第82話 魔王アマイモンと異変
ここは聖地メロウ。道はあるがそんなに広いものじゃない。だがよく整備されている。
何より周りに自然が多いことだ。植物の育ちが良いし生き生きしている。
町はあるが低いところの聖地の周辺部にたくさん広がっている。
だから聖地のほとんどの部分は山や畑ばかりだ。
そんな中を小高くなっている山がある。その山の上にあの3人のご主人様という人が住んでいるらしい。一体どんなやつなんだろう。
山の麓まで着くと、もう車が行けるような道はなかった。仕方がないので車を置いて歩いて行くことにした。
「いやーたまには歩くのもいいもんだな」
「そうなのー。空気がきれいで気持ちがいいのー」
「緑が綺麗っすね」
「家の近くのドリアードさんの住んでいるところを思い出しますわ」
のんびりと歩いていると10分ほどで 頂上が見えてきた。家が一軒あるようだ。
石造りの小さな二階建ての家だ。家の前で畑を耕している緑色の髪をした青年が1人いる。
他には特に変わった所はない。しかし、こいつは強い。戦わなくてもわかる。
「やあ、こんにちは。あの3人に認められてここまで来た者は君たちが初めてだよ」
「こんにちは。それはどうも。俺はナオトと言います。あなたがあの3人のご主人様ですか」
「ああ、はい。僕はアマイモン。地を統べる者」
「だからこの辺の土地はこんなに元気なんですね」
「そうかもしれませんね。おおーい。ベリーちゃん。皆さんにお茶をお出しして」
「はーい」
お手伝いさんのベリーちゃんが美味しいお茶を入れてくれた。紅茶のような味がする。
「ああそれなら故郷に行った時に買っといたケーキがありますよ。どうですか。時間は止まってますから大丈夫ですよ」
「それは素晴らしい」
しばらくまったりした時間を過ごすことができた。
「それでアマイモンさんはここで何をしてるんですか」
「僕は戦争とか領地争いとかには興味がないんだよ。ここで良い土とともに のんびり暮らしているんだよ」
「ほう。なかなか優雅ですね」
「実はここも昔からいたんじゃないんだ。ベルゼブブやアスタロトに追い立てられてここまで逃げてきたんだよ」
「はー、なんで戦わないの? あんな強い部下だっているし、あんただって部下達より強いじゃないか」
「争いごとは嫌いなんだよね」
「そんなこと言ってたら滅ぼされちまうぜ。強いなら戦えばいいじゃねえか。あたいならそうする!」
「そうだね。ここも取られるようだったら仕方ないね。戦うしかないかな」
「あんた本当に強いのか。俺と戦ってみろ。あんたの子分は散々さっきから戦え戦えって言ってきたぞ」
「そうかい。それは悪かったね」
「お待ちください。ご主人様に迷惑をかけるなんて私が許しません。どうしても戦うのなら私が相手になります」
「おもしれえ!」
ベリーちゃんは栗色の髪のロングヘアーの目のぱっちりした可愛い子だ。 そんな娘が戦うなんて言っている。
「やってもらおうじゃねえか」
「もうしょうがないな。フレイムちゃんは」
フレイムちゃんはガントレットを出してガシンガシンと準備運動をしている。対してベリーちゃんは何も持っていない。
「これベリー、お客様に失礼があってはなりませんよ」
「はい、分かっております。全力でお相手します」
戦いは一進一退の攻防が数分間続いていた。ベリーちゃんは体術を使って フレイ厶ちゃんに対抗している。
この子は剣士だな。剣を持ったらもっと強いんだろうな。
「はい、そこまで!引き分けね」
「はあはあ、くっやるじゃねえか」
「はあはあ、あなたもね」
「ねえねえアマイモンさん。ここに果物の種や苗を植えてもいーい?」
「土地はいっぱいありますから大丈夫ですよ」
「それじゃあナオトの故郷に行って手に入れた種や苗があるのー。きっとここならすぐ育つのー」
リリンはみかんや梨の苗木を植えた。 すると瞬く間に気が大きくなり成長始めた。
なんとみかんや梨がなり始めたのだ。すごい、すごい速度だ。あっという間に育ってしまった。
リリンは果物の他にも野菜や花の種もまいた。こちらもあっという間に育って一瞬にして丘の上は綺麗な花畑になった。
「いやーリリンさんありがとう。とても綺麗になったよ。私は特にこのナシというのが気に入ったよ」
「気に入ってもらって良かったのー」
「お礼にここの土を持ってってください。あなた達の魔力を通せばここと同じような土になると思います」
「ありがとうなのー」
「さあ、そろそろ行きますか」
「ナオト、このまま帰ってしまっていいのかい。君はまだ目的を果たしてないんじゃないかい」
「そりゃあ力になってくれる奴を探そうとは思ってるけど戦うのが嫌で引っ込んでるやつに無理して行ってもらうってのもな」
「でも、せっかく知り合えたんだ。お前が困っていたら俺は助けにくる。これを置いていくから何かあったら呼んでくれ。じゃあな」
アマイモンに通信機用のブレスレットを渡した。俺たちは丘を降りて次の土地に向かうことにした。
「いい人達でしたねアマイモン様」
「そうだね。もっと執着して誘ってくるかと思ったんだが拍子抜けだよ。 僕も彼らが困ったら手を貸そうと思う」
「そうですか。その時は私も一緒にお連れください」
「ああ、分かった」
「いやー世の中は広いな。あんな奴がいるんだからな」
「そうなのー。でも楽しい旅なのー」
「うん。そうだな」
リリリリ···リリリリ···リリリリ
「あれリリスから連絡だ。今頃何だろう」
「ああ、こちらナオト。どうしましたか。どうぞ」
「リリスじゃ。国境で異変。お主も軍を出せ」
「何がどうなってるんだ。詳しく話してくれ」
「ルシファー軍との国境ではなくてベルゼブブとの国境だ。今はメデューサの所の軍が相手をしているが数が足らん。お前が一番早く動けるだろう。行ってやってくれ」
「わかった」
「みんな旅は一時中止だ。援軍に向かうよ」
「はいなのー」
「分かったっす」
「行きますわ」
車をストレイジにしまって円盤を出す。みんなにはルームに入ってもらって俺とルイーネとアイで乗り込む。
東へ約6000キロはあるぞ。マッハ10で飛ばして30分位で着くかな。
「あーそうだ。この間何か分からなかった赤、青、黄色の液体は何だか分かったかい?」
「いえ残念ながら分かりません。マスター」
「ボス!あれはあまりいいものとは思えないので、とにかく別にしてストレイジにしまってあります」
「うん。そうか」
順調に飛行して約30分が経過した。
「どうやら着いたようだぞ。あの城壁を責められてるところがそうだろう。あの内側に降りよう」
「俺が先に降りて話をつけてくる。上で待っててくれ」
扉を開けてフライで飛びながらメドゥーサ軍の上から声をかける。
「俺は魔王ナオトだ。援軍に来た」
「あれはナオト?おおーよく来てくれたわ〜ん。さあ、こっちよ〜ん」
「どういう状況なんだ?説明してくれ」
「みんなに援軍を頼んでからまだ少ししか経ってないのに、すごいわね〜。あなた〜」
円盤の方もこれで降りてこられた。仲間たちが降りてくる。
「どういう訳だか分からないわ。でも ベルゼブブ軍のネルガルって奴が攻めてきてるのは事実よ〜。ネルガルは大将軍よ。魔人が14人も下にいるわ〜。どういうことかしらね」
「まさかルシファーと組んだとか?それで相手の数はどれくらいなんだい?」
「魔人が3体と兵隊が3000位ね」
「メドゥーサ軍は?」
「私の所はここに出張ってきてるのは1000人ぐらいよ〜ん」
「それじゃ圧倒的に不利じゃない」
「だから立てこもってるのよ。助けてほしいのよ〜」
「わかった。とりあえず俺のところにゴーレムがたくさんいるからそれで追い払ってくるよ」
「頼むわ〜」
「それじゃあ、こちらも隊を3つに分ける。左翼はエレンミアとルイーネ。中央はシャーロットとアイ。右翼はバイモンさんとネフィちゃん。俺とリリンは状況に応じて応援に出るよ」
「あたいは?」
「フレイムちゃんはエレンミアが面倒みてよ」
「分かったっす。フレイムちゃんは前に出すぎないようにね」
「分かってるよ」
「各隊共に巨大ゴーレムは200体ずついるはずだから、それで相手を追い払ってよ。魔人は2人で協力して倒してね。では頑張って!」
「「「「はい」」」」




