞われていたタバコの箱を取り出し、そこからタバコを一本取り出すと、そのタバコの先端に火を点けた。この時、男の隣にいる女性は彼を叩くことはなかった。その時の女性は口に手を当てて何か考え事をしているような顔をしていた。


 その時、話を振ったあの男が立ち上がると、語り手に後ろから近づいてきた。男は語り手の肩に手を回して肩を組んだ。俺は、その男は語り手を慰めようとしているのか、と思ったが、そうではないようだった。

 話を振った男は、語り手に肩を組みながら顔を上げ、「で、その【彼女】というのが」と大きな声で前振りをするとこう言った。


「現在の彼の妻でありこいつの隣に座っている女性である、っていう結末だけどな」

「「「「「「はあっ???!」」」」」」


 宴会場に響き渡ったその感嘆詞に語り手は、やっぱりこうなるか、と呆れるような顔をしていた。

「何そのオチ!!」

「どういうことだよ?」

「まだ話は続いてたのか?」

「バラすな、この野郎。それで終わりにするつもりだったのによ」

「だって、言わなきゃ損だろ」と

「あっ、じゃあ話に出てきた『付き合ってる』って訊いた女、って私か」と言ったのはチャイナドレスだった。

「そうだよ、この野郎」と語り手は言った。

「道理でなんか心当たりがあるなあ、って思ったんだよね〜〜」とチャイナドレスは後頭部に手を回した。「まさか、その後そんなことになっていたとは思いもよらなかったな〜〜」

 語り手は「嘘つけ」とチャイナドレスに聞こえないような声でそう呟いた。


(追記予定)


 未完結となっておりますが、話としては全七話の予定です。

 投稿済みの六話分の追記と、未完成の七話を更新して完結予定です。

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