第75話 錬金術師ザガン
次の町に着く前に毎朝のことを済ませる。
「ちょっとこの辺で止まっててくれないか」
「わかったのー」
シードラゴンへ寄ってみる。特に異常はないようだ。
自宅の方にも戻ってみる。こちらの方も平常運転で特に変わったところが見られない。
いろんなチェックをして30分ほどでみんなのところへ戻れた。
「この子、何とかしてくださーい」
「誰もあたいと勝負してくれない! うえーん」
「え?どうしたの」
「フレイムちゃん。みんなに勝負を挑むんですけれどー。全敗で···あまり進歩もないようでー」
「あーなるほど」
ネフィちゃんと勝負しても全敗なのだろう。なるほどこれじゃあみんなも相手にする気がなくなるわな」
「みんなちょっと待ってて」
午前中ならヴァルキリーがどこかの軍隊で訓練をしているはずだ。
フレイムちゃんを連れて行って参加させよう。同じくらいのがいるからきっと励みになるだろう。
「ソフィア、グレタ頼みがある。この娘をちょっと鍛えてやってくれないか」
「はい魔王様!」
「問題ありません」
「フレイムちゃんお昼に迎えに来るよ。頑張ってね」
「おう!任せな!」
転移してみんなの所に帰って来た。
「今日はなんていう町に行くんだ?」
「イーストフォートレスっていう町ですよ」
「どんな町なんだ?」
「ここらはベルゼブブとのこぜりあいがよくあるみたいっすよ」
などと言ってる間に町に着いた。石垣に取り囲まれたなかなか堅固な城塞都市だ。都市と言うかもう砦に近いな。
「なるほど。だからこんなに武器や防具がたくさん売ってるのか」
でも攻めてくれば戦う気はあるんだね。なんか騒がしくなってきたな。
「ベルゼブブの定時攻撃みたいですよー」
「決まった時に攻撃してくるのか」
「町の人に聞いた所そうみたいですよー」
「ちょっと様子を見てくるよ。みんなは宿に行っててくれ」
「わかったのー」
「マスターお供します」
「私も行きまーす」
城壁まで来てみるとかなり遠くからだが炎の魔法で攻撃してくるものがいる。100メートルぐらい離れているように見える。
「全体的にそんなに数は多くないな まあ約500人ってとこか」
地割れが走っているのだが、そこを越えようとはしていないようだ。地割れは幅が10メートル以上ある。
何かを渡さないとは渡っては来れないな。来る気なら空を飛ぶしかない。
「あの先頭に立ってるやつは誰だよ」
「あれはベルゼブブの配下でウコバク だったかなー」
「あんまり強そうじゃないな」
「いえ、あれでも魔人ですよ。かなりやるほうだと聞いていますが」
「ふーん」
「マスターどうしますか?攻めますか」
「俺がやったと分かるとちょっとまずいなあ。こっちの砦からでもまずいのか。何か良い手はないものか。···おう!そうだ。このあいだ覚えた召喚魔法があった。あれを使ってみるか」
「召喚魔法ですか?」
「俺は無機物でも召喚できるんだよ。 燃える大岩かなんか落としてやれば,こちらからの攻撃だとは分からないだろう」
「マスターでは女の子に変身してください!」
「うむ。えい。燃える大岩よあれー!」
直径30メートルから50メートル級の炎に包まれた大岩が天から20個以上降ってきた。
ベルゼブブ軍は壊滅的な打撃を受けて一瞬で部隊のほとんどが機能停止した。
残った数十人の兵隊たちは命からがら逃げ帰っていった。
「あの大将もまだ生きてるようだ。なかなか達者だな。見直したよ」
騒ぎもおさまったので、そのまま宿に帰ることにした。もちろん着替えて女のままでだが。
「マスター最高です」
「ナオトさんすごい攻撃でしたねー」
「まあ色々確かめられたからいいかな」
「ちょっといいですか。あなたすごいですね」
「え?」
「天から燃える大岩を降らせるなんて 絶対できませんね。私の頼みを聞いてくれますか」
しまった!気づいてたやつがいたのか。しかしよく分かったな。こいつ何者だ。
「おほほほほ、あなたの気のせいですわよ。私にそんなことができるわけないですわ」
「そんなことないですね。私見てましたもの。あなたみたいな人見たことありませんね」
声をかけてきたのは20歳位の優しそうなとっても綺麗なお姉さんだった。
髪の色は濃い金髪。頭にはわきから 牛のような立派な角が2本生えていた。背中には白い羽が一対ある。白い ドレス姿だ。
あれを見てて俺がやったって分かるなら只者じゃないな。でも面倒だから関わらないようにしよう。
「じゃあそういうことで、ごきげんよう」
「待ってくださいね。私の頼みを聞いてくれたらアナタにもちゃんといいことがありますね」
あーしまった。抱きつかれてしまった。すごい力で全然動けない。
「んーーーえい!」
あんまりいい匂いだったからついお尻を揉んでしまった。
「いやん。やりますね」
お返しに乳をもまれてしまった。
「ああん」
くう、やるなあ。これならどうだ。俺たちはしばらくやりあっていたがお互い気持ちよくなってしまった。
「はあはあはあ。本当にやりますね」
「はあーはあーあなたもね」
「マスター素敵!」
「ナオトさんエロいー」
周りに人だかりができてしまったので場所を変えて話を聞くことにした。
3人を連れて転移し自分の宿へ戻る。
「ここなら落ち着いて話が聞けるわ。 で、何をして欲しいの」
「実はですね」
彼女の名前はザガン。つい先日、旅の途中に地下の迷宮に落ちて、そこのモンスターに呪いをかけられたんだそうだ。モンスターは倒したが呪いの方は 体に残ったまんまだということだ。魔力を吸い取られて体がだんだん弱ってきたのだそうだ。
「確かに私には治癒魔法があるけど呪いの類はあまり詳しくないわ」
「あなたの魔力の強さなら大丈夫ね。私の体に魔力を通して呪いをフッ飛ばしてほしいね」
「そういうことならできるかもしれないわ」
俺は彼女の手を握って魔力を通す。なるほど何か抵抗する勢いがある。これだな。さらに魔力を強める···あれザガンさんの様子がおかしい。
「はあ〜ん。こ、これは、ああ〜ん」
「大丈夫ですか?ザガンさん。どうかしましたか」
「あああ···気持ちいい〜」
「え?」
彼女の体に巣食った呪いはどうやら消えたようだ。顔色も良くなったみたいだ。
「良かったですね。役に立ててよかったわ」
「それじゃあお礼をするね」
彼女は水差しの水を注ぐだけでワインに変えて見せた。
「何ーーー!!そんなことできんの」
「こういうのもあるね」
今度は水を金属に変えている。パラパラパラパラと輝く粉に変わっている。これは金か?すごい!これはすごい!
「これは本当に錬金術ですね。働かなくても喰っていけますね」
「同じような物質だったらもっとたくさんできるんだけどね。魔力を食うんでこんなもんね」
テーブルの上は砂金で山になっていた。
「すごいけどこんなの私に覚えられるの」
「大丈夫よ。あなたならできるね。しばらくかかるかもしれないけど教えてあげるね」
こうしてしばらくザガンさんは俺たちと一緒に行動することになった。
「あれ何か忘れてるような気がするが」
「フレイムちゃんですよ。マスター」
「そうだもう昼過ぎてたんだ。フレイムちゃんを迎えに行かないと」
フレイムちゃんは午前中立派に戦い抜いた。10勝20敗だったがその表情は生き生きとしていた。うん、これならこっちの方が良さそうだな。午前中は毎日ヴァルキリーと修行させよう。




