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人間関係ニャビ☆彡  作者: 山下です(^^♪
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第十一話 旅人と老人

「幸福な人生を阻む大敵は外にあるのではなく、内にある。すなわち、あなたの心の中に潜んでいる」


ウィリアム・ジェームズ(ハーバード大学 心理学教授)

1人の旅人が村の入口に立ち、看板を見つめていた。


長年の風雨で今にも朽ち果てそうになったその看板には「フォディナの村」と書かれている。


「どうしたんだね」



どこからか突然、声が聞こえた。

ハッとした旅人は、声のした方を見る。


そこには青々と葉をつけた1本の巨木が立っており、その根本に、杖を持った1人の老人がもたれるようにして座っていた。


その老人を認めた旅人は、全身から警戒を放ち、足元においたバックパックを引き寄せた。


「じいさんは、この町の人間か?」



旅人は警戒を解かないまま、老人に聞いた。

その問いに老人が応える。


「生まれた時から、この町に住んでおるよ」



応えを聞いた旅人は、さらに質問を続ける。


「一晩泊まれる宿を探しているのだが…じいさん、この村はどんなところなんだ?」



その問いを受け、今度は逆に老人が旅人に尋ねた。


「そういうあんたは、どこから来たんだね?」



旅人は応える。


「グラペブロだ。あの町にはろくな連中が居なかった。人は冷たいし、旅人が多いからか、扱いも雑だ」


「そうかい」



老人はそう言って立ち上がり、手にした杖で村とは違う方向を指し、言葉を続けた。


「この村も、あんたが前にいたグラペブロと同じだよ。冷たい連中ばっかりさ」



その言葉を聞いた旅人はガッカリと肩を落とす。そして。


「ここも同じか…」



とつぶやくと、老人に礼を言うことも振り返ることもなく、その場をあとにした。


その姿が見えなくなるまで見送った老人は、再びその場に腰をおろした。






それから30分ほど経った頃、草原からこちらに向けて歩を進めてくる、2つの人影が見えた。1人はどうやら孫娘のアイのようだ。だが、もう1人の少年は、初めて見る顔だった。


「あ、じいちゃーん!」



アイが自分に向けて手を振る。老人は、この何気ない孫娘の行動に幸せを感じた。

2人が自分の近くまでやってきた。老人は、少年の事を観察する。


見慣れない服に、旅慣れていない足取り。額にかいた汗は、先ほどまで走ってでもいたのか、それとも孫娘に随分と歩かされたのか。


その少年は老人を認めると、ペコリと頭を下げて挨拶した。


「アイや、おかえり。その様子だと、見事にジャイアントボアを仕留めたようだね」


「うん、バッチリ仕留めたよ!」



笑顔で応えるアイ。


「それは良かった。ところで、こちらの旅の方は?」


「この子はユウト!魔法を使えるって言ってたから、ジャイアントボアを焼いてもらおうと思って連れてきたの」


「ほお、そうかい」



老人がユウトと呼ばれた少年を黙ってジッと見つめる。少年はどうして良いのか分からないのか、もう一度、軽く頭を下げてから話し出した。


「すみません、突然お世話になってしまって」


ほう、と老人は思った。若いが、多少の礼儀はわきまえているようだ。

そして、先ほどの旅人に尋ねたのと同じ質問をした。


「お前さんは、どこから来たんだね?」


「え?」



少年が聞き返す。


「ここに来る前は、どこの町に居たんだね」



老人は、少し質問を変えて尋ね直した。


「あ、はい。グラペブロの町です」



先ほどの旅人と同じ町の名前を口にする少年。


「そうかい。グラペブロの町は、どうだったかね」



老人は、ジッと少年を見つめた。

少年は少し思案していたが、やがて話し出した。


「はい、あの町の人は親切に色々な事を教えてくれるし、冒険者登録所では食事まで振る舞ってもらいました。とても良いところだったと思います」



そう言うと、ニコリと微笑みかけてきた。


老人は、孫娘が連れてきたこの少年に好感を持った。

そして、少年にこう伝えた。


「ふふ、ここはフォディナの村。小さな村だが、グラペブロと同じくらい、人は良いところだよ。さあ、アイよ、村の中を案内しておやり」


「うん、わかった!ユウト、ほらいこ」



そう言って孫娘が少年を村に連れて行く様子を、老人は温かい眼差しで見送っていた。



【用語等解説】

老人と旅人…老人は2人の旅人に同じ問いかけをします。その旅人が、どのような考え方をしているのか、聞き出していたのですね!そうすることで、老人は旅人の心の善悪を判断し、孫娘や皆が一緒に育ったこの村を守っています。結局のところ、グラペブロの町という同じ環境に置かれても、人がその環境をどのように思うかは、その人次第である。というお話です☆


ストーリー話法…聞き手に伝えたいことを物語調で伝える方法です(^^) 説教のようにならないので、割とすんなり受け入れてもらいやすくなります☆また、目上の相手であっても、伝えたいことを謙虚に伝えられます♪


【詳細と活用方法】(人間関係ナビ☆彡)

http://for-supervisor.com/human-relationship/ruisui-story/

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