第81話 聖地メロウ
あれからベルゼブブの刺客は来ない。どうやらあきらめたようだ。
「また西に進んでるみたいだけど今度はどこへ行くんだい」
「今回は入れるかどうかわかりませんが、一応行ってみようと思いまーす」
「入れないのかい?今までそんなところはなかったね」
「はい。それが条件に合わないと入れてくれないみたいなんです」
「なんだろうね?そりゃ。それでここは何ていう土地なの」
「聖地メロウでーす」
「聖地ねえ」
「あれ?何かいますよ」
何か大きなものがいる。車を止めてよく見てみると、それはでっかい竜にまたがった大男だった。
竜は体長10メートルくらいある。その上に男がまたがっているが男はどうみても身長3メートルはある。
顔は人、羊、牡牛の3つだ。尾があり先は蛇になっている。手にはでかい槍がある。
一口で言えばもう魔王か怪獣レベルだ。
「ここは整地メロウ。我はアスモデウス。通りたければ我と戦え!」
「すごいおっちゃんだなあ。迫力満点だ。どうする?名のられて名のりかえさぬは武人のなんとかじゃないのか?」
「そうですわね。それならここは私が」
「いや、このエレンミアがやるっすよ」
「待て待てー! ここは俺様の出番だぜ」
フレイムちゃんが車から飛び出して行った。フレイムちゃんは最近ガントレットを使うようになった。足にも硬い鎧が付いている。
「あたいはフレイム!行くぞ!」
「はっはは、よきかな、よきかな」
ジャンプしての渾身の右のパンチを 相手に叩き込むが軽く槍でいなされてしまった。
強い!戦わんでもわかる。俺やリリンレベルだ。
「たー!えい!はっ!」
「中々良いぞ!」
とうとうフレイムちゃんは槍の石突のところで突かれて吹っ飛んでしまった。
「いてて、うー」
「フレイムちゃん交代っすよ」
「あたいはエレンミア!行くっすよ!」
今度はエレンミアが行くようだ。いつもの大鎌を持って全力で斬りかかる。
ガイン!ガイン!ガイン!
「やるのお!だが、まだだ」
アスモデウスは大槍を片手で繰り回しエレンミアとの距離をとる。
槍の連続突きを始めた。速い!槍が5本にも10本にも見える。続く、まだ続く!
エレンミアは鎌の柄のところで受けたりして何とか防いでいる。
なんとか槍の攻撃を読み切り一撃二撃と加えるが有効打には至らない。お互い間合いを取って遠ざかる。
「うむ。やるな。ここまでだ」
「そうっすか」
「そこの御仁。女にばかりやらせてないで自分で出てきたらどうだ」
「ふふふ···俺のことか。いいだろう···相手をしてもらおう」
俺はミスリルの剣を抜いてアスモデウスと対峙した。相当の迫力だが竜に乗っているんなら付け入る隙はあるな。
と思ったらアスモデウスが竜から降りた。
「何だ降りるのか?」
「我も久しぶりに本気の勝負ができて嬉しいぞ」
俺はもう一本短いミスリルの剣を抜く。こちらも本気モード二刀流で行く。
ものすごい突きだ。返しも早いし。槍の周りはほとんど近づけないぐらいの勢いになっている。
とても紙一重でかわすなんて不可能なので剣と槍が当たる瞬間を狙うことにした。
だがお互いの武器が当たる事はしばらくなかった。俺は槍の突きを、向こうは俺の斬撃を、全て見切ってかわしている。
こんなおっさんがいるのか。世の中広いね。このままではらちがあかないので俺は強引に間合いに入っていくことにした。
真正面から鋭い突きがくるがわざと突かせてギリギリでかわしてみる。ちょっと顔をかすったが大丈夫。
うまく中に入り込めた。すかさず左腕を狙うが防具で弾かれてしまった。
「チッ。浅いか!」
「我に一撃当ててくるか。やるな!ヴモーメェー」
周りの牛と羊の顔が初めて喋った。 最近こういうのどっかで見たな。
10分くらい切り結んだが勝負がつかないのでここでお互い剣と槍を収めることとなった。
「お主強いの。これほどの使い手は久しぶりだ。ヴモーメェー」
「あんたもすごいな。びっくりしたよ」
結局ここは通っていいということになったが気が合うのでしばらく話していたら酒盛りを始めてしまった。
アスモデウスは結構いける口でどんどん酒が進む。なかなか豪快な親父だ。
嫁や従者たちはここでお昼にするようで準備を始めた。宴会は2、3時間でお開きになった。
俺たちを気にいったのかアスモデウスは、肉と食べ物が出てくる壺をくれた。
魔力は使うが言った物がずっと出てくるのだそうだ。違っものを言えばそれがずっと出てくるのだ。すごい!
「なんか悪いな。こんな珍しい物をもらってしまって」
「いやいいのだ。ナオトよ!この先、我の仲間があと2人ほどちょっかいをかけてくると思うが、そんなに悪い奴らではないので相手をしてやってくれ」
「かまわんよ。ではまたな」
「ああ」
そう言ってアスモデウスは竜に乗って飛び去ってしまった。あの竜飛べたのか。
車でしばらく行くと今度はコウモリの羽と立派な二本の角を持つ水色の2メートル位の鬼のような男がいた。
この男は4人の黒い人型の影のような者たちにみこしを担がせ、自分はそこに乗ってケタケタ笑いながらこちらを見ていた。
どう見ても悪だろうと感じたがアスモデウスの言ったこともあったから様子を見ていた。
「わしの名はガープ。勝負してもらうぞ」
「また勝負か。いったい!うがあ」
みんな頭を抱えている。何だ?音波攻撃か?みんなまだ意識はあるようだ。
バイモンさんがすかさず反撃する。大声で音波攻撃を相殺した。
「あれ?消されてしまったのう。誰も気絶しないとは大したもんだ」
「なんのまねだ!」
「それじゃあこんなのはどうかのう」
「う、だんだん腹がたってきた。平静を保っていられない···」
みんなも顔が真っ赤になってきている。怒っている!怒っているー!
「今度は効いてるようだのう」
このままではどうにもならない!何とかせねば。あれフレイムちゃんが変な動きをしている。相手に操られているのか!まずい。
俺はみんなの周りにバリアーを張ってみた。前よりはだいぶ楽になったがまだ効果が全部消えたわけではない。
そうだ。バリアーの中に自分の魔力を満たしてみた。おう!完全に効果が消えた。やったぞ!
「このジジイどうしてくれよう」
「うふ。ちょっとした茶目っ気じゃよ」
「サンダー!」
プスプスプスプス、じじいは倒れた。
「ま、まて。まだ終わってはおらぬぞ」
「何ーまだやる気か」
「いやーしかしお主たち強いのー。わしが技をかけて、あんな事やこんな事ができなかったのは久しぶりじゃのう」
「なんだよ。あんな事やこんな事って」
「ぐふふ」
「で、なんなんだよ。まだ何かあるのか」
「いやお前たちの強さに感心しての。 一ついいものをやろう」
ガープはマリオネットの笛をくれた。 これを吹くと相手が自分の思ってるように動くのだそうだ。全くろくでもない道具だが面白そうだからもらっておいた。
さらに俺たちは車で進む。また1人いた。今度は羽の生えた馬に乗った豹の顔とグリフォンの翼を持った金髪のやさ男だった。
「お前は何の勝負をする気なんだ」
「お、察しがいいね。おいらはセーレ。おいらの勝負は速さ勝負だ」
「速さ?」
「そうだ速さだ。あそこに山が見えるだろう。あの山の上に赤い実がなっている。それを取って早くここに戻ってきた方が勝ちだ」
「そんな勝負受けて何になるんだよ。受ける意味がないんじゃないか?」
「ふーん、それなら」
「キャアー」
「イヤン」
「はあ〜ん」
あの野郎小転移をして女たちの体を触っている。ふざけたやつだ。
とりあえずサンダーをかましておく。
「ギャー」
「わ、わかった!お前達が勝ったら何か一ついいものあげよう。なんでもいいんだぞ」
「ほう、面白いな。やってやろうじゃないか」
「リリンがやるのー!」
「珍しいな。リリンがやろうなんて」
「絶対勝つのー」
「まあ頑張って!」
「それでは、用意、始め!」
勝負は転移勝負だ。一瞬で決まる。次の瞬間リリンが赤い実を持って立っていた。
「この勝負リリンの勝ち!」
「そんなバカな!おいらより速いなんて」
「勝ったのー!何でも願いがかなう道具!ちょうだい!」
「なんでも願いが叶う道具?それはさすがに無理だよ」
「なんでもって言ったのにー」
「君はどんな願いを叶えたいの?」
結局リリンは惚れ薬をもらっていた。何を考えているんだか。
「しかし、おいらより速いなんて一体どうやってやったんだよ。教えてくれないか」
「簡単なのー、さっきナオトにあなたがやられていた時に取ってきておいたのー」
「そりゃないよー」
「勝ちは勝ちなのー」
「うえ〜」
「あーそうだ。せっかくここまでこれたんだから、みんなうちのご主人に会って言ったら?山のてっぺんにいるよ」
そう言われて、これだけの力を持った3人のご主人様ということだから会ってみたくもなった。頂上に行ってみることにした。




