第一章 出発点
最初の第一章となります。
小説の名前はまだ仮なのですが、正式な名前になりましたらご報告いたします。
よろしくお願いします。
“世界はどのぐらい広いのだろうか。世界は狭いのだろうか。”
見たこともない道を歩きながら、この世界のことを考えている男がいた。 男は一見普通の人間に見えるが、よく見ると人間の容姿をもった何かだとわかる。
原因は男が人と鬼の間に産まれた人鬼という存在だということだ。容姿は人間に似ているが、似て非なる。
だがその種族は以前起きたある出来事が原因で、既に絶滅したかと思われていた。そのことが理由で男は差別、いじめにあっていた。
大人、子供関係なく、だ。
差別されながらも強く生きてきたが、男が昨日18歳になった日に村のリーダーである村長になんの説明もなく突然完全追放を命じられてしまい、旅をする結果となっていたのだ。村の住人は男のことを名もないことからフェンリルと呼ばれていた。
名前の由来は実に簡単で、一匹狼という意味の名でつけられていた。
追放され、一日たった頃。
フェンリルは早くこの山から抜け出したかった一心でまったく寝ていない状態のまま下山をしていた。その山にある村からかなり下山出来たようで、歩いていた林から抜けれそうだった。
「あともうすこしか…」
不慣れな場所を歩くことがなかったフェンリルには、かなりの負担が体にかかっていてとっくに限界に見える。
そんな限界なフェンリルにある声が聞こえた。
「ぎゃあああああ誰か!お助けえええ!」
助けを求める誰かの声に反応し、声が聞こえた方面へとむかうフェンリル。しかし彼はもう疲れで限界だ。
その身体に鞭をうち、悲鳴のあった方角へと向かっていく。
辿り着くと狐が狼一体に襲われている。どうやらこの山に生息している普通の狼のようだ。
狐は誰かが駆け付けたことに気付いたのか、その音の方向に顔を向ける。
「あんた!助けてく―」
「ガァァァァァァァァァ!!!!!」
助けを求めようと瞬間、狼が狐に襲い掛かる。
フェンリルは武器を取り出し、狼を一振り切り、傷を負わせる。
持っていた武器は自分自身が得意とする刀である。以前村に訪れた旅人から譲ってくれた物であり、何も無かったフェンリルにとって唯一無二の大切なものだ。
切った部分が片目にあたり重症を負わせられたことから、狼は林の奥へと逃げていく。
安全を確認したフェンリルは刀を鞘に納め、狐に近づき手を差し伸べる。
「大丈夫か、狐。」
狐は崩れていた体勢を戻し、ゆっくりと立ち上がる。
「ああ、大丈夫だ。ありがとよ刀持ちのお兄さん。」
狐は自然に返事する。フェンリルは驚いていた。
何故なら狐が話すことの出来ない人間の言葉を何気なく喋ったからだ。
助けることに夢中だったらしく、先ほど普通に喋っていたことに気付かなかったのだ。
「お前…わかるのか?言葉が。」
自分が人の言語で話したことに冷や汗を出し始めた狐、人間の言葉や色々に驚いているフェンリル。
この出会いからフェンリルの物語は少しずつ始まっていく…。